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悶着
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もんちゃく
ふりがな文庫
“
悶着
(
もんちゃく
)” の例文
その鶴子が時も時、結婚問題で
悶着
(
もんちゃく
)
の起っている今、かくも無惨な変死をとげたのだ。大宅が青くなったのは、別に不思議でない。
鬼
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
ところがお秀との
悶着
(
もんちゃく
)
が、偶然にもお延の胸にあるこの扉を一度にがらりと
敲
(
たた
)
き破った。しかもお延自身
毫
(
ごう
)
もそこに気がつかなかった。
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
これ悪漢が持てりし
兇器
(
きょうき
)
なるが、渠らは白糸を
手籠
(
てご
)
めにせしとき、かれこれ
悶着
(
もんちゃく
)
の間に取り
遺
(
おと
)
せしを、忘れて捨て行きたるなり。
義血侠血
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
帰るなり、たやすからぬ
悶着
(
もんちゃく
)
がおき、投資した金のことにまで発展し、明日中に株券を売払って、息子と二人でべつな家に住むといいだした。
青髯二百八十三人の妻
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
「おい戸倉。きさまが、しぶといから、こんな
悶着
(
もんちゃく
)
が起る。早く隠し場所をいってしまえ。この
黄金
(
おうごん
)
メダルの半分の方はどこに隠して持っている」
少年探偵長
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
▼ もっと見る
富仁
(
とみひと
)
を
擬
(
ぎ
)
していたところ、これがまた大覚寺の後宇多上皇の御気色にさわり、
一
(
ひ
)
ト
悶着
(
もんちゃく
)
をみたが、関東方では、交代制を堅持して、とりあわなかった。
私本太平記:03 みなかみ帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
校長ルービンシュタインと生徒の間に
悶着
(
もんちゃく
)
が起り、演奏会は気違いじみた示威運動に葬られて、チャイコフスキーの音楽は
滅茶滅茶
(
めちゃめちゃ
)
にされてしまった。
楽聖物語
(新字新仮名)
/
野村胡堂
、
野村あらえびす
(著)
彼
(
か
)
れ
此
(
こ
)
れと
悶着
(
もんちゃく
)
して居る間に
夜
(
よ
)
が明けて
仕舞
(
しま
)
い、私は何にも知らずにその朝船に
乗
(
のっ
)
て海上無事神戸に着きました。
福翁自伝:02 福翁自伝
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
「今のところはあいつは手には負えないが、おれの個人的な
悶着
(
もんちゃく
)
が片づいたら、きっといちばん先に痛い目にあわせてやるぞ、しかもできるだけひどくだ」
審判
(新字新仮名)
/
フランツ・カフカ
(著)
上
(
あが
)
り
框
(
かまち
)
から
草鞋
(
わらじ
)
を
穿
(
は
)
き、笠をかぶり、杖を取って、威勢よく旅を送り出されようとする時、その出鼻で、またしても一つの
悶着
(
もんちゃく
)
を見せられてしまいました。
大菩薩峠:30 畜生谷の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
明くる日の朝、妙子は八時に廻された寝台自動車で運び出されたが、その時にも
亦
(
また
)
ちょっとした
悶着
(
もんちゃく
)
があった。
細雪:03 下巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
鼠小僧と想像される、ある一人の人間が、水神の方から大急ぎで、横歩きでここまで来たところ、十間のあなたで一組の男女が、何やら
悶着
(
もんちゃく
)
を起こしている。
名人地獄
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
かねて承知の通り、
山脇長門
(
やまわきながと
)
と
悶着
(
もんちゃく
)
の間柄であったが、このたびついにかような事に相成ってしまった。
三十二刻
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
床屋の主人は何んでも世話を焼いて、
此所
(
ここ
)
で話が決まるという風。お
祭礼
(
まつり
)
の相談、婚礼の話——夫婦別れの
悶着
(
もんちゃく
)
、そんなことに床屋の主人は主となって口を利いたものです。
幕末維新懐古談:05 その頃の床屋と湯屋のはなし
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
最近Aは家との間に或る
悶着
(
もんちゃく
)
を起していました。それは結婚問題なのです。Aが自分の欲している道をゆけば父母を捨てたことになります。少くも父母にとってはそうです。
橡の花
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
そうそうこの
馬
(
うま
)
の
命名
(
めいめい
)
につきましては、
良人
(
おっと
)
と
私
(
わたくし
)
との
間
(
あいだ
)
に、なかなかの
悶着
(
もんちゃく
)
がございました。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
「向こうに着いたらこれで
悶着
(
もんちゃく
)
ものだぜ。田川の
嚊
(
かかあ
)
め、あいつ、
一味噌
(
ひとみそ
)
すらずにおくまいて」
或る女:1(前編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
父も母も、江戸っ子
肌
(
はだ
)
の、さっぱりした気性の人であったから、そのまま私のことでは一度も
悶着
(
もんちゃく
)
したこともないらしく、誰れの目にもほんとうの親子と思われるほどだった。
花を持てる女
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
随分長い談判の結果、母は帰ってもいいが、
乳呑児
(
ちのみご
)
をどうするということに
悶着
(
もんちゃく
)
が起きた。
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
「九州は黄櫨の多いところですが、当県下は殊に
然
(
そ
)
うです。昔殿様の御奨励で手当り次第に植えましたけれど主のない木が沢山出来まして、実を取る時に能く
悶着
(
もんちゃく
)
が起ります」
ぐうたら道中記
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
寺の住職と町村との間に一
悶着
(
もんちゃく
)
あったそうですが、結局、住職が譲歩し、その筋の了解も得て、朝まだきの人の迷惑にならない一時間ほどの間を狩ることになったのだそうです。
生々流転
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
長屋の者が、また
悶着
(
もんちゃく
)
でも持ちこんできたか?……と、泰軒先生が眉をあげたとたん。
丹下左膳:02 こけ猿の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
だんだんその理由を
質
(
ただ
)
すと、前日友人が来て
半
(
なかば
)
以上
悶着
(
もんちゃく
)
を解決しておいてくれたなどということが、数日あるいは時によっては数年
経
(
た
)
って初めて発見されることを
自
(
みずか
)
らも経験したし
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
紀州の沖や土佐の沖じゃ、一網に何万と
鯔
(
ぼら
)
が入ったの
鰤
(
ぶり
)
が捕れたのと言うけれどこの辺の内海じゃ魚の種が年年尽きるばかりだから、しだいに村同士で漁場の
悶着
(
もんちゃく
)
が激しゅうなるんじゃ。
入江のほとり
(新字新仮名)
/
正宗白鳥
(著)
兄頼家が辞めて、翌年修善寺で殺されるまで、なかなかの
悶着
(
もんちゃく
)
があった。
中世の文学伝統
(新字新仮名)
/
風巻景次郎
(著)
僕も、うっかり、レヤチーズの壮烈な最後に熱狂し、身辺の
悶着
(
もんちゃく
)
を忘れていた。叔父さんは、御自分のうしろ暗さを、こんどの戦争で、ごまかそうとしているのかも知れぬ。案外、これは、——
新ハムレット
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
わたくし一人でございます——これはアグラフェーナ・アレクサンドロヴナの
悶着
(
もんちゃく
)
が始まって以来、旦那が御自身でお決めになった手はずです、しかし夜になると、わたくしは旦那の言いつけで
カラマゾフの兄弟:01 上
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
それゆえ、会長になれば必ず一と
悶着
(
もんちゃく
)
起すにきまっているので、「おいそれ」と会長にはならなかったのだ。もちろん、改革に着手するとなれば、ファラデー側の賛成者もあることは確なのである。
ファラデーの伝:電気学の泰斗
(新字新仮名)
/
愛知敬一
(著)
結局、小鉄も
切羽
(
せっぱ
)
つまって、ダルトンと自分との関係を明かしたが、梁福はまだ素直に信用しない。その
悶着
(
もんちゃく
)
の最中に、椰子の梢でがさがさという音がして、大きい一つの実が小鉄の頭の上に……。
探偵夜話
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
悶着
(
もんちゃく
)
以来まだ五日にもならぬに、お政はガラリその
容子
(
ようす
)
を一変した。
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
しかる処後家の方にても不身持の事につき、親戚中にてもいろ/\
悶着
(
もんちゃく
)
有之候が、万一間違など有之候ては、かへつて外聞にもかかはり候事とて、結局得念に
還俗
(
げんぞく
)
致させ候上、
入夫
(
にゅうふ
)
致させ申すべき
趣
(
おもむき
)
。
榎物語
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
五十前後のやかましそうな浪人者が、お勝手いっぱいに、通せん坊をするように立ち
塞
(
ふさ
)
がりました。たぶん娘のお妙と、なにか一と
悶着
(
もんちゃく
)
のあった様子です。
銭形平次捕物控:244 凧の糸目
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
ここでもし二名の追放がうやむやに終るとすれば、必ず水戸家とめあいだに
悶着
(
もんちゃく
)
が再発する、——この問題だけは兄の言葉どおりにするほかはない、頼胤はそう心をきめた。
新潮記
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
幾条
(
いくすじ
)
も持っているために、隣接の諸国、たとえば、北条、徳川、織田、斎藤などにしても、彼と外交し、彼と戦い彼と
悶着
(
もんちゃく
)
するなど、明けても暮れても、応接にいとまがなかった。
上杉謙信
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
磯五は、それを思い出して、
悶着
(
もんちゃく
)
のないようにこの出し入れをしなければならないと思った。新しいおしんという女は、
手腕
(
うで
)
も達者だし、すこしは人も使えて、人間もいいというのである。
巷説享保図絵
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
そのことでは、姦夫姦婦の間に
悶着
(
もんちゃく
)
が絶えぬということが、あとで分った。瑠璃子にしては、いやな大牟田敏清を殺してくれたのは有難いが、その為に子爵家の実権を失うのが口惜しかった。
白髪鬼
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
騒動って何があったのですと聞くと、例の差配人との
悶着
(
もんちゃく
)
一件である。
倫敦消息
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
女中と出来合って
悶着
(
もんちゃく
)
が起ったのを、男の方は何とかいう、あっちの堅気の名主様かなにかが出て、あやまったし、女の方はわたしが頼まれて口を利いてあげただけの縁なんだが、その歳どんが
大菩薩峠:37 恐山の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
若し
相愛
(
あいあい
)
していなければ、
婚姻
(
こんいん
)
の相談が有った時、お勢が
戯談
(
じょうだん
)
に
托辞
(
かこつ
)
けてそれとなく文三の
肚
(
はら
)
を探る筈もなし、また叔母と
悶着
(
もんちゃく
)
をした時、他人
同前
(
どうぜん
)
の文三を
庇護
(
かば
)
って真実の母親と抗論する
理由
(
いわれ
)
もない。
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
これは次期市議選挙に対する予備工作のひとつだったんだろう、せいぜい三千部ばかりの古雑誌だったが、これを妻君とのひと
悶着
(
もんちゃく
)
を恐れて、彼女には知らせずに寄付したものさ。
陽気な客
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
だから平家一門の
公達輩
(
きんだちばら
)
は、
見
(
みえ
)
にして、
各〻
(
めいめい
)
、名馬を争い持った。名馬を手に入れる事では、
屡〻
(
しばしば
)
悶着
(
もんちゃく
)
や喧嘩さえ起った。そういう平家人のあいだでは、こんな事すら云われていた。
源頼朝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
詮索
(
せんさく
)
すればなにが出てくるかわからないし、こんな事で
悶着
(
もんちゃく
)
を起こすときではない。
樅ノ木は残った:01 第一部
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
同じとき持木屋の店先でも
悶着
(
もんちゃく
)
が起こっていた。
田丸屋益造
(
たまるやますぞう
)
、
折屋伝内
(
おりやでんない
)
、
水尾割助
(
みずおわりすけ
)
など五人の旦那が、それぞれ額面壱万両の持木屋の手形を出して「すぐ現金に替えてもらいたい」と請求したのだ。
三悪人物語:忍術千一夜 第二話
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
そこでかなりな
悶着
(
もんちゃく
)
が始まったのである。
長屋天一坊
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
「弱った、また
悶着
(
もんちゃく
)
だな——」
入婿十万両
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
“悶着”の意味
《名詞》
悶着 (もんちゃく)
揉め事。
(出典:Wiktionary)
悶
漢検準1級
部首:⼼
12画
着
常用漢字
小3
部首:⽬
12画
“悶着”で始まる語句
悶着中
悶着事