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手巾
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ハンカチ
ふりがな文庫
“
手巾
(
ハンカチ
)” の例文
時に依つて萬歳の叫喚で送られたり、
手巾
(
ハンカチ
)
で名殘を惜まれたり、または嗚咽でもつて不吉な餞を受けるのである。列車番號は一〇三。
列車
(旧字旧仮名)
/
太宰治
(著)
警部は、手箱と、二本の髪の毛と、「タニムラ」と縫いのしてある女持の絹
手巾
(
ハンカチ
)
とをテーブルの上にならべ、刑事の顔を見て言った。
謎の咬傷
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
なかでも、
波止場
(
はとば
)
の
人混
(
ひとご
)
みのなかで、押し
潰
(
つぶ
)
されそうになりながら、
手巾
(
ハンカチ
)
をふっている老母の姿をみたときは
目頭
(
めがしら
)
が熱くなりました。
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
手巾
(
ハンカチ
)
を
目頭
(
めがしら
)
にあてている洋装の若い女がいた。女学校のときの友達なのだろう。
蓬々
(
ぼうぼう
)
と生えた
眉毛
(
まゆげ
)
の下に泣きはらした目があった。
風宴
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
それは、現場のブレント
入江
(
クリイク
)
の草原で残雪にまみれて発見された「男持ちの血染めの
手巾
(
ハンカチ
)
、白地に青い線で縁取った大判の、木綿の安物」
双面獣
(新字新仮名)
/
牧逸馬
(著)
▼ もっと見る
あたかも、手品師が、開いた手に
手巾
(
ハンカチ
)
をかぶせ、何やら呪文を唱えた末、パッとそれを除ければ、掌にはキレイな小鳥——それそっくり。
ある偃松の独白
(新字新仮名)
/
中村清太郎
(著)
とも知らずあとへ入って来た一人の士官が不図自分の
手巾
(
ハンカチ
)
が落ちたと思ってポケットへ入れてしまった。彼は舞踊の席へ戻る。
日記:15 一九二九年(昭和四年)
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
靴足袋、玩具、甘蔗の茎、
貝釦
(
かいボタン
)
、
手巾
(
ハンカチ
)
、南京豆、——その外まだ薄穢い食物店が沢山ある。勿論此処の人の出は、日本の縁日と変りはない。
上海游記
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
居間ではエリスが
手巾
(
ハンカチ
)
を眼にあてて、深い椅子に腰を下ろしたまま、じっと
首垂
(
うなだ
)
れていた。ビアトレスと坂口は言葉もなく、その傍に佇んだ。
P丘の殺人事件
(新字新仮名)
/
松本泰
(著)
やがて、女は独りごとのようにいうと、敏捷な手つきで、白い
手巾
(
ハンカチ
)
を前髪の上にひろげた。その日、女は濃紺の細いタフタで、髪を束ねていた。
昼の花火
(新字新仮名)
/
山川方夫
(著)
「僕は
先日
(
こなひだ
)
電車のなかで女史が落した
手巾
(
ハンカチ
)
までも拾つてやつたんだ。加藤が何をした、奴はその折夕刊を読んで知らん顔をしてたぢやないか。」
茶話:03 大正六(一九一七)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
靜子は妹共と一緒に田の中の
畦道
(
あぜみち
)
に立つて、
手巾
(
ハンカチ
)
を振つてゐる。妹共は何か叫んでるらしいが、無論それは聞えない。智惠子は無性に心が騷いだ。
鳥影
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
令孃はおれの顏をちらと御覽になつたが、それから書物の方へ視線を移される途端に、
手巾
(
ハンカチ
)
を下へお落しになつた。
狂人日記
(旧字旧仮名)
/
ニコライ・ゴーゴリ
(著)
「まあ、御精が出ますねえ。」そう云って、園子はそっと香水をにじませた
手巾
(
ハンカチ
)
を鼻さきにあて、再び二階へ上った。きっちり障子を閉める音がした。
老夫婦
(新字新仮名)
/
黒島伝治
(著)
遠くで、遅い
柳絮
(
りゅうじょ
)
が一面に吹き荒れた雪のように茫々として舞い上った。彼はこっそりと盗んでおいた宮子の
手巾
(
ハンカチ
)
をポケットから取出すと鼻にあてた。
上海
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
日本へ着いたら絹の靴下だの
手巾
(
ハンカチ
)
だの沢山に占領して、飛行機に積めるだけ積んでネ、お土産にちょうだいよ、ネ
空襲下の日本
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
と、
頭
(
こうべ
)
を垂れて、ハッと云って、
俯向
(
うつむ
)
く
背
(
せな
)
を、人目も恥じず、
衝
(
つ
)
と抱いて、
手巾
(
ハンカチ
)
も取りあえず、袖にはらはらと落涙したのは、世にも
端麗
(
あでやか
)
なお町である。
白金之絵図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
手巾
(
ハンカチ
)
を顔に当てても何の
甲斐
(
かひ
)
もなかつたことをいつてゐることをおもひだして、幾らか心を慰めたのである。
ヴエスヴイオ山
(新字旧仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
菊江は白い小さな歯をした青年の口元を浮べたところで、己の足がもう
野菜店
(
やおや
)
の店の中へ入っているので、驚いて三個の
褐腐
(
こんにゃく
)
を買って、それを
手巾
(
ハンカチ
)
に
包
(
くる
)
んで出た。
女の怪異
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
鷲
(
わし
)
掴みにしたキャラコの
手巾
(
ハンカチ
)
でやけに鼻面を引っこすり引っこすり、大幅に車寄の石段を踏み降りると、野暮な足音を舗道に響かせながらお
濠端
(
ほりばた
)
の方へ歩いて行く。
魔都
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
激しく
手巾
(
ハンカチ
)
をふつてゐたが、凡太も亦、彼はデッキのステップに身を出して龍然に目礼を送りながら、目に光るものの溢れ出るのを、どうすることも出来なかつた。
黒谷村
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
顔には気障とか気取りとか威張った容子もなく、時々、
手巾
(
ハンカチ
)
をつかうような人でもなかった。
我が愛する詩人の伝記
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
手巾
(
ハンカチ
)
と一緒に小さな紙片のまるめたのが飛び出して来たので、その皺をのばして見ると、それは会社の便䇳紙で、何と次のような片仮名が、電報みたいに並んでいるのでした。
四月馬鹿
(新字新仮名)
/
渡辺温
(著)
すると彼女は三等室の窓の外へ體躯を伸ばしてたやすく彼の眼につくやうに、
手巾
(
ハンカチ
)
で合圖をした。出來る限り長い間、その孫の青黒い姿の見える限り、彼女は彼に眼をそゝいだ。
氷島の漁夫:01 氷島の漁夫
(旧字旧仮名)
/
ピエール・ロティ
(著)
アピア市中では赤い
手巾
(
ハンカチ
)
が売切になって了った。赤ハンカチの鉢巻が、マリエトア(ラウペパ)軍の制服なのだ。顔を黒く隈どった赤鉢巻の青年達で、市中はごった返している。
光と風と夢
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
やがて宝鏡先生が校長に代って壇に立ったが、その顔はいくぶん蒼ざめて
硬
(
こわ
)
ばっていた。先生は、先ず
手巾
(
ハンカチ
)
で顔の汗をふき、どこを見るともなく、その大きな眼をきょろきょろさせた。
次郎物語:03 第三部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
侍女の差し出した
手巾
(
ハンカチ
)
で顔を掩いながら烈しい
嗚咽
(
おえつ
)
を洩らしているのであります。
ウニデス潮流の彼方
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
細君は真赤に泣きはらした眼を伏せて、
手巾
(
ハンカチ
)
で鼻と口を覆ひながら降りて来た。
監獄挿話 面会人控所
(新字旧仮名)
/
伊藤野枝
(著)
久米は学生時代から、既に多少の文名を馳せてゐたし、芥川は大正五年の九月に、僕が時事へは
入
(
い
)
る一月前に「新小説」に「芋粥」を出し、十月には「中央公論」に「
手巾
(
ハンカチ
)
」を出してゐた。
世に出る前後
(新字旧仮名)
/
菊池寛
(著)
僕は何となく芥川龍之介の『
手巾
(
ハンカチ
)
』を思ひ出した。女は自分の立場の釈明や、周囲の冷眼に対する反発をこの純白のハンカチに託してゐたのだらうか。これも一つの作劇術に於ける臭味かもしれない。
車中も亦愉し
(新字旧仮名)
/
小津安二郎
(著)
ドウナルドは
手巾
(
ハンカチ
)
で
鐙
(
あぶみ
)
を造り、虎の頭の上で跳ね躍りました。
小公女
(新字新仮名)
/
フランシス・ホジソン・エリザ・バーネット
(著)
時に依って万歳の叫喚で送られたり、
手巾
(
ハンカチ
)
で名残を惜まれたり、または
嗚咽
(
おえつ
)
でもって不吉な
餞
(
はなむけ
)
を受けるのである。列車番号は一〇三。
列車
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
「大原の持っていた
手巾
(
ハンカチ
)
を君はどう説明する? 仮りに断髪の女が大原に麻酔をかけたとしても、その
手巾
(
ハンカチ
)
は別の女のものじゃないか」
謎の咬傷
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
だがそれは全くの事実で、
生命
(
いのち
)
までもと思ひ込んだ男女の恋なかが、もとは落した
手巾
(
ハンカチ
)
を拾つてやつた位の事に過ぎないのは世間によくある事だ。
茶話:04 大正七(一九一八)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
そうして相手が気のつかないように、そっとポケットへ
手巾
(
ハンカチ
)
をおさめた。それは彼が出征する時、
馴染
(
なじみ
)
の芸者に貰って来た、
縁
(
ふち
)
に
繍
(
ぬい
)
のある
手巾
(
ハンカチ
)
だった。
将軍
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
モウ五六間も門口の瓦斯燈から離れてよくは見えなかつたが、それは何か美しい模樣のある
淡紅色
(
ときいろ
)
の
手巾
(
ハンカチ
)
であつた。
菊池君
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
そのために先方からどんな苦情をうけるかと思うと、彼は気が気でないのだと包み隠さずにいって、この
寒中
(
かんちゅう
)
に
額
(
ひたい
)
にびっしょりとかいた汗を
手巾
(
ハンカチ
)
で
拭
(
ぬぐ
)
った。
東京要塞
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
あなたは、先頃の明るさにひきかえ、一夜の中に、
醜
(
みにく
)
く、
年老
(
としと
)
って、なにか人目を
恥
(
は
)
じ、泣いたあとのような赤い眼と手に
皺
(
しわ
)
くちゃの
手巾
(
ハンカチ
)
を持っていました。
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
手巾
(
ハンカチ
)
の
洗
(
あら
)
つたの、ビスミツト、
紙
(
かみ
)
に
包
(
つゝ
)
んでありますよ。
寶丹
(
はうたん
)
、
鶯懷爐
(
うぐひすくわいろ
)
、それから
膝栗毛
(
ひざくりげ
)
が
一册
(
いつさつ
)
、いつも
旅
(
たび
)
と
云
(
い
)
ふと
持
(
も
)
つておいでなさいますが、
何
(
なん
)
になるんです。
大阪まで
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
手巾
(
ハンカチ
)
の
笹縁
(
ささへり
)
が、額に淡い三角の影をつくり、女は、豊かな髪を持ち上げるように、両手を首のうしろに廻した。すこし上目づかいに彼をながめ、その唇が笑った。
昼の花火
(新字新仮名)
/
山川方夫
(著)
縁に赤い糸で
刺繍
(
ぬひとり
)
をした真白な
手巾
(
ハンカチ
)
を懐ろから取り出して、然るべく用を足すと、またもやそれを几帳面に十二折りに折りたたんで、懐中へ仕舞ひこんだものだ。
ディカーニカ近郷夜話 前篇:02 はしがき
(新字旧仮名)
/
ニコライ・ゴーゴリ
(著)
東京駅を出、品川辺で、乗込んで居た妹らしい若い婦人も別れを告げると、その細君は、あまり新らしくない白い
手巾
(
ハンカチ
)
を目に当て、田舎風に、而も真心をあらわして啜泣き始めた。
日記:09 一九二三年(大正十二年)
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
それから一週間程して、ドリアンはセルビイ・ロイヤルの植物室で、そこの硝子窓に白い
手巾
(
ハンカチ
)
の如くに貼りついて彼を瞶めているジェームス・ヴェンの顔を見出して気を失って倒れた。
絵姿:The Portrate of Dorian Gray
(新字新仮名)
/
渡辺温
、
オスカー・ワイルド
(著)
「では貴郎もあの事を御存知ですか」エリスは怖ろし気に
手巾
(
ハンカチ
)
で顔を覆った。
P丘の殺人事件
(新字新仮名)
/
松本泰
(著)
咳込んだ口を抑える
手巾
(
ハンカチ
)
の中に紅いものを見出さないことは
稀
(
まれ
)
だったのである。死に対する覚悟に就いてだけは、この未熟で
気障
(
きざ
)
な青年も、大悟徹底した高僧と似通ったものを
有
(
も
)
っていた。
光と風と夢
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
船が下り出すと、みつ子夫人は河岸からしきりに
手巾
(
ハンカチ
)
をふった。
次郎物語:03 第三部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
「
手巾
(
ハンカチ
)
はやはり大原の持っていたものでしょう。大原は
索物色情狂
(
フェチシスト
)
ですから、以前その女が店員をしていた頃、取ったのでしょう」
謎の咬傷
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
これはいかんと思って、ポケットから
手巾
(
ハンカチ
)
を出そうとすると、これはどういうわけか手に力がはいらない。
宇宙尖兵
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
白い婚礼麺麭が焼かれたり、
布巾
(
ふきん
)
や
手巾
(
ハンカチ
)
がしこたま縫はれたりして、焼酎の樽がころがし出されると、新郎新婦は並んで卓子につき、大きな婚礼麺麭が切られた。
ディカーニカ近郷夜話 前篇:04 イワン・クパーラの前夜
(新字旧仮名)
/
ニコライ・ゴーゴリ
(著)
博士はかういつて、その生一本な日本語を使ひ馴れた唇を、雑巾のやうな
手巾
(
ハンカチ
)
で
押
(
お
)
し
拭
(
ぬぐ
)
つて壇を下りた。
茶話:03 大正六(一九一七)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
“手巾”の意味
《名詞》
手拭い。ハンカチ。
「手巾帯」の略。
(出典:Wiktionary)
手
常用漢字
小1
部首:⼿
4画
巾
常用漢字
中学
部首:⼱
3画
“手”で始まる語句
手
手拭
手前
手繰
手許
手向
手綱
手際
手燭
手段