智恵ちえ)” の例文
旧字:智惠
なんでもこれは人数にんずうすくなくともよりぬきのつよ武士ぶしばかりでかけて行って、ちからずくよりは智恵ちえ工夫くふうをしなければなりません。
大江山 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
「市ちゃん、どこでそんな智恵ちえを仕入れてきたの。まったくねえ、品物を仕入れることよりか、智恵を仕入れることだね。」
市郎の店 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
親ゆずりの財産ざいさんに、ぬくぬくあたたまっているよりも、若いものは、自分の智恵ちえと、うでを、もとでにするにかぎります。
なべとはよくをつけたと、おいらァつくづくあいつの、親父おやじ智恵ちえ感心かんしんしてるんだが、それとちがっておせんさんは、弁天様べんてんさま跣足はだしおんなッぷり。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
「おお、海賊かいぞくの腕が強いか、山賊の智恵ちえがたしかか、ここでいちばん腕くらべをしてもいい。それともすなおに頭領かしら龍巻たつまきをよんできてびをするか」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
妾此の頃、智恵ちえのある怜悧れいりな方には、飽き/\していますの。また、その智恵を、人を苦しめたりおとしいれたりする事に使う人達に、飽き/\していますのよ。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
さればまことに弥次郎兵衛やじろべえの一本立の旅行にて、二本の足をうごかし、三本たらぬ智恵ちえの毛を見聞を広くなすことの功徳くどくにて補わむとする、ふざけたことなり。
突貫紀行 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
与の公もない智恵ちえをしぼりあげて申し入れましたんで——そりゃア丹下様ッ、てあっしゃ言いましたよ。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
色々やって見たが、結局自然をそっくりそのまま真似まねる方が一番利口であった。こんな問題になると人間の智恵ちえなどはまだなかなか駄目なものだとつくづく思った。
雪雑記 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
それだからヂックを勤めたカアソンという役者が、批評家に智恵ちえを附けられて、ジックは牧師のさいを愛しているので、それで牧師の身がわりに立ったということにした。
そのうちに敵の国から、こちらの人の智恵ちえをためそうと思って、むつかしい問題を出してきた。
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
けて退く人を弱しと思ふなよ智恵ちえちからの強きゆえなり
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
智恵ちえあり顔のさみしさに
若菜集 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
世間せけんやつらァ智恵ちえなしだから、おんなのにおいは、はだからじかでなけりゃ、げねえようにおもってるが、なさけねえもんだ。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
だが、それほど智恵ちえのある民部が、なんで、こんな苦しい血戦をみずからもとめ、みずから不得手な太刀を持って斬りむすぶようなことをしたのであろう。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
味方みかたのこらずにと覚悟かくごをきめたりしたこともありましたが、そのたびごとにいつも義家よしいえが、不思議ふしぎ智恵ちえ勇気ゆうきと、それから神様かみさまのような弓矢ゆみやわざてき退しりぞけて
八幡太郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
大老要撃の密計にも、一味にとって最大の智恵ちえぶくろとして参与することとなった。
つづれ烏羽玉 (新字新仮名) / 林不忘(著)
智恵ちえせとな。はッはッは。これは面白おもしろい。智恵ちえはわたしよりおまえほう多分たぶん持合もちあわせているはずだがの」
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
そしてはいなわも、たまいととおすことも、それから二ひき牝馬めうま親子おやこ見分みわけたことも、みんな年寄としより智恵ちえ出来できたことがかると、殿様とのさま今更いまさらのように感心かんしんなさいました。
姨捨山 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
しかし、さてこれから八幡船ばはんせん根城ねじろをさがそうとなると、それはほとんど雲にかくれた時鳥ほととぎすをもとめるようなものだった。——むろん小文治こぶんじにも、いい智恵ちえは浮かばなかった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
文殊もんじゅ智恵ちえ
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
……かねて“黄泥岡こうでいこう智恵ちえ取り”で奪いた金銀珠玉を五、六個の荷物にまとめ、手飼てがい壮丁わかもの十人ばかりにこれを護らせ、呉用と劉唐の二人が付いて、すぐ石碣村へ向って先発して行く。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
けれどやはりだれにもわった智恵ちえわせはありませんでした。
姨捨山 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
殿様とのさまはこれでまったく、お百姓ひゃくしょう智恵ちえこころからおどろいてしまいました。
姨捨山 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)