きやう)” の例文
たゞさへ神仙しんせん遊樂ゆうらくきやうこと私共わたくしどもは、極端きよくたんなる苦境くきやうから、この極端きよくたんなる樂境らくきやう上陸じやうりくしたこととて、はじめはみづかゆめでないかとうたがはるゝばかり。
せるにあらぬかといふ、夢幻むげんきやうにさまよひ、茫然ばうぜんとしてうごかずにうしろから、突然とつぜん、一黒影くろかげ出現しゆつげんした。
一度ひとたび愛すれば正に進んでかくの如くならざる可からず。三昧のきやうに入るといふもの即ちこれなり。われ省みてわが疎懶そらんの性遂にこゝに至ること能はざるを愧づ。
来青花 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
それで彼様あんな風に為つたのだと言ふけれど、単に愛情の過度といふのみで、それで人間が、おのれの故郷の家屋を焼くといふ程の烈しい暗黒のきやうに陥るであらうか。
重右衛門の最後 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
このきやう、都をへだつること遠からず、むかし行きたる時には幾度いくたびわらぢの紐をゆひほどきしけるが、今は汽笛一声新宿を発して、名にしおふ玉川のきぬたの音も耳には入らで
三日幻境 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
願くば一生後生こうせいを云はず、紛々ふんぷんたる文壇の張三李四ちやうさんりしと、トルストイを談じ、西鶴さいかくを論じ、或は又甲主義乙傾向の是非曲直を喋々てふてふして、遊戯三昧ざんまいきやうに安んぜんかな。(五月二十六日)
寝られぬまゝには更けぬ。時計一点を聞きてのちやうやく少しく眠気ねむけざし、精神朦々もう/\として我我われわれべんぜず、所謂いはゆる無現むげんきやうにあり。ときに予がねたるしつふすまの、スツとばかりに開く音せり。
妖怪年代記 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
石沙無人せきさむにんきやうの、いへとなり、みづとなり、となり、むらとなつた、いま不思議ふしぎきやうにのぞみながら、古間木こまきよりしてわづかに五、あとなほ十をひかへた——前途ゆくて天候てんこうのみ憂慮きづかはれて、同伴つれ
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
錦を故郷に飾つたためしはいくらも眼の前にころがつて居るから、志を故郷に得ぬものや、貧窶ひんるきやう沈淪ちんりんしてうにもうにもならぬ者や、自暴自棄に陥つた者や、乃至ないしは青雲の志の烈しいものなどは
重右衛門の最後 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
此塲このば光景くわうけいのあまりに天然てんねん奇體きたいなので、わたくし暫時しばし此處こゝ人間にんげんきやうか、それとも、世界せかいぐわいある塲所ばしよではあるまいかとうたがつたほどで、さらこゝろ落付おちつけてると、すべての構造こうざうまつた小造船所せうざうせんじよのやうで