切支丹きりしたん)” の例文
切支丹きりしたんが日本に這入って来るのと同じ頃に伝わって来て、九州地方の山窩さんかとか、××とか、いうものの中に行われておったという話じゃ
骸骨の黒穂 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
これだけの人氣をたつた三月くらゐの間に掴んだのは、切支丹きりしたんの魔法使ひではあるまいか、と飛んだことを言ふあわて者もあつた程です。
何かというと、それは銀いろをした一箇のかぎでした。亡父ちちの二官が公儀から役目の上に預かっていた切支丹きりしたん屋敷の官庫の鍵です。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
でなくば自身冥土めいどまで聞きに行ってくる切支丹きりしたん伴天連ばてれんの秘法でも心得ていないかぎり、推断に苦しむのは当然なことというべきでありました。
あれが世にいう悪女の深情けか。まさか切支丹きりしたん破天連ばてれんでも有るまいが、あの眼で一寸睨まれたら、もう体が痺れて如何どうする事も出来ないのだそうな
死剣と生縄 (新字新仮名) / 江見水蔭(著)
かの切支丹きりしたん宗徒に対する特殊の拷問や刑罰は別問題として、普通の罪人に対しては右の四種のほかにその例を聞かない。
拷問の話 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「まあ、いわば手品——手品でもないが、切支丹きりしたんの魔術とでも呼ぶべきものでござろうな。しかし、切支丹ではない。」
「でもあんな方が切支丹きりしたんでいらッしゃろうとは思いませんでしたよ。それにあんなに髪を切ッていらッしゃるのですら」
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
さし当り切支丹きりしたんを槍玉に挙げて、凡そ残虐の限りを尽した家光が死んで家綱が四代将軍となつてゐた頃の事である。
そうです、政宗はなかなか食えない男です、邪法くにを迷わすなんぞと、詩にまでうたっていながら、その事実、宣教師を保護し、切支丹きりしたんを信じていたのですな。
大菩薩峠:34 白雲の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
その恐ろしい病からのがれしめたいとひそかに切支丹きりしたん帰依きえして、神様にお祈りをしたので御座います。
血友病 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
今般、当村内にて、切支丹きりしたん宗門の宗徒共、邪法を行ひ、人目じんもくまどはし候儀に付き、私見聞致し候次第を、逐一ちくいち公儀へ申上ぐ可きむね、御沙汰相成り候段屹度きつと承知つかまつり候。
尾形了斎覚え書 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
私自ら、くらめくように覚えて、眼をあいた時は、ただ美くしい自然と地獄の噴煙とのみが目の前にあった。切支丹きりしたん物語りと雲仙地獄、この二つを切離して考えることは出来ない。
雲仙岳 (新字新仮名) / 菊池幽芳(著)
大久保相模守さがみのかみは板倉伊賀守いがのかみ床几しょうぎを並べて、切支丹きりしたんの宗徒の手入ていれを検視していた。
切支丹転び (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
或無學な金持ちが、初めて蓄音機を聽いて、切支丹きりしたんではないかと驚いたこと。
泡鳴五部作:03 放浪 (旧字旧仮名) / 岩野泡鳴(著)
島原しまばら切支丹きりしたん退治たいじがあって、血腥ちなまぐさうわさが伝わったのは昨年のことである。
討たせてやらぬ敵討 (新字新仮名) / 長谷川伸(著)
山のべにひそむがごとき切支丹きりしたんまづしき村もわれは見たりき
つゆじも (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
われは思ふ、末世まつせ邪宗じやしゆう切支丹きりしたんでうすの魔法まはふ
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
切支丹きりしたん屋敷のお蝶のやつが、どこへ影を消していやがるのか、さッぱり当てがつかねえので、さすがの親分も気をくさらしておいでなさる。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「手前は死んだ勘兵衛の身許を洗ってくれ。親の初代一刀斎勘兵衛は、五年前に禁制の切支丹きりしたんの像に紛らわしい物を彫って、遠島になったはずだ」
一世を驚倒させたあの戦慄せんりつすべき切支丹きりしたん宗徒の大陰謀を、またたくうちにあばきあげ、真に疾風迅雷しっぷうじんらいの早さをもって一味徒党を一網打尽にめしとり
「わたしは、ひとつ、ぜひ、切支丹きりしたんの絵を描いていただいて、納めたいと思っているのでございます」
大菩薩峠:24 流転の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
同時に眼にもとまらぬ早技はやわざでひゅういと空にうなった切支丹きりしたん十字の呪縛剣じゅばくけん、たちまちそれを、やんわり振りかぶった大上段の構えは——せきとしてさながら夜の湖面。
つづれ烏羽玉 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「我が日の本の魂が、り固まったる三尺の秋水しゅうすい。天下法度はっと切支丹きりしたんの邪法、いで真二まっぷたつに……」
芝居狂冒険 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
でなくは切支丹きりしたんではないかと、韮山にらやまで興行の折は、江川太郎左衛門えがわたろうざえもん様の手代衆が一応お調べになりまして、確かに魔法妖術ようじゅつときめて、既に獄門にもなろうとしましたのを
丹那山の怪 (新字新仮名) / 江見水蔭(著)
かう云ふと、切支丹きりしたん宗門の信者は、彼等のパアテルをひるものとして、自分をとがめようとするかも知れない。が、自分に云はせると、これはどうも、事実らしく思はれる。
煙草と悪魔 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
この古びた女人像は、切支丹きりしたん宗徒が聖母として礼拝するマリアの像であった。
半七捕物帳:33 旅絵師 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「板女は切支丹きりしたんの残党らしい」
女賊記 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
切支丹きりしたん邪宗じやしゆうの寺の入口いりぐち
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
「そうだろう、お前は切支丹きりしたん屋敷を脱出した、ころびばてれんの娘だ。お前を容れる世間はなく、お前をけ廻す宗門役人があるばかりだ」
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
隱し念佛、又はお庫念佛、一に犬切支丹きりしたんと言つたところで、今の世にその實體を知つてゐる人は幾人もないでせう。
切支丹きりしたん禁制の記念が、遊女町の名によって残されたことを思うと、因縁いんねんもまた奇妙な感じがします。
私宅を立ち出で候所、篠宅の前へ来かかり候へば、村方の人々大勢たたずみ居り、伴天連ばてれんよ、切支丹きりしたんよなど、罵り交し候うて、馬を進め候事さへ叶ひ申さず、依つて、私馬上より
尾形了斎覚え書 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
異国へ渡って切支丹きりしたんを学び、その魔法で徳川家を呪えという、それも洞斎の遺言であったが、いずれはそうしようとも考えながら、生れ故郷の関川を未だ一歩も出ずにいたのだ。
怪異黒姫おろし (新字新仮名) / 江見水蔭(著)
切支丹きりしたん騒動として有名なあの島原の乱——肥前の天草で天草四郎たち天主教徒の一味が起こした騒動ですから一名天草の乱ともいいますが、その島原の乱は騒動の性質が普通のとは違っていたので
そうして、それは切支丹きりしたんの魔法ではないかなどと説く者もあった。
半七捕物帳:69 白蝶怪 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
信長は切支丹きりしたんぎらいではない。仏徒と闘い法城を焼き払っても、あながち仏法嫌いでないのと同じ意味で、宗教そのものの本来の価値は認めている。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「南蛮仏とも言うよ。昔切支丹きりしたん蔓延はびこっていた時、お上の眼をのがれて、これを本尊にしていたんだ。観音様と見せかけて、実は切支丹のサンタ・マリア様だよ」
「これはかいたものではございませんか。まあ、機械で、どうしてこんなによくお像を写すことができるのでございましょう、切支丹きりしたんとやらの魔法のようでございます」
大菩薩峠:13 如法闇夜の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
とある年の秋の夕暮、われ独り南蛮寺の境内けいだいなる花木はなきの茂みを歩みつつ、同じく切支丹きりしたん宗門の門徒にして、さるやんごとなきあたりの夫人が、涙ながらの懺悔こひさんを思いめぐらし居たる事あり。
るしへる (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
寛永十五年島原の切支丹きりしたん宗徒の乱が平定したとき、祖父の摂津守忠房せっつのかみただふさ島原城主として四万石をみましたが、間もなく旅先で歿し、父の左近太夫高長そのほうを継ぎました。
盗んだりなんかするもんだから、あれは切支丹きりしたんの、魔法使いの毛唐だと言ってるんですとさ
大菩薩峠:31 勿来の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
孫兵衛の母イサベラ様の幾代目かの御先祖——黄金こがね色の髪の毛に愛くるしい琥珀こはくの眼をもった異国娘も、その時、武装した切支丹きりしたん武士に手をひかれて、阿波の海辺へ上がりました。
鳴門秘帖:06 鳴門の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
黄泉路よみぢさはりとなるはその方どもの未来なり、その方どもは心得悪しく、切支丹きりしたんの御宗門にも帰依きえし奉らず候まま、未来は「いんへるの」と申す地獄にち、悪魔の餌食とも成り果て候べし。
糸女覚え書 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
切支丹きりしたんがさらって行って、生胆いきぎもを取るんじゃありませんか——世間ではそう言っていますよ」
その書面をうやうやしく神棚の上へ載せて、何かあの人たちは勘違いでもしているのだろう、わたしたちのすることを、切支丹きりしたんの宣伝でもするかのように誤解して、国のためにそれを憂えて
大菩薩峠:26 めいろの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
切支丹きりしたんがさらつて行つて、生膽いきぎもを取るんぢやありませんか——世間ではさう言つて居ますよ」
「今の少年が、あれで熱心な切支丹きりしたんの信者なのです、イエス・キリストの……」
大菩薩峠:23 他生の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
油絵などは、切支丹きりしたんの踏絵より外には見ることの無い時代、茶店の店先に、鏡に映したような、お鳥の肖像があったのですから、これに驚かなければうかして居ります。
裸身の女仙 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
「あ、それは切支丹きりしたんの書物でございます」
大菩薩峠:22 白骨の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)