放蕩はうたう)” の例文
僕の如きも現にあざむかれて居た一人いちにんのだ、そりや君、酒は飲む放蕩はうたうはする、篠田の偽善程恐るべき者は無い、現に其のおほふべからざる明証の一は
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
ヒドい放蕩はうたうな生活の中から自殺しそくなつた経験をぬきとつて、高潮クライマックスだけを手記と云ふ風な形式で書いたつもりであつたが、うまく行かなかつたので
イボタの虫 (新字旧仮名) / 中戸川吉二(著)
その頃からにはかに異性といふものに目がさめはじめると同時に、同じやうな恋の対象がそれからそれへと心に映じて来たが、だらしのない父の放蕩はうたうむくいで
或売笑婦の話 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
あらゆる忍苦ではなかつたか。放蕩はうたうもまた苦行、残忍無残もまた苦行、デカダンもまた苦行、「恐ろしい群」もまた苦行、歓楽もまた苦行ではなかつたか。
ある僧の奇蹟 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
「帰れる放蕩はうたう息子」に自分自身をたとへた彼は、息苦しい都会の真中にあつて、柔かに優しいそれ故に平凡な自然のなかへ、溶け込んで了ひたいといふ切願を
押領あふりやうせんとたくむ智慧ちゑの深き事はかるべからずと雖も英智の贋物にせものにして悉皆こと/″\邪智じやち奸智かんちと云ふべし大石内藏助は其身放蕩はうたうと見せて君のあだを討ちしは忠士の智嚢ちなうを振ひ功名を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
小谷の放蕩はうたうは由子が来る前からのものだつた。今はどうにか自然と止まつてゐるが、由子は結婚以来殆ど楽しい思ひをしたことがないほど小谷の放蕩に悩まされた。
医師高間房一氏 (新字旧仮名) / 田畑修一郎(著)
いへのうちには不愉快ふゆくわいたゝまれないからのおあそび、こんなことをして良人をつと放蕩はうたうあげて仕舞しまふたのです、良人をつと美事みごとうちそとにするといふ道樂者だうらくものつて仕舞しまひました。
この子 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
一時は放蕩はうたうさへ働けば、一かど芸術がわかるやうに思ひあがつた連中がある。この頃は道義と宗教とを談ずれば、芭蕉ばせをもレオナルド・ダ・ヴインチも一呑ひとのみに呑みこみ顔をする連中がある。
雑筆 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
池上權藏いけがみごんざう此日このひからうまかはりました、もとより強健きやうけん體躯からだもつ元氣げんきさかんをとこではありましたが、放蕩はうたう放蕩はうたうかさねて親讓おやゆづり田地でんちほとんえてくなり、いへ屋敷やしきまで人手ひとでわたりかけたので
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
(翁の門人惟然が作といふ翁の肖像あるひは画幅の肖像、世に流伝するものと此説とあはせ視るべし)小川破笠俗称平助壮年さうねんころ放蕩はうたうにて嵐雪とともに(俗称服部彦兵ヱ)其角が堀江町のきよ食客しよくかくたりし事
勿論もちろん、その間にも、家々の浮沈がないでもない。それはかなりにある。ある家では息子が放蕩はうたうで田地のなかばを失つた。ある家では養蚕に成功して身代がその三倍になつた。
ある僧の奇蹟 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
持程のそんはなし夫故我は妻をも持ず世繼よつぎには人がほねをつ養育やういくした子をもらへば持參金ぢさんきんも何程かつくなり縱令たとへ放蕩はうたうを仕たればとて無した金は持參金より引去ひきさり離縁りえんさへすれば跡腹あとばら
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
彼奴きやつの家を御覧なさい、放蕩はうたうを御覧なさい、軍艦のコムミッションと、御用商人の賄賂わいろぢやありませんか、——貴嬢あなたを妻に欲しいと云ふのも、決して貴嬢の学識や品性を重んじて言ふのぢや無い
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
(翁の門人惟然が作といふ翁の肖像あるひは画幅の肖像、世に流伝するものと此説とあはせ視るべし)小川破笠俗称平助壮年さうねんころ放蕩はうたうにて嵐雪とともに(俗称服部彦兵ヱ)其角が堀江町のきよ食客しよくかくたりし事
村の人の幾らか好くなつたらうと望をしよくして居たのにもかゝはらず、相変らず無頼ぶらいで、放蕩はうたうで後悔を為るどころか一層大胆に悪事を行つて、殆ど傍若無人といふ有様であつた。
重右衛門の最後 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
情なき事に思ひ或時は放蕩はうたう擧動ふるまひ等御座候故是又其儘に打捨難うちすてがたいさめつなだめつ致し候中不※ふと藤五郎不行跡ふぎやうせきのこと御座りしを主税之助は幸ひに亂心と申たて座敷牢ざしきらう押込おしこめ我が實子じつしすけ五郎を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
何程なんぼ花婿が放蕩はうたうして、大切だいじな娘が泣きをつても、苦情を
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
此間も一度さういふことを考へたが、その夜もかれはかれ自身と放蕩はうたう無残な行為をした兄弟子との二つの生活をつづいて考へずには居られなかつた。兄弟子は慈雲と言つた。
ある僧の奇蹟 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
祖父は歿くなる、親は追出す、もう誰一人その我儘わがまゝめるものが無くなつたので、初めの中は自分の家の財産を抵当に、彼方あつち此方こつちから金を工面して、なほその放蕩はうたうを続けて居た。
重右衛門の最後 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)