天日てんじつ)” の例文
爪長つめながく、おほきさは七しやく乃至ないしじやう二三じやくぐらいの巨鳥きよてうが、天日てんじつくらくなるまでおびたゞしくぐんをなして、輕氣球けいきゝゆう目懸めがけて、おそつてたのである。
煙が都の空を全く覆ってしまったのではないかと思われる程に都の空には塵や埃が舞い上って天日てんじつ為に暗きを感じた程であった。
現代語訳 方丈記 (新字新仮名) / 鴨長明(著)
はいでは生きられない人間だ。どこまでこね返しても、表裏のない人間と世の中はつくれない。要は、今の混沌こんとんたる暗闇くらやみ政道をただして、まことの天日てんじつ
鳴門秘帖:05 剣山の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
許してたもれ! 許してたもれ! 暴風雨あらしあまつ日の光りをおおえかしと魔女は森の中に駆け込んだ。天日てんじつにわかに掻き曇って、湖面の水黒く渦巻き返える。
森の妖姫 (新字新仮名) / 小川未明(著)
己はなんだか、自分の周囲を包んで居た暗澹あんたんたる雲の隙間から、遥かに天日てんじつの光を仰いだような心地こゝちがした。
小僧の夢 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
夫婦ふうふきてふたゝ天日てんじつあふぐのは、たゞ無事ぶじしたまで幾階いくかいだんりる、そればかり、とおもふと、昨夜ゆふべにもず、爪先つまさきふるふ、こしが、がくつく、こほつてにくこはばる。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
女子に限らず、経済的独立が何人にも必要であることは天日てんじつを指すのと等しく明かな事実です。
天日てんじつを遮るものがない、かつこの山は、殆ど上りばかりで、足を休める平坦なみちがない、暑いのと、急なのとで、一行やや疲れ気味が見え出したが、此処ここで疲れては仕様がないと
武甲山に登る (新字新仮名) / 河井酔茗(著)
この妖怪学者は、天日てんじつを嫌って昼間は余り外出しない癖に、深夜人の寝静まった時などを歩き廻る趣味を持っていると聞いていたが、昨夜もその夜の散歩をしたのであろう。
悪霊 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
不快にさせるくらいだ。いくら鳶が鳴いたからといって、天日てんじつの歩みが止まるものではない。己の八犬伝は必ず完成するだろう。そうしてその時は、日本が古今に比倫のない大伝奇を持つ時だ。
戯作三昧 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
夏の日の天日てんじつひとつわがうへにややまばゆかるものと思ひぬ
恋衣 (新字旧仮名) / 山川登美子増田雅子与謝野晶子(著)
來れ、此地の天日てんじつにこよなきのりの言葉あり
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
天日てんじつ直射して熱く帽子に照りぬ。
やわらかい尻が天日てんじつにさらされ
原爆詩集 (新字新仮名) / 峠三吉(著)
天日てんじつのうつりて暗し蝌蚪かとの水
五百句 (新字旧仮名) / 高浜虚子(著)
驕慢きやうまんゆる天日てんじつ
全都覚醒賦 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
お村は昨夜ゆうべの夜半より、藪の真中まなか打込うちこまれ、身動きだにもならざるに、酒のしたひて寄来よりくの群は謂ふもさらなり、何十年を経たりけむ、天日てんじつ蔽隠おおひかくして昼なほくらき大藪なれば
妖怪年代記 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
それから四年※よねんすぎてのいまはからずも貴方あなた再會さいくわいして、いろ/\のおはなしうかゞつてると、まるでゆめのやうで、霖雨ながあめのち天日てんじつはいするよりもうれしく、たゞ/\てん感謝かんしやするのほかはありません。
君を思ひ昼も夢見ぬ天日てんじつの焔のごとき五月さつきの森に
舞姫 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
来れ、此地の天日てんじつにこよなきのりの言葉あり
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)
天日てんじつ家竝の軒に低くして
宿命 (旧字旧仮名) / 萩原朔太郎(著)
天日てんじつの下に口をあけ
昔の小出新道にて (旧字旧仮名) / 萩原朔太郎(著)
天日てんじつこゝに見えず
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
天日てんじつの下に口をあけ
宿命 (旧字旧仮名) / 萩原朔太郎(著)