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四阿
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あずまや
ふりがな文庫
“
四阿
(
あずまや
)” の例文
建物から、二十間も離れている
四阿
(
あずまや
)
で、小さい
灌木
(
かんぼく
)
を避けながら歩いた。彼は、倭文子が来るまでは、三十分は待たなければならない。
第二の接吻
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
その中の二本の木蔭には、青い木の柱に平べったい緑いろの
円屋根
(
まるやね
)
をつけた
四阿
(
あずまや
)
が見え、それには『
静思庵
(
せいしあん
)
』と銘がうってある。
死せる魂:01 または チチコフの遍歴 第一部 第一分冊
(新字新仮名)
/
ニコライ・ゴーゴリ
(著)
この辺のことは
諄
(
くど
)
く述べる必要はあるまい。池の畔の
四阿
(
あずまや
)
の前に確かに皇帝が立っていたという、例の間違いの続きなのである。
魔都
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
仕方がないから葡萄の葉が陽を
遮
(
さえぎ
)
っている
四阿
(
あずまや
)
の中で時間潰し
旁々
(
かたがた
)
、心残りのないように遺言状を一通
認
(
したた
)
めておくことにしたのであった。
陰獣トリステサ
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
もしも兄がそこにいなかったとしたら、フォマにも家主のお婆さんにも言わずに、じっと隠れたまま、晩までも
四阿
(
あずまや
)
で待っていることだ。
カラマゾフの兄弟:01 上
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
▼ もっと見る
私
(
わたし
)
のためには旧藩主に当る元伯爵
海原光栄
(
うなばらみつえ
)
氏は、尊大が通りものの顔を柔げて、広大な庭園の奥の、
洒落
(
しゃれ
)
た
四阿
(
あずまや
)
の中に私を導き入れました。
死の予告
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
四阿
(
あずまや
)
山は信州の称呼で、上州では
吾妻
(
あがつま
)
山と唱えている。頂上に日本武尊を祭神とした社があるが、これも上州と信州との二社に分れている。
上州の古図と山名
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
三方見晴しの処(ここに
四阿
(
あずまや
)
が立って、椅子の類、木の株などが三つばかり備えてある。)
其処
(
そこ
)
へ出ると、真先に案内するのが弁慶堂である。
七宝の柱
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
まるで私たちの
家
(
うち
)
の庭にある、
四阿
(
あずまや
)
の中に住んでいるような訳ですから、膚を突きさすかと思われるような風がぴゅうぴゅうと吹き通すのです。
蕗の下の神様
(新字新仮名)
/
宇野浩二
(著)
寝所をでた家康は、そう問いながら、本丸の
四阿
(
あずまや
)
へ足をむけていた。すると、
闇
(
やみ
)
のなかから、ばたばたとそこへかけよってきた黒い人影がある。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
見晴し台は温泉客のために山の中腹を切り開いた百坪ほどの狭い平地で、中央にささやかな
四阿
(
あずまや
)
が建っている。
偉大なる夢
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
楓
(
かえで
)
桜松竹などおもしろく植え散らし、ここに
石燈籠
(
いしどうろう
)
あれば、かしこに
稲荷
(
いなり
)
の
祠
(
ほこら
)
あり、またその奥に思いがけなき
四阿
(
あずまや
)
あるなど、この門内にこの庭はと驚かるるも
小説 不如帰
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
翌日ピサロが訪ねて行くと、匂の高い花で飾った緑の枝の
四阿
(
あずまや
)
が出来ていて、その中にペルー料理がどっさり並んで居り、名も知らぬ果物や野菜もうまそうに盛ってあった。
鎖国:日本の悲劇
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
木村は跡へ引き返して
四阿
(
あずまや
)
の中に這入つた。木の卓と腰掛とがある。竹の皮やマツチの
明箱
(
あきばこ
)
が散らばつてゐる。卓の上にノオトと参考書とを開いて、熱心に読んでゐる書生がゐる。
田楽豆腐
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
四阿
(
あずまや
)
山は、上信国境の峻峰であるけれど、遠く榛名の西の肩に隠れて姿を出さない。
わが童心
(新字新仮名)
/
佐藤垢石
(著)
そうだ、かっきり一時半に、お前は、夫人連を三四人つれて
四阿
(
あずまや
)
のそばへ来ていてくれ。そうするとうしろの物陰からわしが出てきて、ピストルをつきつけて、手をあげろというからな。
探偵戯曲 仮面の男
(新字新仮名)
/
平林初之輔
(著)
お絹は、二見ヶ浦の海岸の
清涯亭
(
せいがいてい
)
という宿の離れにつづいた
四阿
(
あずまや
)
の中で、長いこと人を待っているのでありました。やがて、編笠を
被
(
かぶ
)
って海岸伝いにやって来る一人の
武士
(
さむらい
)
がありました。
大菩薩峠:06 間の山の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
四阿
(
あずまや
)
デ休ンダ時、予ハ袂カラ小サクタヽンダ札束ヲ取リ出シテ手ニ握ラセル。
瘋癲老人日記
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
門をはいると左手に瓦葺の
一棟
(
ひとむね
)
があって其縁先に陶器絵葉書のたぐいが並べてある。家の前方平坦なる園の中央は、枯れた梅樹の伐除かれた後朽廃した
四阿
(
あずまや
)
の残っている外には何物もない。
百花園
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
というのはその小道が、ちょうどその場所で人が乗り越えたらしい
足跡
(
あしあと
)
の残っている垣根の下を、
蛇
(
へび
)
のように
這
(
は
)
い
抜
(
ぬ
)
けて、アカシアばかりでできている円い
四阿
(
あずまや
)
へ、通じていたからである。
はつ恋
(新字新仮名)
/
イワン・ツルゲーネフ
(著)
その下を舟が行くことのできる
四阿
(
あずまや
)
の観があるものがあった。
森の生活――ウォールデン――:02 森の生活――ウォールデン――
(新字新仮名)
/
ヘンリー・デイビッド・ソロー
(著)
四阿
(
あずまや
)
を覆へ。
ファウスト
(新字新仮名)
/
ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ
(著)
彼は、そう思って躍り上る胸を押えながら、
四阿
(
あずまや
)
を離れ、すぐ
傍
(
かたわら
)
の大樹の陰に身をひそめて、その女性の近づくのを待っていた。
第二の接吻
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
「僕は横町から編垣を越えて、いきなり
四阿
(
あずまや
)
の方へ行ったんだ。どうぞだから、そのことで僕をとがめないでくださいね」
カラマゾフの兄弟:01 上
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
この時、
四阿
(
あずまや
)
の前のローンへ、書生とラケットを持って飛出したのは海原伯爵の姪で、瑛子という美しい女性でした。
死の予告
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
野原に遊んでいる
小児
(
こども
)
などが怪しい姿を見て、騒いで悪いというお心付きから、
四阿
(
あずまや
)
へお呼び入れになりました。
紅玉
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
ヴァンクゥヴァの自分の家の庭に日本ふうの
四阿
(
あずまや
)
をつくり、家じゅうを日本に関する書籍と
骨董
(
こっとう
)
でいっぱいにして、たいていは日本の着物を着て暮らしている。
キャラコさん:05 鴎
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
動くともなく
屯
(
たむろ
)
している幾重の乱雲に包まれて、
唯
(
た
)
だ
四阿
(
あずまや
)
山であったろう、長い頂上を
顛覆
(
てんぷく
)
した大船のように雲の波の上にちらと見せたが、すぐ
復
(
ま
)
た沈んでしまった。
黒部川奥の山旅
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
しきりに波立つ胸の不平を葉巻の
煙
(
けぶり
)
に吐きもて、武男は
崖道
(
がけみち
)
を上り、
明竹
(
みんちく
)
の
小藪
(
こやぶ
)
を回り、
常春藤
(
ふゆつた
)
の陰に立つ
四阿
(
あずまや
)
を見て、しばし腰をおろせる時、横手のわき道に
駒下駄
(
こまげた
)
の音して
小説 不如帰
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
そこはすっかり暗い
陰影
(
かげ
)
にとざされていて、暗がりの奥に僅かに
仄
(
ほの
)
見えるのは、真直ぐに走っている細い小径や、壊れた欄干や、倒れかかった
四阿
(
あずまや
)
や、老い朽ちて洞ろになった柳の幹や
死せる魂:01 または チチコフの遍歴 第一部 第一分冊
(新字新仮名)
/
ニコライ・ゴーゴリ
(著)
動物園の入口から、右手の方へ進んでゆくと、
鸚鵡
(
おうむ
)
や小鳥の檻があって、その先に「閑々亭」という額をかけた、茶室めいた
四阿
(
あずまや
)
が一軒たっている。この
小家
(
こや
)
の由緒来歴は私は何も知らぬ。
動物園の一夜
(新字新仮名)
/
平林初之輔
(著)
十八日朝経助ガ学校ニ、浄吉ガ会社ニ出テ行ッタ後、庭ヲ散歩シテ
四阿
(
あずまや
)
ニ休ム。四阿マデ三十メートル餘デアルガ、コノトコロ日々脚ノ運動ガ不自由サヲ加エ、今日ハ昨日ヨリモ一層歩キニクイ。
瘋癲老人日記
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
邸そのものが
亦
(
また
)
仲々広大なもので、明治の中頃に建てられた
煉瓦
(
れんが
)
造りの西洋館、御殿造りの日本建て、
数寄
(
すき
)
を凝らした庭園、自然の
築山
(
つきやま
)
あり、池あり、
四阿
(
あずまや
)
あり、まるで森林の様な大邸宅である。
魔術師
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
四阿
(
あずまや
)
ファウスト
(新字新仮名)
/
ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ
(著)
四阿
(
あずまや
)
に近づいてみると、倭文子はしょんぼりと縁に腰をかけていた。村川は、その後姿を見ると、いとしさで胸が張りさけるようだった。
第二の接吻
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
つまり向うの
四阿
(
あずまや
)
のところに立って、おまけに顏をすっかり垣根のほうへ向けているように申し渡されたのである。
永遠の夫
(旧字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
野原に遊んで居る
小児
(
こども
)
などが怪しい姿を見て、騒いで悪いと云ふお
心付
(
こころづ
)
きから、
四阿
(
あずまや
)
へお呼び入れに成りました。
紅玉
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
沼をかこむ丘の斜面のところどころに
四阿
(
あずまや
)
や茶室が樹々のあいだに見え隠れし、沼の西側は広々としたお花畑で、色とりどりの秋草が目もあやに咲き乱れている。
顎十郎捕物帳:01 捨公方
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
是
(
これ
)
だけでも壮観である上に、東から北へかけて八ヶ岳蓼科の連山、妙義、
破風
(
はふ
)
(荒船山)、浅間連峰、
四阿
(
あずまや
)
、白根火山群からして、遠く奥上州の群山が
一眸
(
いちぼう
)
の裡に集る。
美ヶ原
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
原生林を
象
(
かた
)
どった深い木立が、
四阿
(
あずまや
)
の三方から迫って、一方はローンの緩いカーブに開けて居りますが、林も藪も非常に厚く、人間の忍び寄る隙間などはとてもありません。
死の予告
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
青木邸の庭園——中央に
四阿
(
あずまや
)
があり、その手前にベンチが二つある。
周囲
(
あたり
)
は樹立。右手から主人健作と夫人久子とが話しながらはいってくる。健作はモーニング、夫人はきらびやかな洋装。
探偵戯曲 仮面の男
(新字新仮名)
/
平林初之輔
(著)
四阿
(
あずまや
)
デ直グソノ話ニナッタ。
瘋癲老人日記
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
いやにコセ/\していて、人工的な小刀細工が多すぎるじゃありませんか。
殊
(
こと
)
に、あの
四阿
(
あずまや
)
の建て方なんか厭ですね。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
椅子
(
いす
)
を差置かれた池の
汀
(
みぎわ
)
の
四阿
(
あずまや
)
は、
瑪瑙
(
めのう
)
の柱、水晶の
廂
(
ひさし
)
であろう、ひたと席に着く、
四辺
(
あたり
)
は昼よりも
明
(
あかる
)
かった。
伊勢之巻
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
四阿
(
あずまや
)
のまん中には木製の緑色のテーブルが地面へ掘っ立てになっていて、そのぐるりを、同じく緑色の
床几
(
しょうぎ
)
が取り囲んでいたが、それにはまだ腰かけることができた。
カラマゾフの兄弟:01 上
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
「あれは、
四阿
(
あずまや
)
にいるはずです。さっき、ひとりにしておいてくれなどと、言っていましたから」
あなたも私も
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
浅間の北には長大な
四阿
(
あずまや
)
山が大魚の背を浮べたように横たわる。
碓氷
(
うすい
)
峠から北に続く連脈は、一之字山、網張山、
鼻曲
(
はなまがり
)
山、八栗山の剣ヶ峰、角落山となって四阿山脈の下に紛糾している。
望岳都東京
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
先程ちょうど私が面をつけて、
玩具
(
おもちゃ
)
のピストルをもって
四阿
(
あずまや
)
の方へゆこうとするところで、
貴方
(
あなた
)
がたにでくわしてしまったので、ついあんなことになったのです。このピストルを見て下さい。
探偵戯曲 仮面の男
(新字新仮名)
/
平林初之輔
(著)
ここに別に滝の
四阿
(
あずまや
)
と称うるのがあって、八ツ橋を掛け、飛石を置いて、
枝折戸
(
しおりど
)
を
鎖
(
とざ
)
さぬのである。
伯爵の釵
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
忠直卿は萩の中の小道を伝い、泉水の縁を回って小高い丘に在る
四阿
(
あずまや
)
へと入った。そこからは信越の山々が、微かな月の光を含んでいる空気の中に、
朧
(
おぼろ
)
に浮いて見える。
忠直卿行状記
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
“四阿”の解説
四阿(あずまや、しあ)、東屋(あずまや)とは庭園などに眺望、休憩などの目的で設置される簡素な建屋。「四阿」の「阿」は軒の意味で、四方に軒を下ろした寄棟、宝形造などの屋根を持つ建造物を意味する。唐風に「亭」(ちん)とも呼ばれる。和語の「あずまや」は東国風の鄙俗な建屋を意味する。
(出典:Wikipedia)
四
常用漢字
小1
部首:⼞
5画
阿
漢検準1級
部首:⾩
8画
“四阿”で始まる語句
四阿屋
四阿亭
四阿山