頓首とんしゅ)” の例文
私の心事について素振そぶりに対して一点の疑いをはさむこともなく、かえって閉口へいこう頓首とんしゅしてその日の中に送り出すようにしてくれたというのは
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
大士と弟子たちの宥免ゆうめんを願い奉ると夫婦叩頭こうとう、坊主も頓首とんしゅし続けて互いに赦しを乞う事十五分間とは前代未聞の椿事なり。
「一詩箋しせん後便までに社中の者どもに書かせ差上げ申す可く候。よろづ後便に申しもらし候。頓首とんしゅ。春道様。四月二十日。藍。」
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
云わば新たに、死ぬべき場所を捜さねばならぬ場合に立ちいたっていた。——「頓首とんしゅ再拝つつしんで歎願たんがん奉り候」
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
しかし、最早もはや御近所へ披露ひろうしてしまった後だから泣寝入りである。後略のまま頓首とんしゅ。大事にしたまえ。萱野君、旅行から帰って来た由。早川俊二。津島君。
虚構の春 (新字新仮名) / 太宰治(著)
と直訳すると、邦文ほうぶんの「頓首とんしゅ」、「再拝さいはい」よりひどく聞こゆれども、この句のみなもとはさほど卑屈ひくつの意ではなく
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
時下じか残暑ざんしょしのぎがたく候処そうろうところ益〻ますます御清穆ごせいぼく御事おんこと存上候ぞんじあげそうろう 却説さて 伯爵様はくしゃくさま折入おりいって直々じきじき貴殿きでん御意得度思召ぎょいえたきおぼしめし被在候間あらせられそうろうあいだ明朝みょうちょう御本邸ごほんてい御出仕可然ごしゅっししかるべく此段申進候このだんもうしすすめそうろう 早々そうそう頓首とんしゅ
苦心の学友 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
頓首とんしゅして謝し、ついで卒すと。篋中きょうちゅうの朱書、道士の霊夢、王鉞おうえつの言、呉亮ごりょうの死と、道衍のこいと、溥洽のもくと、嗚呼ああ、数たると数たらざると、道衍けだし知ることあらん。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
すでにして一人その道に来たり会するありて、はるかに一老体の地に座して頓首とんしゅ再拝するを見て大いに怪しみ、近づきてこれを検するに、頭巾ずきん前に垂れて両眼を隠している。
おばけの正体 (新字新仮名) / 井上円了(著)
軍功を記して天下に表彰する従軍記者が将校下士の前に頓首とんしゅして食を乞ひ茶を乞ひただその怒気に触れんことを恐るるが如き事実の明治の今日に存せんとは誰も予想外なりしなるべし。
従軍紀事 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
偶然からいて来る体験、そンなものにほとほと閉口頓首とんしゅ、男といっしょにいるのもいや、夜の酒場勤めも長続きするものではないとなれば、結局は女中にでもなるより仕方がないけれど
新版 放浪記 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
生命いのちがけで、いて文部省の展覧会で、へえつくばって、いか、洋服の膝を膨らまして膝行いざってな、いい図じゃないぜ、審査所のお玄関で頓首とんしゅ再拝とつかまつったやつを、紙鉄砲で、ポンとねられて
紅玉 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
しかし頭を下げるうちにいつでも圧迫を感じている。位地、年輩、服装、住居が睥睨へいげいして、頭を下げぬか、下げぬかと催促されてやむを得ず頓首とんしゅするのである。道也どうや先生に対しては全くおもむきが違う。
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
眼の隅から見ていうと、孟獲は、ひたいを地に打ちつけんばかり頓首とんしゅして
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
頓首とんしゅ不宣。恒藤権右衛門家内より、近藤右門様おんもとへ——
と、一つ頓首とんしゅすれども、主人は答礼とうれいどころか
元日の釣 (新字旧仮名) / 石井研堂(著)
たのしみにしてお待ちあれ。頓首とんしゅ頓首
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
要用のみかさねて申上候。匆々そうそう頓首とんしゅ
頓首とんしゅ
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
燕王辞すること再三、諸王羣臣ぐんしん頓首とんしゅして固く請う。王つい奉天殿ほうてんでんいたりて、皇帝の位に即く。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
徒ニ遺産ヲ費シ安然トシテ妻子ヲやしなフ。文子ノイハユル孝ハ妻子ニ衰フモノトハ僕ノ謂歟いいか。多罪。野君久シク病ニ伏シ書ヲ賢兄ニおさむルコト能ハズ。僕ニ属シテねんごろニ謝セシム。頓首とんしゅ死罪。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
右御礼かたがた愚意大略申述候。失礼の段御容赦可被下くださるべく候。頓首とんしゅ。(七月二日)
病牀六尺 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
はるかに老人の地にひざまずき頓首とんしゅして謝罪する状あるを望み、大いに怪しみ、急ぎ近づきて見れば、大黒頭巾ずきんの前に垂れて両眼を隠せるを発見し、その頭巾を取り去れば、老僕大いに驚き
迷信解 (新字新仮名) / 井上円了(著)
生命いのちがけで、いて文部省の展覧会で、へえつくばつて、いか、洋服のひざを膨らまして膝行いざつてな、いゝ図ぢやないぜ、審査所のお玄関で頓首とんしゅ再拝さいはいつかまつつた奴を、紙鉄砲かみでっぽうで、ポンとねられて
紅玉 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
そして、わざと三円の借金をかえさざる。頓首とんしゅ。私は女です。
虚構の春 (新字新仮名) / 太宰治(著)
賈詡は、驚いて、床にひざまずき、頓首とんしゅして答えた。
三国志:04 草莽の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
○赤石君文晁ぶんちょう帰去来ききょらいの事。(懇請、頓首とんしゅ
ガラマサどん (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
すぐ月日がたってゆくのには閉口頓首とんしゅ
新版 放浪記 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
頓首とんしゅ再拝
景隆支うるあたわずしてのがれ、諸軍も亦かててゝはしる。燕の諸将ここに於て頓首とんしゅして王の神算及ぶからずと賀す。王いわく、偶中ぐうちゅうのみ、諸君の言えるところは皆万全の策なりしなりと。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
と、頓首とんしゅした。
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
頓首とんしゅ
風の便り (新字新仮名) / 太宰治(著)
髭先ひげさきのはねあがりたる当世才子、高慢の鼻をつまみ眼鏡めがねゆゝしく、父母干渉の弊害をときまくりて御異見の口に封蝋ふうろう付玉つけたまいしを一日粗造のブランディに腸加答児カタル起して閉口頓首とんしゅの折柄、昔風の思い付
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
頓首とんしゅ再拝さいはい
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
頓首とんしゅ
新釈諸国噺 (新字新仮名) / 太宰治(著)