御気色みけしき)” の例文
旧字:御氣色
逆鱗げきりんは申すまでもない。お留守をあずかっていた公卿輩くげばらはもちろんのこと、行幸みゆきいてもどった人々も、その御気色みけしき慴伏しょうふくして
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そういううちにも怪しき御気色みけしきになり、舗道の上に両股を踏ん張って真実今にも喚き出そうふうだから、古市もとうとう兜を脱ぎ、ままよ
魔都 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
「だってあの御気色みけしき御覧ごろうじろ、きっとあれだ、ちげえねえね、八丁堀で花札ふだが走った上に、怨み重なる支那チャンチャンと来ちゃあ、こりゃおごられッこなし。」
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
翌建仁元年四十歳のとき、『千五百番歌合』のための百首を献じて、殊によろしき由の御気色みけしきを賜わった。間もなく和歌所が設置されて寄人よりうどに加えられた。
中世の文学伝統 (新字新仮名) / 風巻景次郎(著)
ひかりの中につらつら御気色みけしきを見たてまつるに、あけをそそぎたる竜顔みおもてに、一二八おどろかみひざにかかるまで乱れ、白眼しろきまなこりあげ、あついきをくるしげにつがせ給ふ。
「ナニネ、先刻さっき我輩が明治年代の丹治と云ッたのが御気色みけしきに障ッたと云ッて、この通り顔色まで変えて御立腹だ。貴嬢あなた情夫いろにしちゃアと野暮天すぎるネ」
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
ひでよし公はお市どのをうばいそこねてたいそう御気色みけしきをそんぜられたそうでござりますけれども
盲目物語 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
勢のよい、しかも美しい鶉の声にとう/\疱瘡の神ははげしい風に吹きとばされる雲のやうに追ひのけられ、王様の御気色みけしきはうららかに晴れた蒼空あをぞらのやうに美しくなりました。
孝行鶉の話 (新字旧仮名) / 宮原晃一郎(著)
俊寛様はこうおっしゃると、たちまちまた御眼おんめのどこかに、陽気な御気色みけしきひらめきました。
俊寛 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
この雲行から察すると、治右の手がすでに将軍家にまでも伸びているのは言うまでもないこと、一言半句の失言があっても、御気色みけしきは愈々険悪けんあく、恐るべき御上意の下るのは知れ切ったことでした。
せめて暑中しよちうは西の京へでも、侍臣斯く申せば、御気色みけしきかはり、のたまひけらく「ちん西京をきらふと思ふか。いな、朕は西の京が大好きなり。さりながら、朕、東の京を去らば、誰か日本のまつりごとを見むものぞ?」
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
朝雲の大き御気色みけしきかすかだに仰ぎまつらばただに涙ならむ
夢殿 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
御気色みけしきいとゞ麗はしくいますが如くおもほえて
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)
お師さま、その噂は、まことらしゅうございます。私もうから耳にしておりましたが、近ごろは、ご遠方へお出ましもなく、また御気色みけしき
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
中途で退出したことを聞召きこしめされて大いに御気色みけしきを損ぜられたので、浄蔵は深く勅勘ちょっかんの身をつゝしみ、三箇年の間横川よかわ首楞厳院しゅりょうごんいん籠居ろうきょして修練苦行の日を送ったと云うが、世間一般の人々は
少将滋幹の母 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
一面に気味悪く紫立って、御褥おしとね白綾しろあやも焦げるかと思う御気色みけしきになりました。
邪宗門 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
「いつにないお爽やかな御気色みけしき、主水之介何よりの歓びにござります」
夫人おくさま御気色みけしきが悪いとおっしゃって、さきほど御寝おしずまりになりました」
湖畔 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
老婦人は奥歯を噛切かみしめ、御気色みけしき荒く
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
帝の御気色みけしきは、これへ来る前とは別人のように晴々として明るい笑くぼすらたたえておられる。百官はその御容子を仰ぐとみな
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
紅葉狩もみじがりと、次々に催しがあるのだけれども、今年はそんな次第で殿の御気色みけしきがすぐれないものだから、表でも奥でも派手な遊びは差控えることにして、ほんの型ばかりの行事を済ませた。
と、みな色を失い、彼ら衣冠いかんのつつしみぶかい眸も、せつな、こぞって御簾ぎょれんのうちの御気色みけしきへ、思わずうごいたほどである。
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「それどころでない。逆鱗げきりんあらせられた御気色みけしきですらある。——きっと、今日のことは、やがて重いおとがめでもあろうぞ」
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
正成をのこして、ついと謁見えっけん御座ぎょざをお立ちになってしまった御気色みけしきにみても、お腹立ちのほどは充分にうかがわれる。
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
もとより、御立腹には見えました。宵のころ、木工助やあると、ただならぬ御気色みけしきで。……彼奴きゃつめ、どこを
公卿百官は、競馬も見ているが、天皇と院の御気色みけしきには、のべつ気をつかっている。
然るにいま、呉君におかれては、碌々ろくろく一身の安穏のみを計る文官たちの弱音にひかれて、遂に、曹操へ降伏せんかの御気色みけしきにうかがわれる。実に残念とも何ともいいようがありません
三国志:07 赤壁の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ようたとえられた。まことに、法皇の御気色みけしきは、照り降り雨、われらが側近にあれば、また変る。お案じあるな」席には、近江おうみの入道蓮浄、山城守基兼もとかね平判官へいほうがん康頼、その他の人々がいた。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
たまたまの祭日や盆正月のみが、彼らの慰楽で、平常は日々自粛、日々奉公、ゆるみもない民だ。——また信長も、今川風の政治は民にいたしておらぬ! ……と、きつい御気色みけしきで仰せられた
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
佐々木道誉ですらも、まだその決定は知らず、妃三人を送りこんだ次の日も、なお、樗門の内へ来て、行房と忠顕に会い、昨夜の御気色みけしきぶりなどを、それとなく洩れ伺ッたりなどしていた。
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
仙洞せんとう御気色みけしきへつらい、武功に誇り、頼朝にも計らわず、五位のじょうに昇るなど、身のほどを忘れた振舞、肉親とて、捨ておいては、覇業のさわりになる。今のうちに、九郎冠者めを討って取れ」
日本名婦伝:静御前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
法皇にも御眉おんまゆをひらかれた。うるわしい御気色みけしきのうちに、御座を立たれた。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
勅使は、綸言りんげんを伝えていう。今日の事、叡覧えいらんあって龍顔りゅうがん殊のほか御うるわしく、上古末代の見もの、本朝のみか、異国にもかほどのさまはあるべからずとのたまわせ、斜めならぬ御気色みけしきに仰がれた。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
一ときは、やや御気色みけしきをうごかしたが、さして怪しむ容子でもなく
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、すくなからぬお驚きと、またありあり、ご不満な御気色みけしきだった。
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「やあ、これは。——筑前殿にはいつもながらおうるわしい御気色みけしきで」
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「いや、ほんとのご歓待なんてものは、形や物ではありません。その点、御気色みけしきにさわるふしもありましょうが、それがしは寨中の末端者だし、何かとつい行き届きません。どうかおゆるしのほどを」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
袁術皇帝は、この秋、すこぶる御気色みけしきうるわしくない。
三国志:04 草莽の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)