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魚籠
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びく
ふりがな文庫
“
魚籠
(
びく
)” の例文
袋へ入れた
竿
(
さお
)
と
餌箱
(
えばこ
)
。
魚籠
(
びく
)
はなかった、彼の釣りには魚籠は要らないのである。雇い仲間の段平は、旦那が忘れたのだろうと思った。
鵜
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
上川筋は稍急流で浅場なので、足で釣らなくてはならぬが、やまべらしく案外
魚籠
(
びく
)
は重くなる。私はもつぱら此川筋へ出漁して居る。
釣十二ヶ月
(新字旧仮名)
/
正木不如丘
(著)
そういえば、ボートの中に
魚籠
(
びく
)
のようなものがあった。大池がこのボートで釣りに行くのだろうと思わなかったのが、どうかしている。
肌色の月
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
と、三千夫少年も、カニばかりはいった
魚籠
(
びく
)
をかついで、スミス警部のところへとんできた。いまや警部は船内の
畏敬
(
いけい
)
のまととなった。
海底大陸
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
と見る間もなく、彼は頭の
魚籠
(
びく
)
を小脇に引っかかえて、欄干から川のなかへざんぶと飛び込んだので、往来の人々はおどろいた。
半七捕物帳:69 白蝶怪
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
▼ もっと見る
二、三時間で、
魚籠
(
びく
)
は一杯になった。魚籠の中で、バタバタと跳ねる魚の響きが、腰に
結
(
ゆわ
)
えた紐から身体に伝わってきて、何とも快かった。
楢の若葉
(新字新仮名)
/
佐藤垢石
(著)
こんな道の
真中
(
まんなか
)
などで鰈になつたら、ちやうど、れふしの
魚籠
(
びく
)
から、はね出した鰈のやうに、砂の上でぺんぺん跳ねてゐなければなるまい。
良寛物語 手毬と鉢の子
(新字旧仮名)
/
新美南吉
(著)
妻が川ふちで釣糸を垂れてゐる……鮒がかゝる——彼女は
魚籠
(
びく
)
をのぞいて、魚の数をかぞへる——大写し、十尾ばかりの鮒。
サンニー・サイド・ハウス
(新字旧仮名)
/
牧野信一
(著)
暗い中をのぞきこむように頭を差し入れますと、
魚籠
(
びく
)
のにおいを嗅ぎつけたと見えて、留吉が中から走りだしてきました。
白痴の知恵
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
魚籠
(
びく
)
を提げて、川上、川下へ
跨
(
また
)
がり、川魚を買出しに行く直助の姿が見られた。川上の桜や、川下の青葉の消息が彼の口から
土産
(
みやげ
)
になつて報じられた。
川
(新字旧仮名)
/
岡本かの子
(著)
と儀助は
魚籠
(
びく
)
を肩にかけて案内して行った。新九郎もさて立ち上がってみると、さすがに骨と肉とが離れるような
疼痛
(
とうつう
)
をどこともなく覚えるのだった。
剣難女難
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
わざわざ拾って来られたところでどうしようもない
魚籠
(
びく
)
だの釣竿だのを、一つ一つ若者の前へ並べたてながら
禰宜様宮田
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
おそらくぼくは彼等にとって、水族館の魚じゃなく、
魚籠
(
びく
)
の中の魚みたいに見えるのじゃないでしょうか。
凡人凡語
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
上記のシバテンはまた夜釣りの人の
魚籠
(
びく
)
の中味を盗むこともあるので、とにかく天使とはだいぶ格式が違うが、しかし山野の間に人間の形をした非人間がいて
相撲
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
その
扮装
(
いでたち
)
は古手拭で禿頭に頬冠りをした上から古い小さい竹の子笠を冠り、紺のツギハギ着の尻をからげて古足袋を穿いた跣足で、腰に
魚籠
(
びく
)
を
括
(
くく
)
り付けていた。
梅津只円翁伝
(新字新仮名)
/
夢野久作
、
杉山萠円
(著)
釣りのかえりらしい男の歩いているのが見えたが、その
魚籠
(
びく
)
のなかは、いくら見ても空ッぽらしかった。
地図にない島
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
娘の頃にはパン一つ満足に貰えず、いつも
跣足
(
はだし
)
でいたんで、貧乏が厭さにアリョーシカの小金に眼がくらんだのさ。そいで
魚籠
(
びく
)
の中の魚みたいに捕まっちまった。
女房ども
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
魚籠
(
びく
)
に入らぬ大スズキを縄でくくり、破れた網を巻きおさめながら、金五郎が、自嘲する語調で呟いた。
花と龍
(新字新仮名)
/
火野葦平
(著)
実をいふと、氏はその日川の
容子
(
ようす
)
を見に出掛けたので、
魚籠
(
びく
)
の用意だけはしてゐなかつた。で、
兵児
(
へこ
)
帯を縦に
割
(
さ
)
いて
魚
(
うを
)
の
鰓
(
あぎと
)
を
引
(
ひ
)
つ
括
(
くゝ
)
つて、その儘水に
游
(
およ
)
がせておいた。
茶話:04 大正七(一九一八)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
お前は私たちの後から、
黐竿
(
もちざお
)
を肩にかついだ小さな弟と一しょに、
魚籠
(
びく
)
をぶらさげて、ついてきた。私は
蚯蚓
(
みみず
)
がこわいので、お前の兄たちにそれを釣針につけて
貰
(
もら
)
った。
麦藁帽子
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
まるで
諜
(
しめ
)
し合せたやうに同じ麦藁の大きな帽子をかぶつて、白いシャツを着こみ、
魚籠
(
びく
)
と追鮎箱とをガタつかせながら、めいめいの家の裏口から河原に現れるのだつた。
医師高間房一氏
(新字旧仮名)
/
田畑修一郎
(著)
青い
魚籠
(
びく
)
に
蓼
(
たで
)
を添へる、笹を置く、
葭
(
よし
)
を敷く、それで一幅の水墨画になる。夏になるとその生活の半分を魚釣りで暮す故か、私にとつて夏ほど魚を愛し、魚に親しむ時はない。
夏と魚
(新字旧仮名)
/
佐藤惣之助
(著)
伝兵衛は大喜びでそれを腰の
魚籠
(
びく
)
へ入れたが、魚籠は魚で一ぱいになった。魚が魚籠に一ぱいになれば、そのうえ網を打つ必要もなかった。伝兵衛は網を畳んで帰ろうとした。
亀の子を握ったまま
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
三人は、次郎のさげていた
魚籠
(
びく
)
に、いくらかの鮒と鰻をわけてもらって、すぐ帰った。
次郎物語:02 第二部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
おつきの者の
諫
(
いさ
)
めるのもきかずに、はては殺生禁断の二見ヶ浦へ毎夜のように網を入れては、
魚籠
(
びく
)
一ぱいの獲物に横手をうってほくほくしていると、このことが広く知れ渡ったものの
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
夏の照り葦辺行く子は
魚籠
(
びく
)
もちて何か
真顔
(
まがほ
)
の我にかも似る
夢殿
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
夏がくれば、私は
魚籠
(
びく
)
をさげて父のあとから、ひょこひょこ歩き、投網打ちに行った。
筌
(
うけ
)
をかけにも行った。釣りにも行った。
わが童心
(新字新仮名)
/
佐藤垢石
(著)
うしろからそう呼んで来るのを聞いてお
高
(
たか
)
はたちどまった。十三四歳の少年が担ぎ
魚籠
(
びく
)
を背負っていそぎ足に来る、お高は
日本婦道記:糸車
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
東京はまだ土用が明けたばかりであろうが、ここらは南の国といってもやはり秋が早く来ると思いながら、からっぽうの
魚籠
(
びく
)
をさげて帰った。
水鬼
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
もっとも
魚籠
(
びく
)
は、鉄砲
笊
(
ざる
)
の古いのがあったから、あれを使うことにしよう。餌筥は、
楊枝
(
ようじ
)
筥の古いので間に合うだろう。肝心なのは竿に糸に鈎。
顎十郎捕物帳:04 鎌いたち
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
ただ、毒揚物を入れたらしい一箇の
魚籠
(
びく
)
が中野の雑木林の中に捨てられてあった——それだけであった。
大岡越前
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
日は高く上つて、
噎
(
む
)
せるやうな温かい空気が、時々、風の工合で河原の方からやつて来た。徳次も切り上げて来た。三箇の
魚籠
(
びく
)
を中にして、頭を並べて獲物を見せ合つた。
医師高間房一氏
(新字旧仮名)
/
田畑修一郎
(著)
自転車のうしろに
魚籠
(
びく
)
をつけて門口から声をかけて通る魚売りは三日に一度も来なくて、往来にその自転車をちらりと見かけ走って出て声をかけると、魚売りはふりむきもせず
主婦意識の転換
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
そしてその板橋の上には、五六人の村の娘たちが、めいめいに
魚籠
(
びく
)
をさげながら、立つたままで、何かしやべつてゐた。私たちが近づくのを見ると、彼女たちはしやべるのを止めた。
燃ゆる頬
(旧字旧仮名)
/
堀辰雄
(著)
実際未明の薄明や、有明の月光の下に釣場に到着して、竿を継いでリユツクを背に、
魚籠
(
びく
)
を腰に、釣場をもとめて、釣りあるくたのしさは、単なるピクニツクなどゝは比較にならない。
健康を釣る
(新字旧仮名)
/
正木不如丘
(著)
その子供たちは餌を使い果たしたのか、人の
魚籠
(
びく
)
を見て廻ったり、脚を組んで沖を眺めたり、そんなことばかりしていたんだが——、ふと僕は餌をつけかえようとして、傍の餌箱を見た。
魚の餌
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
鰭がトゲのやうに開く、バザバザといふ奴を腰の
魚籠
(
びく
)
へ叩き込む。去年は品川の道隆の大名釣りが当つて、夕方から百艘も船が出て、私も二三度通つたが、然し船で釣るのは面白くない。
夏と魚
(新字旧仮名)
/
佐藤惣之助
(著)
魚籠
(
びく
)
を担いで川までお供して行く途中の長い長い田圃道の
徒然
(
つれづれ
)
なままに翁と雑談をしながら何気なく質問をすると、翁は上機嫌なままに大事な口伝や秘伝を不用意に洩らすことがあった。
梅津只円翁伝
(新字新仮名)
/
夢野久作
、
杉山萠円
(著)
客人を待たしおいて天の川へ往って魚を捕って来るなんぞ申し、
竹子笠
(
たけのこがさ
)
を着、腰に
魚籠
(
びく
)
をつけて、
縁端
(
えんさき
)
から虚空に姿を消すかと思えば、間もなく腰の魚籠に
鯉
(
こい
)
鯰
(
なまず
)
の類をいっぱい持って帰るなど
切支丹転び
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
牡蠣殻
(
かきがら
)
を載せた板屋根、船虫の穴だらけの柱、潮風に
佗
(
わ
)
びてはいるが、此の辺の漁師の親方の家とて普通の漁師の家よりはやや大型である。庭に
汐錆
(
しおさ
)
び松数本。その根方に網や
魚籠
(
びく
)
が散らかっている。
取返し物語
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
夜光を背にしてよくは見えないが、つんつるてんの
紺飛白
(
こんがすり
)
に白い
兵児
(
へこ
)
帯を太く巻いて、後世の英傑西郷先生の元祖みたいな
風体
(
いでたち
)
だ。髪は、戦国風の
太茶筌
(
ふとちゃせん
)
。釣竿を差し伸べて片手に
魚籠
(
びく
)
を
提
(
さ
)
げている。
魔像:新版大岡政談
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
魚籠
(
びく
)
ひたせば。
海豹と雲
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
玄一郎はこちらへと云って、松尾の持って来たのを取り
竿
(
さお
)
や
魚籠
(
びく
)
や餌箱などを見た。継ぎ竿が三本、魚籠にも餌箱にもどこかで見た記憶がある。
いさましい話
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
隠居も千八もおどろいていると、男はそこにある
魚籠
(
びく
)
に手を入れて、生きた小魚をつかみ出してむしゃむしゃと食った。二人はいよいよ驚かされた。
半七捕物帳:32 海坊主
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
私は、老人の
魚籠
(
びく
)
を覗いた。老人は囮箱でなく、竹で編んだ魚籠を使っていたのである。大きな籠の中には、四、五十尾の鮎が、生き生きと群れていた。
想い出
(新字新仮名)
/
佐藤垢石
(著)
鞺々
(
とうとう
)
と流れる渓流に
脛
(
すね
)
を洗われながら、一人の若者が
鉤鈎
(
かぎばり
)
をつけた三尺ばかりの棒を巧みに
操
(
あやつ
)
ってぴらりぴらりと
閃
(
ひら
)
めく
山女
(
やまめ
)
を引ッかけては、見る見る間に
魚籠
(
びく
)
を
満
(
みた
)
していた。
剣難女難
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
そしてその板橋の上には、五六人の村の娘たちが、めいめいに
魚籠
(
びく
)
をさげながら、立ったままで、何かしゃべっていた。私たちが近づくのを見ると、彼女たちはしゃべるのを
止
(
や
)
めた。
燃ゆる頬
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
彼は急いで釣竿をたたみ、
魚籠
(
びく
)
を上げて、海岸に急いだ。弟に訊ねた。
狂い凧
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
房一の
魚籠
(
びく
)
をのぞいて、盛子はびつくりしたやうに叫んだ。
医師高間房一氏
(新字旧仮名)
/
田畑修一郎
(著)
というのは、そういう人は高価な継ぎ竿を幾本も持っているし、
魚籠
(
びく
)
、
餌箱
(
えばこ
)
、帽子から服から靴まで、すべてその道の装具をきちんと
揃
(
そろ
)
えている。
青べか物語
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
魚
常用漢字
小2
部首:⿂
11画
籠
常用漢字
中学
部首:⽵
22画
“魚”で始まる語句
魚
魚屋
魚河岸
魚籃
魚鱗
魚類
魚釣
魚沼郡
魚族
魚肉