忠実ちゅうじつ)” の例文
旧字:忠實
「そうだよ。おまえは善良ぜんりょう忠実ちゅうじつな友だちだ。けれどなさけないことにはほかのものがいないでは、もうたいしたことはできないのだ」
わたくし三浦みうらとついだころは五十さいくらいでもあったでしょうが、とう女房にょうぼう先立さきだたれ、独身どくしんはたらいている、いたって忠実ちゅうじつ親爺おやじさんでした。
時間のゆるすかぎり、糟谷かすや近郷きんごうの人の依頼いらいおうじて家蓄かちく疾病しっぺいを見てやっていた。職務しょくむ忠実ちゅうじつな考えからばかりではないのだ。
老獣医 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
主人しゅじんのためにはいのちをすてて主人の危険きけんすくう犬がよくありますが、しろ公もまたそういう忠実ちゅうじつな犬にちがいありません。
あたまでっかち (新字新仮名) / 下村千秋(著)
博雄は、友人の間に寛容かんようであるらしい。そして子供らしい親切さと、忠実ちゅうじつさをもって交際するとのうわさであり、友人たちからこれを容認されている。
親は眺めて考えている (新字新仮名) / 金森徳次郎(著)
そのおとこは、ただ忠実ちゅうじつ仕事しごとのことばかりかんがえているようでした。それには、なにか、目的もくてきがあったのかもしれない。
火を点ず (新字新仮名) / 小川未明(著)
やぶれたシャツはうちに置いてたから、今この職務しょくむ忠実ちゅうじつ教育家きょういくかのこわばった手の動きにつれて、新しいざっぱりしたシャツがさやさやと、かすかなおとを立てているのだ。
身体検査 (新字新仮名) / フョードル・ソログープ(著)
すこしもものをいわせないことにし——しゃべれば隆夫は日本語しか話せなかった——治明博士はその忠実ちゅうじつなる下僕しもべとして仕えているように見せかけ、そのキラマン号の下級船員の信用を得て
霊魂第十号の秘密 (新字新仮名) / 海野十三(著)
商人は商人、教師は教師、役人は役人とおのれのあずかっている職務に忠実ちゅうじつにして、なおかつ思想は高く俗界を超越ちょうえつして、商人が金を造っても金を目的とせず、農家が肥料ひりょうほどこしても収穫しゅうかく以上に目的を置き
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
するとこの忠実ちゅうじつな犬はわたしたちといっしょにまつ葉の上でねむろうとはしないで、わたしの野営地やえいちの入口に、歩哨ほしょうのように横になっていた。
わたくしはそこで忠実ちゅうじつ家来けらい腰元こしもと相手あいて余生よせいおくり、そしてそこでさびしくこの気息いきったのでございます。
窃盗せっとう嫌疑けんぎけて、身体検査しんたいけんさまでされ、半裸体はんらたい姿すがたちながら、職務しょくむ忠実ちゅうじつすぎる男の自由じゆうにされる——これがはずかしくないだろうか? しかし、これも経験けいけんなのだ。
身体検査 (新字新仮名) / フョードル・ソログープ(著)
毎朝まいあさちちは、この時計とけい出勤しゅっきんしたし、またははは、この時計とけいて、夕飯ゆうはんのしたくをしたのでした。そして、時計とけいは、やすみなく、くるいなく、忠実ちゅうじつに、そのつとめをはたしたのです。
時計と窓の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「カピ、ゼルビノに言ってお聞かせ。あれはわからないようだから」と、わたしは忠実ちゅうじつなカピに言った。
わたくしちちも、ははも、それからわたくし手元てもとめし使つかっていた、忠実ちゅうじつ一人ひとり老僕ろうぼくなども、わたくし岩屋いわやとき前後ぜんごして歿ぼっしまして、その都度つどわたくしはこちらから、見舞みまいまいったのでございます。
先生せんせいは、小田おだ忠実ちゅうじつであって、信用しんようのおける人物じんぶつであることは、とうからていられたので、かれに、学問がくもんをさしたら、ますます人間にんげんになるとおもわれたから、このごろ、ひまのあるときは
空晴れて (新字新仮名) / 小川未明(著)
下界げかいのことを、いつも忠実ちゅうじつ見守みまもっているやさしいほしは、これにこたえて
ある夜の星たちの話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
善吉ぜんきちも、武夫たけおも、忠実ちゅうじついぬが、かわいくなりました。
赤土へくる子供たち (新字新仮名) / 小川未明(著)