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ばすえ
ふりがな文庫
“
場末
(
ばすえ
)” の例文
それはこの
場末
(
ばすえ
)
の町にある一軒のカフェの女だった。カフェの女とは云いながら、カフェとは似合わぬ姫君のように
臈
(
ろう
)
たけた少女だった。
ゴールデン・バット事件
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
コートは着ていないので、一目に見分けられる着物や羽織。化粧の様子はどうやら
場末
(
ばすえ
)
のカフェーにいる女給らしくも思われた。
元八まん
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
葬列はもう寺に近い
場末
(
ばすえ
)
の町にはいっている。保吉は中尉と話しながら、葬式を見に出た人々にも目をやることを忘れなかった。
文章
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
彼は
毎
(
つね
)
に武蔵野の住民と称して居る。然し実を云えば、彼が住むあたりは、武蔵野も
場末
(
ばすえ
)
で、景が小さく、
豪宕
(
ごうとう
)
な気象に乏しい。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
犬の寝場所は、もとのところは、家でもたちつまっておいたてられたと見えて、
先
(
せん
)
とはちがった
場末
(
ばすえ
)
の、きたない
空地
(
あきち
)
にうつっていました。
やどなし犬
(新字新仮名)
/
鈴木三重吉
(著)
▼ もっと見る
永遠の誓いと云うのがある、みんな観に行きたいと思いながら、その広告が
場末
(
ばすえ
)
の
小舎
(
こや
)
にかかるまで行けないでしまうことがたびたびなのだ。
生活
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
だが、うぶな私達は、非常な勇気を出して、ある
場末
(
ばすえ
)
のホテルへ這入って行くまでには、殆ど半年もかかった程であった。
孤島の鬼
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
場末
(
ばすえ
)
の
町
(
まち
)
に
住
(
す
)
んでいるのだけれど、
用事
(
ようじ
)
があって、こちらの
知
(
し
)
った
人
(
ひと
)
のところへやってきますと、その
人
(
ひと
)
の
家
(
うち
)
で、
展覧会
(
てんらんかい
)
のある
話
(
はなし
)
を
聞
(
き
)
きました。
公園の花と毒蛾
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
ところどころのショーウィンドーには、一概に
場末
(
ばすえ
)
ものとして馬鹿にできないような品が
綺麗
(
きれい
)
に飾り立てられていた。
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
*3 センナヤ ロシアの大抵の市にある特殊な
一角
(
いっかく
)
。本来は乾草市場であるが、多くは
場末
(
ばすえ
)
の盛り場になっている。
死せる魂:01 または チチコフの遍歴 第一部 第一分冊
(新字新仮名)
/
ニコライ・ゴーゴリ
(著)
そこで宿の主人はその出入りの古着商をたずねて行きますと、その人は、あの布団は、町の
場末
(
ばすえ
)
にあるひどく
貧乏
(
びんぼう
)
な商人から買ったのだと言うのでした。
神様の布団
(新字新仮名)
/
下村千秋
(著)
友人といっても、
場末
(
ばすえ
)
の飲み屋で知り合った男なので、そいつは大学生ではない。彼の職業は映画のエキストラで、毎日バスに乗って撮影所に出掛けて行く。
軍国歌謡集
(新字新仮名)
/
山川方夫
(著)
そのうえ山の手の
場末
(
ばすえ
)
の町であるから十時を打って間もないのに、両側の人家はもう寝てしまってひっそりとしているので、非常に
路
(
みち
)
が遠いように思われてくる。
蟇の血
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
富豪の客間へでも
場末
(
ばすえ
)
の長屋の台所へでもね。そして何もかもピュトワのしわざにされてしまうんだ。君のいま言った正義党のお
伽噺
(
とぎばなし
)
とよく似とるよ、ははは——
鉄の規律
(新字新仮名)
/
平林初之輔
(著)
都も
場末
(
ばすえ
)
の今出川の荒れやしきに、十年の余も、雨もりのつくろい一つせず、庭草も刈らず、住み古して、家の中では、父と母とが、のべつ夫婦
喧嘩
(
げんか
)
ばかりやっていた。
新・平家物語:02 ちげぐさの巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
テーブルの
脚
(
あし
)
が妙にガタつき
縁
(
ふち
)
のかけたちぐはぐの皿に
曲
(
まが
)
ったフォークで一食五フラン(約四十銭)ぐらいの安料理を食べさせる
場末
(
ばすえ
)
のレストラントまで数えたてたら
異国食餌抄
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
そこで、母と小林とはこっそり相談をしたのであろう、ある夜私達は家財道具のありったけをてんでに背負って
夜逃
(
よに
)
げをした。落ちついたさきは、ずっと
場末
(
ばすえ
)
の
木賃宿
(
きちんやど
)
だった。
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
小児
(
こども
)
は
切
(
せめ
)
て仏の
袖
(
そで
)
に
縋
(
すが
)
ろうと思ったでしょう。
小立野
(
こだつの
)
と言うは
場末
(
ばすえ
)
です。先ず小さな山くらいはある高台、草の茂った
空地沢山
(
あきちだくさん
)
な、人通りのない
処
(
ところ
)
を、その
薬師堂
(
やくしどう
)
へ参ったですが。
薬草取
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
中くらいの場所は
表側
(
おもてがわ
)
だけ瓦葺きで、いわゆる
半瓦
(
はんかわら
)
の家はめずらしくなく、まして
場末
(
ばすえ
)
には瓦一枚もつかわぬ家ばかりであったが、わずか四、五年をへだてて二度目に
下
(
くだ
)
って見ると
母の手毬歌
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
ビエーヴル川と言えば、たいてい人がセン・マルセルの
場末
(
ばすえ
)
で、工場地になっているというので、頭からきたない所と決めてしまうのであるが、ヴェリエールやリュンジには
自然
(
しぜん
)
のおもむきがあった。
家なき子:02 (下)
(新字新仮名)
/
エクトール・アンリ・マロ
(著)
女将は
場末
(
ばすえ
)
のバーの女給になった。その頃再会した。
幻化
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
達雄は
場末
(
ばすえ
)
のカフェのテエブルに妙子の手紙の封を切るのです。窓の外の空は雨になっている。達雄は放心したようにじっと手紙を見つめている。
或恋愛小説
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
二十分も走ったころ、自動車は、
場末
(
ばすえ
)
の、みすぼらしい町にとまりました。店屋がならんでいるのですが、夜ふけなので、おおかた戸をしめています。
怪奇四十面相
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
芝白金から
目黒行人坂
(
めぐろぎょうにんざか
)
に至る街路の如きは、以前からいやに
駄々広
(
だだっぴろ
)
いばかりで、何一ツ人の目を
惹
(
ひ
)
くに足るべきものもなく全く
場末
(
ばすえ
)
の汚い往来に過ぎない。
日和下駄:一名 東京散策記
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
今日
(
こんにち
)
の東京市、ことに
場末
(
ばすえ
)
の東京市には、至る所に
此種
(
このしゆ
)
の
家
(
いへ
)
が散点してゐる、のみならず、
梅雨
(
つゆ
)
に
入
(
い
)
つた
蚤
(
のみ
)
の如く、日毎に、格外の増加律を以て殖えつゝある。
それから
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
古い士族町、新しい商業町、
場末
(
ばすえ
)
のボロ町を通って、
岩木川
(
いわきがわ
)
を渡り、城北三里
板柳
(
いたやぎ
)
村の方へ向うた。まだ雪を見ぬ岩木山は、十月の朝日に桔梗の花の色をして居る。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
いい
月夜
(
つきよ
)
でありました。
二人
(
ふたり
)
は
長
(
なが
)
い
長
(
なが
)
い
町
(
まち
)
を
歩
(
ある
)
いてゆきました。だんだんゆくにつれて
場末
(
ばすえ
)
になるとみえて、
町
(
まち
)
の
中
(
なか
)
はさびしく、
人通
(
ひとどお
)
りも
少
(
すく
)
なく、
暗
(
くら
)
くなってきました。
海ほおずき
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
この室備付けの
卓子
(
テーブル
)
と長椅子を平衡圏で放り出してしまったものだから、今はまるで
場末
(
ばすえ
)
のバアのように、どこからか集めてきた不揃いの椅子を前のように壁を背にして並べ
宇宙尖兵
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
パパには
鋸楽師
(
のこがくし
)
のおいぼれを連れて行くことを云い出した。おいぼれとただ呼ばれる老人は
鋸
(
のこぎり
)
を曲げながら
弾
(
ひ
)
いていろいろなメロディを出す一つの芸を
渡世
(
とせい
)
として
場末
(
ばすえ
)
のキャフェを
廻
(
まわ
)
っていた。
売春婦リゼット
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
「そうですか、なにしろ、
場末
(
ばすえ
)
の方は、早く寝るものですから」
蟇の血
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
車は
場末
(
ばすえ
)
へ場末へと道を取って、いつの間にか人家もまばらな
田舎道
(
いなかみち
)
へはいっていたが、やがて四、五十分も走ったと思う頃、やっと前の車が停車した。
人間豹
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
僕は
早速
(
さっそく
)
彼と一しょに
亀井戸
(
かめいど
)
に近い
場末
(
ばすえ
)
の町へ行った。彼の妹の縁づいた先は
存外
(
ぞんがい
)
見つけるのに
暇
(
ひま
)
どらなかった。それは
床屋
(
とこや
)
の裏になった
棟割
(
むねわ
)
り
長屋
(
ながや
)
の一軒だった。
彼
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
ある
場末
(
ばすえ
)
の地面が、新たに電車の布設される
通
(
とお
)
り
路
(
みち
)
に当るとかでその前側を幾坪か買い上げられると聞いたとき、自分は母に「じゃその金でこの夏みんなを
連
(
つれ
)
て旅行なさい」
行人
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
「今は東京の
場末
(
ばすえ
)
に、小さな小間物屋を出して居ます」
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
「ナニ、東京は東京だがね。少し
場末
(
ばすえ
)
なんだ。
本所
(
ほんじょ
)
の
宝来館
(
ほうらいかん
)
という活動小屋なんだ」益々意外な返事である。
猟奇の果
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
が、わたしの見る夢は画家と云う職業も手伝うのか、
大抵
(
たいてい
)
色彩のないことはなかった。わたしはある友だちと一しょにある
場末
(
ばすえ
)
のカッフェらしい
硝子戸
(
ガラスど
)
の
中
(
なか
)
へはいって行った。
夢
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
みすぼらしい
場末
(
ばすえ
)
の古本屋で、別段眺める程の景色でもないのだが、私には
一寸
(
ちょっと
)
特別の興味があった。
D坂の殺人事件
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
場末
(
ばすえ
)
の貧弱な下駄屋の二階の、ただ一間しかない六畳に、一閑張りの破れ机を二つ並べて、松村武とこの私とが、変な空想ばかり
逞
(
たくま
)
しゅうして、ゴロゴロしていた頃のお話である。
二銭銅貨
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
彼は芝居のことも世間並には心得ていたが、木下芙蓉と云えば、以前は影の薄い
場末
(
ばすえ
)
の女優でしかなかったのが、最近ある人気俳優の新劇の一座に加わってから、グッと売出して
虫
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
いつも歩き廻る
場末
(
ばすえ
)
の町を歩いていた時、それは省線の
鶯谷
(
うぐいすだに
)
に近い
処
(
ところ
)
であったが、とある空地に、テント張りの曲馬団がかかっていて、古風な楽隊や、グロテスクな絵看板が好ましく
孤島の鬼
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
私の家は
場末
(
ばすえ
)
にあったので、近くの広っぱへと散歩に出掛けたことであった。
毒草
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
場
常用漢字
小2
部首:⼟
12画
末
常用漢字
小4
部首:⽊
5画
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場末生活