取殘とりのこ)” の例文
新字:取残
我々われ/\著手ちやくしゆするのは、一ぽん老松らうしやうのある雜木山ざふきやまなかで、一寸眼ちよつとめには、古墳こふんでもるかとおもはれるが、これは四はうはたひらいて自然しぜん取殘とりのこされた一區劃くゝわくほかならぬ。
かういふ構造こうぞうおいては、おほきな地震動ぢしんどうたいして眞先まつさきいたむのは最下層さいかそうである。さら震動しんどうつよいと階下かいか部分ぶぶんつぶれ、上層じようそうおほくは直立ちよくりつ位置いちまゝ取殘とりのこされる。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
日本にほんつては大正たいしやうねん以來いらい問題もんだいまたこれ世界せかいからると、世界せかいいづれのくにいへど金解禁きんかいきんすで決行けつかうされてつてたゞ日本にほんだけが取殘とりのこされてるからして、何時いつ日本にほんきん解禁かいきんをするか
金解禁前後の経済事情 (旧字旧仮名) / 井上準之助(著)
ある朝——其頃私は甲の友達から乙の友達へといふ風に友達の下宿をてん々として暮してゐたのだが——友達が學校へ出てしまつたあとの空虚くうきよな空氣のなかにぼつねんと一人取殘とりのこされた。
檸檬 (旧字旧仮名) / 梶井基次郎(著)
それをると、あをかき自分じぶんひと取殘とりのこされたやうに、よけいにちからおとしました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
取返して下さると仰せられ誠にやさしき御奉行樣なりと一人ひとり悦び居たりけり又小僧の三吉は白洲へ一人取殘とりのこされなきしと云て皆々に笑はれたるゆゑうちへ歸るやいなみせすみちひさく成て居るゆゑ番頭久兵衞は三吉を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
れい酒癖しゆへき何處どこみせにかたふれて寢入ねいりても仕舞しまひしものかそれなればいよいよこまりしことなりうちにてもさぞあん此家こゝへもまたどくなりなにとせんとおもほどよりつもゆきいとゞ心細こゝろぼそ燭涙しよくるゐながるゝおもて二階にかい一人ひとり取殘とりのこされし新田につたのおたか
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)