かぢ)” の例文
〔譯〕凡そ人事を區處くしよするには、當さに先づ其の結局けつきよくの處をおもんぱかりて、後に手を下すべし。かぢ無きの舟はなかれ、まと無きのはなつ勿れ。
それにさいはひに追手の夕風が吹いた。船頭は帆をげて、かぢをギイと鳴らして、暢気のんきに煙草をふかした。誰の心も船のやうに早く東京に向つてせて居た。
(新字旧仮名) / 田山花袋(著)
こゝに希有けうことがあつた。宿やどにかへりがけに、きやくせたくるまると、二臺三臺にだいさんだい俥夫くるまやそろつて鐵棒かなぼう一條ひとすぢづゝげて、片手かたてかぢすのであつた。
城崎を憶ふ (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
口語の廣く用ゐられて來るやうなものを見ては之れをぽつ/\引上げて假名遣に入れる。さう云ふやうにかぢを取つて行くのが一番好い手段ではあるまいかと思ふのであります。
仮名遣意見 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
宇治川うぢがはふねわたせをとばへどもきこえざるらしかぢもせず 〔巻七・一一三八〕 作者不詳
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
或はまた山に九曲まがりくねりあるには、くだんのごとくにくゝしたるたきゞそりり、片足かたあしをあそばせて是にてかぢをとり、船をはしらすがごとくして難所なんじよよけて数百丈のふもとにくだる、一ツもあやまつことなし。
そのかみ、神功皇后韓国からくにをことむけたまひ、新羅の王が献りし貢の宝を積みのせたる八十艘のかぢを連ねてこの海に浮べるを憶ひおこし、はしなくも離れ小島の秋かぜに荻の花の吹きちるをながむる身は
松浦あがた (新字旧仮名) / 蒲原有明(著)
つねそばから種々いろ/\口車くちぐるまかぢを取しかば又々また/\加賀屋へいた段々だん/\仔細しさい
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
かぢの枕のよき友よ心のどけき飛鳥ひてうかな
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
が、はずんでりて一淀ひとよどみして𢌞まはところから、すこいきほひにぶくなる。らずや、仲町なかちやう車夫わかいしゆが、小當こあたりにあたるのである。「まねえがね、旦那だんな。」はなはだしきはかぢめる。
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
或はまた山に九曲まがりくねりあるには、くだんのごとくにくゝしたるたきゞそりり、片足かたあしをあそばせて是にてかぢをとり、船をはしらすがごとくして難所なんじよよけて数百丈のふもとにくだる、一ツもあやまつことなし。
「旅にして物恋ものこほしきに山下のあけのそほ船沖にぐ見ゆ」(巻三・二七〇)は黒人作、「堀江より水脈みをさかのぼるかぢの音の間なくぞ奈良は恋しかりける」(巻二十・四四六一)は家持作である。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
かぢの枕のよき友よ心のどけき飛鳥ひちようかな
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)
「へい、おちなさいまし、石磈いしころきしみますで。」とつくばつて、ぐい、とかぢおさへる。
月夜車 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
かぢもうつらうつらに
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)