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吝
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おし
ふりがな文庫
“
吝
(
おし
)” の例文
その頃の西洋地理書から訳出したものらしいが、欧州の博識連へ聞き合したるも今に所拠が知れぬ。御存知の方は教示を
吝
(
おし
)
むなかれ。
十二支考:09 犬に関する伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
「ふゝん! それでも少しは変な気がする筈だ。……変な気がするだろう!」負け
吝
(
おし
)
みを言うな、譃だろう、というように冷笑する。
別れたる妻に送る手紙
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
一方は赤裸々の心事を、赤裸々に発表すれども、他方は
苟
(
いやし
)
くも人に許さず、甚だ一笑
一顰
(
いっぴん
)
を
吝
(
おし
)
み、礼儀三千
威儀
(
いぎ
)
の中に、高く標置す。
吉田松陰
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
尚お一言附け加えて置きますが、もし諸君が不明の病症で
殪
(
たお
)
れた場合は御遺族の方から御一報次第参上、執刀の労を
吝
(
おし
)
まない積りであります
母校復興
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
吝
(
おし
)
んでいるのですから、姉妹二人とも薄暗い石油
洋燈
(
ランプ
)
の光で、それも、少しでもながくともせば、こいつが大騒ぎなんです。
聖アレキセイ寺院の惨劇
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
▼ もっと見る
これらはいずれもが、漫然出来得ると軽率にも誤認し、それを
空
(
むな
)
しく求めているだけだと、私の常識と経験はいつでも断言を
吝
(
おし
)
まないのである。
素人製陶本窯を築くべからず:――製陶上についてかつて前山久吉さんを激怒せしめた私のあやまち――
(新字新仮名)
/
北大路魯山人
(著)
私はたとい、親鸞が信心決定の後、業に催されて殺人を犯そうとも、パウロが百人の女を犯そうとも、その聖者としての冠を
吝
(
おし
)
もうとは思わない。
愛と認識との出発
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
嫁に食べさせる物を
吝
(
おし
)
んで
蓄
(
た
)
めた金を寄附して、早晩滅亡する運命を持っている両本願寺のような迷信の府を愚かにも支持しようとするに過ぎない。
姑と嫁について
(新字新仮名)
/
与謝野晶子
(著)
どういう人と限ることは出来ませんが、遊びと云えば元々
奢
(
おご
)
りですから、金を
吝
(
おし
)
むなら奢らぬがいゝのですが、とかくこのごろは安く遊ぶことばかりを心掛け
油地獄
(新字新仮名)
/
斎藤緑雨
(著)
この年七月二十日に
山崎美成
(
やまざきよししげ
)
が歿した。抽斎は美成と甚だ親しかったのではあるまい。しかし
二家
(
にか
)
書庫の蔵する所は、
互
(
たがい
)
に
出
(
い
)
だし借すことを
吝
(
おし
)
まなかったらしい。
渋江抽斎
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
なかなか浮み上る程には参らぬが、デモ感心には
多
(
おおく
)
も無い資本を
吝
(
おし
)
まずして一子文三に学問を仕込む。
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
狐に
憑
(
つ
)
かれておわすなぞと
罵
(
ののし
)
ることもある程だが、平日は穏便なることが好きな、物分りの宜い人であるから、氏郷贔負では有るが政宗にも同情を
吝
(
おし
)
む人では無い。
蒲生氏郷
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
切に
冀
(
こいねがわ
)
くは世の
閎覧
(
こうらん
)
博物の君子、指教を
吝
(
おし
)
まず我儕の足らざるを補ひ、以て世に益するあらば幸甚。
『東洋自由新聞』第一号社説
(新字旧仮名)
/
中江兆民
(著)
少し絶頂を下った普賢の
祠
(
ほこら
)
の大岩壁にも、この石楠花は一面に咲いていて、これも霧のまがいに隠見する風情は、下界のものにのぞかれるのを
吝
(
おし
)
むかのように見えた。
雲仙岳
(新字新仮名)
/
菊池幽芳
(著)
わが
怯
(
おそれ
)
は已みて、我聲は朗になりぬ。一座は喝采を
吝
(
おし
)
まず、かの猶太おうなさへやさしげに頷きぬ。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
「さまよえる猶太人」に関して、自分の疑問に対する答を、東西の
古文書
(
こもんじょ
)
の中に発見した人があれば、自分は
切
(
せつ
)
に、その人が自分のために高教を
吝
(
おし
)
まない事を希望する。
さまよえる猶太人
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
自分がかの特別号を発表する前に、もしこれを精読するの労を
吝
(
おし
)
まなかったならば、今少し疵の少い研究ができたのであったろうにと、残り惜しく思わずにはいられない。
俗法師考
(新字新仮名)
/
喜田貞吉
(著)
同じく喜捨のお鳥目を
吝
(
おし
)
まず、
搗
(
かて
)
て加えては真宗の人も、浄土の人も、真言、天台、禅、曹洞、諸宗の信徒悉く合掌礼拝、一応の崇敬をば
忽
(
ゆるが
)
せにせず、帰りには名物の煎餅
残されたる江戸
(新字新仮名)
/
柴田流星
(著)
これをたとうれば、立派なストーブを据え付けながら、炭を
吝
(
おし
)
んで
行火火
(
あんかび
)
ほどのものを入れ、おおぜいの人がこれを囲んで、冬の日寒さに震えつつあるがごときものである。
貧乏物語
(新字新仮名)
/
河上肇
(著)
会員が案外よく会の本質を理解して積極的な活動を
吝
(
おし
)
まないことと、絶えず熱心な入会者のあることとは、前途になお幾多いよいよ大なる困難の横たうものあるを予想しながらも
三田社会科学研究会報告
(新字新仮名)
/
野呂栄太郎
(著)
若しその附け届けを
吝
(
おし
)
めば受持ち客の通し物をしても仲々拵えないで困らせる始末、併し心附けで済む間はまだ我慢のしようもあるが遂に彼等は最後のものまで要求するのである。
女給
(新字新仮名)
/
細井和喜蔵
(著)
味方のためには眼も耳も
吝
(
おし
)
んで、問わず、聞かず、敵のためには粉骨砕身をして、夜の目も合わさない、
呼吸
(
いき
)
もつかないで働いた、それが事実であるか! いや、感心だ、恐れ入った。
海城発電
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
書籍ハ植物記載〔所載ノ意ナリ〕ノ書ニシテ
仮令
(
たと
)
ヒ鶏肋ノ観ヲ為スモノト雖ドモ悉ク之ヲ渉猟閲読スルヲ要ス故ニ植学ヲ以テ鳴ラント欲スルモノハ財ヲ
吝
(
おし
)
ム者ノ能ク為ス所ニアラザルナリ
牧野富太郎自叙伝:02 第二部 混混録
(新字新仮名)
/
牧野富太郎
(著)
肉食に慣れて腥臭を意とせぬわれわれは、平生はさほどに感じないけれども、時に純粋なる精進料理——未だかつて腥物を知らぬ鍋で煮た精進料理を味ったら、やはり讃歎の声を
吝
(
おし
)
まぬかも知れない。
古句を観る
(新字新仮名)
/
柴田宵曲
(著)
今でも
吝
(
おし
)
みながら使い
耗
(
へ
)
らしているかも知れぬ。6585
ファウスト
(新字新仮名)
/
ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ
(著)
英国ではこの尊者の忌日、七月二十五日に
牡蠣
(
かき
)
を食えば年中金乏しからずとて、価を
吝
(
おし
)
まずこの日売り初めの牡蠣を食い、牡蠣料理店大いに忙し。
十二支考:08 鶏に関する伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
「一番仕舞いへ来て
何
(
ど
)
うだい? 親猿は子猿の死骸に
縋
(
すが
)
りつき、よゝとばかり声を
吝
(
おし
)
まず泣きたる様、畜類ながら子を思う親の心に変りなしとて
云々
(
うんぬん
)
」
負けない男
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
憚
(
はばか
)
りながら私は、日本の古九谷芸術を、より以上芸術的生命あるものとして、推賞を
吝
(
おし
)
まない一人である。
古器観道楽
(新字新仮名)
/
北大路魯山人
(著)
鬢
(
びん
)
すこし白んで、悦ばしそうに貞之進を
諦視
(
なが
)
め、一旦思込んだ修行の
遣
(
や
)
り遂げるまでは、決して費用を
吝
(
おし
)
む所存はなく、そうかと云ってお前を危ぶむではないが
油地獄
(新字新仮名)
/
斎藤緑雨
(著)
なんの必要ありてかそのもっとも大切なる権理をば
吝
(
おし
)
む気もなく人民に譲与したるか。唯一の必要あるのみ。すなわち兵備を維持する一の必要あるがゆえなりしことを。
将来の日本:04 将来の日本
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
東京に往くは
好
(
よ
)
い。学業成就して弘前に帰るなら、我らはこれを任用することを
吝
(
おし
)
まぬであろう。
渋江抽斎
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
味方のためには眼も耳も
吝
(
おし
)
むで、問はず、聞かず、敵のためには
粉骨碎身
(
ふんこつさいしん
)
をして、夜の目も合はさない、
呼吸
(
いき
)
もつかないで働いた、それが事実であるか! いや、感心だ、恐れ入つた。
海城発電
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
彼はお藤の方を振り返って、その感謝に答うべき微笑を送る事を
吝
(
おし
)
まなかった。
路上
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
アヌンチヤタが
痍負
(
てお
)
ひたるベルナルドオに
吝
(
おし
)
まざりし接吻は、今
憶
(
おも
)
ふも猶胸焦がる。サツフオオの美はアヌンチヤタに似て、その戀情の苦は我に似たり。波濤はこの可憐なる佳人を覆ひ
了
(
をは
)
んぬ。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
和尚は人に求められれば是非ないからわが
有
(
も
)
っている者を
吝
(
おし
)
みはしないが、人からは何をも求めまいというような態度で、別に
雑話
(
ぞうわ
)
を聞きたくも聞かせたくも思っておらぬ
風
(
ふう
)
で、食事が済んで後
観画談
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
それでなくとも、
鼻翼
(
こばな
)
や目窪や瞳の光りなどにも、何となく、目前の不吉を予知しているような兆が現れているので、最早寸秒さえも
吝
(
おし
)
まなくてはならぬ時期に達しているのではないかと思われた。
絶景万国博覧会
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
おおように、
吝
(
おし
)
まずに不思議を見せるのである。
ファウスト
(新字新仮名)
/
ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ
(著)
書籍ヲ
購
(
あがな
)
フ財ヲ要スルナリ器械ヲ求ムル財ヲ要スルナリ
苟
(
いやしく
)
モ此学ノ考証ニ備ヘ此学ヲシテ
益
(
ますます
)
明ナラシムル所以ノモノハ皆一トシテ財ヲ要セザルナシ財ヲ投ゼザレバ書籍器械等一切求ムル所ナシ故ニ曰ク財ヲ
吝
(
おし
)
ム者ハ植学者タルヲ得ズト
牧野富太郎自叙伝:02 第二部 混混録
(新字新仮名)
/
牧野富太郎
(著)
欧州また日本でも財を
吝
(
おし
)
む者死して蛇となり、その番をすると信ずると等しく、鼠もまた財宝を埋めた穴に
棲
(
す
)
む事あるより、時に伏蔵を守ると信ぜられたのだ。
十二支考:11 鼠に関する民俗と信念
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
と鳥居氏は兄貴に故なくして二百円差出すものが妻の羽織に五十円
吝
(
おし
)
んでいる矛盾を認めた。
或良人の惨敗
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
いやそれにしても唯一言を
吝
(
おし
)
まれることはあるまい、ただしは夜目で見えなかったか、見忘れる気遣いはないのだけれども、生憎車へ乗ろうとして後向になって居た時だから
油地獄
(新字新仮名)
/
斎藤緑雨
(著)
時間を
吝
(
おし
)
まずに案内をして歩いて、ベルリンへ行ってから
著
(
き
)
る服まで
誂
(
あつら
)
えさせてくれた。
かのように
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
私をしていわしむれば、一旦筆を持てば、この程度に書ける者である氏がなにを苦しんで、巨礼を
吝
(
おし
)
まず、ひそかに自己の代書を敢えてせしむるかを不思議とせざるを得ないのである。
高橋箒庵氏の書道観
(新字新仮名)
/
北大路魯山人
(著)
自分の血を
吝
(
おし
)
まないように、9845
ファウスト
(新字新仮名)
/
ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ
(著)
それで
吝
(
おし
)
むところなく一々相槌を打っていたから、連れ立って三越へ向うまでには二時間近くもかかった。但しこれ丈け話し込んだのに、昨日の主人公の俸給の件は一向出て来なかった。
好人物
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
緊羯羅
(
こんがら
)
童子を使うて、世間の新聞一切報告せしむる方を載せ、この童子用なき日は、一百金銭を持ち来り、持呪者に与う、しかしその銭は仏法僧のために
用
(
つか
)
い
却
(
はた
)
し、決して
吝
(
おし
)
んじゃいけないとは
十二支考:03 田原藤太竜宮入りの話
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
「……
論
(
どん
)
より証拠使用人が大将の為めに
労
(
どう
)
を
吝
(
おし
)
みません。第一人格が
立派
(
いっぱ
)
です」
ぐうたら道中記
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
貴君今十万円を
吝
(
おし
)
めば前途なし。十万円を捨つれば有らゆる可能性あり……
負けない男
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
「負け
吝
(
おし
)
みは駄目よ」
勝ち運負け運
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
吝
漢検1級
部首:⼝
7画
“吝”を含む語句
吝嗇
吝嗇漢
吝嗇家
吝嗇坊
鄙吝
吝々
物吝
卑吝
吝嗇者
慳吝
吝嗇奴
吝嗇爺
吝嗇屋
吝嗇臭
吝坊
吝垂
吝気
吝臭
吝薔
貪吝
...