はい)” の例文
後世の国をおさむる者が経綸けいりんを重んじて士気しきを養わんとするには、講和論者の姑息こそくはいして主戦論者の瘠我慢を取らざるべからず。
瘠我慢の説:02 瘠我慢の説 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
さて、事件が大分だいぶ複雑化して来たなと一人で決め込んだ私の眼の前へ、車のドアはいして元気よく飛び出した男は、ナントが親友青山喬介だ。
カンカン虫殺人事件 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
あわてて後へ戻ろうとしたのである。が、時すでに遅かった。靴音たかく、さっと一方の扉をはいして現われた将軍がある。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
与吉らほか十四人が雨戸をはいして戸外をのぞいた時は、真夜中の雨は庭一面を包み、植えこみをとおして離庵のほうからただならぬ気配がただよってきた。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
また、かくのごときはひと本邦ほんぽうばかりでない、西洋においても一時はわかりきったことさえも、わざわざ自国の通用語をはいしてラテン語をもって、論説した時代もあった。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
ドーアはいして這入って来るや否や、どうだ相変らず頑健がんけんかねと聞かざるを得なかったくらいである。
満韓ところどころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
巴里に行った人で一度はレストラン・エスカルゴのとびらはいしないものはないであろう。エスカルゴとは蝸牛かたつむりのことで、レストラン・エスカルゴは蝸牛料理で知られている店である。
異国食餌抄 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
みづから一の目的もくてきさだめ、万障ばんしやうはいし、終生しうせいてつその目的点もくてきてんたつせんとつとむるが如きは不信仰ふしんこう時代じだい行為こうゐなりき、しゆめいしたがひ、今日こんにち今日こんにちげふす、今日こんにち生涯しやうがいなり
問答二三 (新字旧仮名) / 内村鑑三(著)
しかりと雖も前途ぜんとけんます/\けんにして、人跡なほ未到のはたして予定にちがはざるなきや、之をおもへば一喜一憂交々こも/\いたる、万艱をはいして前進ぜんしんし野猪のゆうを之れたつとぶのみと、一行又熊笹くまささ叢中さうちうに頭をぼつして
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
偏狭へんきょう非文明的なるビジテリアンをはいす。
ビジテリアン大祭 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
されば物凄ものすごい相貌の変り方について種々奇怪きかいなる噂が立ち毛髪もうはつ剥落はくらくして左半分が禿げ頭になっていたと云うような風聞も根のない臆説おくせつとのみはいし去るわけには行かない佐助はそれ以来失明したから見ずに済んだでもあろうけれども
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
しかりといえども勝氏もまた人傑じんけつなり、当時幕府内部の物論ぶつろんはいして旗下きかの士の激昂げきこうしずめ、一身を犠牲ぎせいにして政府をき、以て王政維新おうせいいしんの成功をやすくして
瘠我慢の説:02 瘠我慢の説 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
浅間丈太郎、田宮善助、徳島側の者も何事かと騒いで、捕手をはいして進んできた。そうして、口々にまたとがめた。
鳴門秘帖:05 剣山の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
無人の境におった一人坊っちが急に、あられのごとき拍手のなかに包囲された一人坊っちとなる。包囲はなかなかまぬ。演奏者がたつはいしてわがしつに入らんとする間際まぎわになおなおはげしくなった。
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
もし真に天下の乱をおなげきならば、ここは何事もしのんで、まず新田殿をはいし、そして尊氏をお召しになり、戦をやめて、よく尊氏をお用いになるしか泰平の道はありますまい。
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そして一方は巌流を擁して、いよいよ君寵くんちょうのお覚えをたのみ、長岡様にもまた彼をはいし、御自身の派閥を重からしめんとしておるなどと、あらぬことを、道中などにても聞き及びました
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
突如、はいして顔を現わした者が、いきなり彼の頭へ大喝だいかつをくらわせた。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
はいして、さっと入って来た人がある。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「行こう! 万難をはいして」
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)