夥多おびたゞ)” の例文
折くべ居る時しも此方の納戸なんど共覺しき所にて何者やらん夥多おびたゞしく身悶みもだえして苦しむ音の聞ゆるにぞ友次郎はきもつぶし何事成んと耳を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
主墳しゆふんではるまいが、人氣にんきゆるんで折柄をりがらとて、學者がくしやも、記者きしやも、高等野次馬かうとうやじうまも、警官けいくわんも、こと/″\此所こゝあつまつて、作業さくげふ邪魔じやまとなること夥多おびたゞしい。
みち太郎稻荷たらういなりあり、奉納ほうなふ手拭てぬぐひだうおほふ、ちさ鳥居とりゐ夥多おびたゞし。此處こゝ彼處かしこ露地ろぢあたりに手習草紙てならひざうししたるがいたところゆ、いともしをらし。それより待乳山まつちやま聖天しやうでんまうづ。
弥次行 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
〆切町内々々ちやうない/\自身番屋じしんばんやにはとびの者共火事裝束しやうぞくにてつめ家主抔いへぬしなどかはり/″\相詰たり數寄屋橋御見附みつけ這入はいれば常よりも人數夥多おびたゞしく天一坊の供のこら繰込くりこむを待て御門を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
その夥多おびたゞしい石塔せきたふを、ひとひとつうなづくいしごとしたがへて、のほり、のほりと、巨佛おほぼとけ濡佛ぬれぼとけ錫杖しやくぢやうかたをもたせ、はちすかさにうつき、圓光ゑんくわうあふいで、尾花をばななかに、鷄頭けいとううへ
深川浅景 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ひとへにしろい。ちゝくびの桃色もゝいろをさへ、おほひかくした美女びぢよにくらべられたものらしい。……しろはなの、つてころの、その毛蟲けむし夥多おびたゞしさとつては、それはまたない。
春着 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
天下てんか御評定ごひやうぢやう日にて諸國より訴訟人夥多おびたゞしく出張なし居けるに程なく榊原さかきばら遠江守領分越後國頸城郡寶田村百姓傳吉一けん這入はひりませいと呼び込むこゑもろともに訴訟人憑司おはや相手方あひてかた傳吉其の外引合共白洲へ出るに傳吉は
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
立派りつぱもん不思議ふしぎはないが、くゞりあふつたまゝ、とびら夥多おびたゞしくけてる。
城崎を憶ふ (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
もののいろもすべてせて、その灰色はひいろねずみをさした濕地しつちも、くさも、も、一部落ぶらく蔽包おほひつゝむだ夥多おびたゞしい材木ざいもくも、材木ざいもくなか溜池ためいけみづいろも、一切いつさい喪服もふくけたやうで、果敢はかなくあはれである。
三尺角 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)