天竺てんぢく)” の例文
ゆめ五臟ござうのわづらひといひつたふれども正夢しやうむにして賢人けんじん聖人せいじん或は名僧めいそう知識ちしきの人をむは天竺てんぢく唐土もろこし我朝わがてうともにそのためすくなからずすで玄奘法師げんさうほふしは夢を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
我朝はいふに及ばず、天竺てんぢく震旦しんたんにも是程さほどの法滅有るべしともおぼえず、優填うてん大王の紫磨金しまごんみがき、毘首羯摩びしゆかつま赤栴檀しやくせんだんきざみしも、わづかに等身の御仏なり。
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
むかうは、わにおよぐ、可恐おそろし大河おほかはよ。……水上みなかみ幾千里いくせんりだかわからない、天竺てんぢくのね、流沙河りうさがはすゑだとさ、河幅かははゞが三うへふかさは何百尋なんびやくひろわかりません。
印度更紗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
天竺てんぢくまで流されて行つて、積荷をさばいた上、大した金目のものを積んで、清水港まで來て居るのだ。
久遠くをんのむかしに、天竺てんぢくの国にひとりの若い修行しゆぎやう僧が居り、野にいでて、感ずるところありてそのせいもらしつ、その精草の葉にかかれり。などといふやうなことが書いてあつた。
念珠集 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
ごくかいつまんだだけをお話しても、杜子春が金の杯に西洋から来た葡萄酒を汲んで、天竺てんぢく生れの魔法使が刀を呑んで見せる芸に見とれてゐると、そのまはりには二十人の女たちが
杜子春 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
とねりこよ、色蒼いろあをざめた天竺てんぢく赤脚仙ジムノソフイスト、えたいの知れぬ木、わたしの悲しい心のよろこび
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
天竺てんぢく靈山れいざん此處に來れり。唐土たうど天台山てんだいざんまのあたりここに見る。我が身は釋迦佛にあらず、天台大師てんだいだいしにてはなし。然れども晝夜ちうやに法華經をよみ、朝暮てうぼ摩訶止觀まかしくわんを談ずれば、靈山淨土にも相似たり。
天竺てんぢくは火事じや、は火事じや
畑の祭 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
天竺てんぢく震旦しんたん古例これいあり
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
ねん幾月いくつきはじめて、世界せかいへた天竺てんぢく蕃蛇剌馬ばんじやらあまん黄昏たそがれに、いろした鸚鵡あうむくちから、おなことばいたので、投臥なげふしていた、とひます。
印度更紗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
一度縁あつて江戸に入りましたが、もとの天竺てんぢくのお寺にかへした方が、八方圓く納まるに違ひないと、庄司三郎兵衞も千二百兩の大金を手に入れて滿足したことでせう。
天竺てんぢくは火事じや、は火事じや
畑の祭 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
「それだつて日本の文字だよ、變體假名交りの草書さうしよだけれど、オランダや天竺てんぢくの文字ぢやねえ」
うゑちたる天竺てんぢく末期まつご苦患くげん
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
「睡り藥だらう、それもきゝのよいところを見ると南蠻物だ。この間池の端の丸屋で盜まれた毒藥の中に、天竺てんぢく阿片あへんから採つた、恐ろしい眠り藥があると聽いたが——」
銭形平次捕物控:239 群盗 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
いづれも天竺てんぢくの名木で作つたものでせう、色彩しきさい剥落はくらくしてまことに慘憺さんたんたる有樣ですが、男女二體の彫像てうざうの内、男體の額にちりばめた夜光の珠は燦然さんぜんとして方丈はうぢやうの堂内を睨むのでした。
その人參や沈香の方も氣をつけてくれ、近頃は唐、天竺てんぢく和蘭オランダあたりの品がよく入るやうだから、——拔りはあるまいが、何處からそんな品が手に入つて來るか、突き止めるんだよ。
當山の大黒天は、行基菩薩ぎやうきぼさつが南海に流れ寄つた天竺てんぢく香木かうぼくきざんだといふ有難い秘佛ですが、本堂の破損が甚だしく、その再建のため、當山始まつて以來、百日を限つての御開帳を行ひました。
銭形平次捕物控:274 贋金 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
「百兩の茶碗、五十兩の茶入。こいつは何んとか言ふ坊さんがのたくらせた蚯蚓みゝずで、こいつは天竺てんぢくから渡つた水差しだと、獨りでえつに入つて居るうちはよかつたが、——人の怨みは怖いね、親分」
「面白いぢやありませんか、歡喜天といふのは、象の頭で人間の身體の和合神わがふしんですつてね。男體は大荒神おほあらがみで、女體は觀音樣の化身けしん、——その聖天樣の像といふのは、天竺てんぢく傳來の大した御本尊ですぜ」