加之それに)” の例文
加之それに顔立かほだちなり姿なり品の好いであツたから、よしや紫の色が洗ひざれてはげちよろけて來ても、さして貧乏びんぼんくさくならなかつた。
昔の女 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
心配する事アえ、先生。齡ア四十一だべえが、村一番の醜婦みたくなし巨女おほをなごだア、加之それにハア、酒を飮めば一升も飮むし、甚麽どんな男も手餘てやましにするくれえ惡醉語堀ごんぼうほりだで。
赤痢 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
それよりも斯うしていて自然に、心が変って行く日が来るまでは身体を動かすのが怠儀であったのだ。加之それにかねだって差当り入るだけ無いじゃないか。帰って来て
別れたる妻に送る手紙 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
加之それにまへ諸氏しよし發掘はつくつしたのは、畑中はたなかつかかたちしてところで、それはいまひらかれてかたちめぬ。
加之それに用心深ようじんぶか其神経そのしんけいは、何時いつ背負揚しよいあげて、手紙てがみさはつたわたしにほひぎつけ、或晩あるばんつまつた留守るすに、そつ背負揚しよいあげしてると、手紙てがみはもうなかにはなかつた。
背負揚 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
加之それに、承われば此頃では諸事しょじ円滑えんかつに運んで居るとやら、愚痴ぐちは最早言いますまい。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
加之それに妙にねち/\した小意地こいぢの惡い點があツて、ちつ傲慢ごうまんな點もあらうといふものだから、何時いつも空を向いて歩いてゐる學生がくせいには嫌はれる筈だ。
青い顔 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
心配しんぺいする事アえ、先生。齢ア四十一だべえが、村一番の醜婦みたくなし巨女おほをなごだア、加之それにハア、酒を飲めば一升も飲むし、甚麽どんな男も手余てやましにするくれい悪酔語堀ごんぼうほりだで。
赤痢 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
加之それに今朝のことを思い出せば、遠く離れた此処に斯うしていても、何とも言うに言えない失態ぶざまが未だに身に付き纏うているようで、唯あの土地を、思っても厭な心持がする。
別れたる妻に送る手紙 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
『まさか、一時二時まで出前がありやしまいし。加之それに此頃は夜が長いよ。』
絶望 (旧字旧仮名) / 徳田秋声(著)
他所者といふが第一、加之それに、頑固で、片意地で、お世辯一つ言はぬ性なもんだから、兎角村人に親しみが薄い。
赤痢 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
薄氣味うすぎみ惡くはある、淋しくはある、足はつかれて來る、眠くはある。加之それになかまでいて來るといふのだから、それで自分が何樣なに困りきツたかといふ事がわかる。
水郷 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
加之それに段々、予期していたことが、実際とは違って来るのに、気が付くに連れて、世の中の事物ものが、何も彼も大抵興が醒めたような心持がする。——昨夕ゆうべのお宮が丁度それだ。
別れたる妻に送る手紙 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
他所者たしよものといふが第一、加之それに頑固いつこくで、片意地で、お世辞一つ言はぬたちなもんだから、兎角村人にしたしみが薄い。
赤痢 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
加之それに擧止とりなしがおツとりしてゐたのと、割合わりあいに氣さくであツたのと、顔が綺麗だツたのとで、書生さんたちは來る度に、喰はずとも交々かはる/\幾らかづゝ菓子を購ツて遺ツた。
昔の女 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
加之それに何なのぢや、それ、國常立尊くにとこたちのみこと國狹槌尊くにさづちのみこと豐斟渟尊とよくにのみこと大苫邊尊おほとのべのみこと面足尊おもたるのみこと惺根尊かしこねのみこと伊弉諾尊いざなぎのみこと伊弉册尊いざなみのみこと、それから大日靈尊おおひるめのみこと月夜見尊つきよみのみこと、この十柱の神樣はな
赤痢 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
「ま、喰はんでも可いから……加之それに立停ツて何か購ふといふのが、の鳥渡面倒なものだからね。」
解剖室 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
加之それに何なのぢや、それ、国常立尊くにとこたちのみこと国狭槌尊くにのさづちのみこと豊斟渟尊とよくむぬのみこと大苫辺尊おほとまべのみこと面足尊おもだるのみこと惶根尊かしこねのみこと伊弉諾尊いざなぎのみこと伊弉冊尊いざなみのみこと、それから大日霊尊おほひるめのみこと月夜見尊つきよみのみこと、この十柱とはしらの神様はな
赤痢 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
加之それに顏にもたるむだ點がある、何うしても平民の娘だ。これが周三に取ツて何となく物足ものたりぬやうに思はれて、何だかあかにほひの無い花を見るやうな心地がするのであツた。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
顏のうちで一番に他の注意を惹くのは眼で、學士の眼の大きいことと謂ツたら素敵だ! 加之それに其が近眼と來てゐる。妙に飛出した眼付で、或者は「かにの眼」と謂ツてゐた。
解剖室 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
足のかたちでもこし肉付にくつきでも、またはどうならちゝなら胸なら肩なら、べて何處どこでもむツちりとして、骨格こつかくでも筋肉きんにくでも姿勢しせいでもとゝのツて發育はついくしてゐた。加之それにはだしろ滑々すべ/″\してゐる。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
加之それに空氣がじめ/\していや生温なまぬるいといふものだから、大概たいがいの者は氣がくさる。
青い顔 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
加之それに自分の分としては財産ざいさんも幾分別になツて、生活の安全も保證ほしようされてあるから、夫人に取ツては、何方がツてもけてもカラ平氣だ。そこでらざるおせツかいをせぬ事としてまし返ツてゐた。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)