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には
ふりがな文庫
“
遽
(
には
)” の例文
『聞いたす。』と穏かに言つて、お八重の顔を
打瞶
(
うちまも
)
つたが、何故か「東京」の
語
(
ことば
)
一つだけで、胸が
遽
(
には
)
かに動悸がして来る様な気がした。
天鵞絨
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
愛
(
あい
)
ちやんは
今
(
いま
)
こそ
逃
(
に
)
げるに
好
(
い
)
い
時
(
とき
)
だと
思
(
おも
)
つて
遽
(
には
)
かに
駈
(
か
)
け
出
(
だ
)
し、
終
(
つひ
)
には
疲
(
つか
)
れて
息
(
いき
)
も
絶
(
き
)
れ、
犬
(
いぬ
)
ころの
遠吠
(
とほゞえ
)
が
全
(
まつた
)
く
聞
(
きこ
)
えなくなるまで
走
(
はし
)
り
續
(
つゞ
)
けました。
愛ちやんの夢物語
(旧字旧仮名)
/
ルイス・キャロル
(著)
姫はこれをも
可笑
(
をか
)
しとて笑ひ給ふに、外の人々は
遽
(
には
)
かに色を正して、中にもかゝる味なき事を可笑しとするは何故ならんなどいふ人さへあり。われ。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
その頃から
遽
(
には
)
かに異性といふものに目がさめはじめると同時に、同じやうな恋の対象がそれから
夫
(
それ
)
へと心に映じて来たが、だらしのない父の
放蕩
(
はうたう
)
の
報
(
むく
)
いで
或売笑婦の話
(新字旧仮名)
/
徳田秋声
(著)
詩人は努力精進して別に
深邃
(
しんすゐ
)
なる詩の法門をくゞり、三眛の境地に脚を
停
(
とゞ
)
めむとして
遽
(
には
)
かに
踵
(
きびす
)
をかへされた。吾人は「寂寥」篇一曲を
擁
(
いだ
)
いて詩人の遺教に泣くものである。
新しき声
(旧字旧仮名)
/
蒲原有明
(著)
▼ もっと見る
云ひ/\てその美しき国の事
遽
(
には
)
かに恋しくやなりけむ、暫し目を
瞑
(
と
)
ぢて、レナウが歌とおぼゆるを
口吟
(
くちずさ
)
み居たりき。
閑天地
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
『
再
(
ふたゝ
)
び
陸
(
りく
)
に
返
(
かへ
)
る、それで——それが
第一
(
だいいち
)
の
歩調
(
ほてう
)
の
總
(
すべ
)
てゞある』と
海龜
(
うみがめ
)
は、
遽
(
には
)
かに
其
(
そ
)
の
聲
(
こゑ
)
を
落
(
おと
)
して
云
(
い
)
ひました。
愛ちやんの夢物語
(旧字旧仮名)
/
ルイス・キャロル
(著)
蒼白
(
あをじろ
)
い少年であつた私は、彼からその一節を読みきかされて、
遽
(
には
)
かに小さい心臓の痛みを感じた。私はその頃、周囲に女の子の遊び友達しかもつてゐなかつた。
町の踊り場
(新字旧仮名)
/
徳田秋声
(著)
われは今更彼婦人に逢ひて何とかすべきと思ひぬれば、御返事もやあると
促
(
うなが
)
しに來し男を呼び入れて、詞短かにいひぬ。われは
遽
(
には
)
かに思ひ定むる事ありて、拿破里を去らんとす。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
遽
(
には
)
かにわが身
變
(
かは
)
りぬ、否さらずば
独絃哀歌
(旧字旧仮名)
/
蒲原有明
(著)
遽
(
には
)
かに夜も昼も
香
(
かぐ
)
はしい夢を見る人となつて
旦暮
(
あけくれ
)
『若菜集』や『暮笛集』を懐にしては、程近い
田畔
(
たんぼ
)
の中にある小さい寺の、
巨
(
おほ
)
きい
栗樹
(
くりのき
)
の下の墓地へ行つて
葬列
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
絶えず滑らかな英語で、間断なく
饒舌
(
しやべ
)
りつゞけてゐたのだが、軽井沢でおりてから、
四辺
(
あたり
)
の
遽
(
には
)
かに静かになつた客車のなかで、姉のまだ若い時分——私がその肌に
負
(
おぶ
)
さつてゐた頃から
町の踊り場
(新字旧仮名)
/
徳田秋声
(著)
『はい!』と
叫
(
さけ
)
んだものゝ
愛
(
あい
)
ちやんは、
餘
(
あま
)
りに
狼狽
(
あはて
)
たので
自分
(
じぶん
)
が
此所
(
こゝ
)
少時
(
しばらく
)
の
間
(
あひだ
)
に、
如何
(
いか
)
ばかり
大
(
おほ
)
きくなつたかと
云
(
い
)
ふことを
全然
(
すつかり
)
忘
(
わす
)
れて、
遽
(
には
)
かに
跳
(
と
)
び
上
(
あが
)
りさま、
着物
(
きもの
)
の
裾
(
すそ
)
で
裁判官
(
さいばんくわん
)
の
席
(
せき
)
を
拂
(
はら
)
ひ
愛ちやんの夢物語
(旧字旧仮名)
/
ルイス・キャロル
(著)
遽
(
には
)
かに姫はをののきて
春鳥集
(旧字旧仮名)
/
蒲原有明
(著)
日射
(
ひざし
)
が上から
縮
(
ちぢま
)
つて、段々下に落ちて行く。
颯
(
さつ
)
と
室
(
へや
)
の中が暗くなつたと思ふと、モウ私の窓から日が遁げて、向合つた今井病院の窓が、
遽
(
には
)
かにキラ/\とする。
菊池君
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
私が驚いたことは、自動車の一隊が火葬場の入口へ入つたとき、何か得体の知れない音楽が、
遽
(
には
)
かに起つたことであつた。雅楽にしては陽気で、洋楽にしては怠屈なやうなものであつた。
町の踊り場
(新字旧仮名)
/
徳田秋声
(著)
塵は
遽
(
には
)
かに
生
(
しやう
)
を得て
有明集
(旧字旧仮名)
/
蒲原有明
(著)
それを見た豊吉は、
遽
(
には
)
かに元気の好い声を出して、『死んだどウ、此乞食ア。』と言ひながら、
一掴
(
ひとつか
)
みの草を採つて女の上に投げた。『草かけて埋めてやるべえ。』
二筋の血
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
何か
悦
(
よろこ
)
びさうなものをもつて行きたいと思ふと、ふら/\と
遽
(
には
)
かに思ひついたことなので、考へてゐる
隙
(
ひま
)
もなかつたところから、客から貰つたきり箪笥のけんどんや
抽斗
(
ひきだし
)
の底に仕舞つておいた
或売笑婦の話
(新字旧仮名)
/
徳田秋声
(著)
遽
(
には
)
かに
牕
(
まど
)
を洩れ
春鳥集
(旧字旧仮名)
/
蒲原有明
(著)
九月の末、
遽
(
には
)
かに思ひ立ちて、吟心愁を蔵して一人北海に遊びぬ。
途
(
みち
)
すがら、
下河原沼
(
しもかはらぬま
)
の暁風、
野辺地
(
のへぢ
)
の浦の汐風、
浜茄子
(
はまなす
)
の香など、皆この古帽に沁みて名残をとゞめぬ。
閑天地
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
父と運送屋とで、
遽
(
には
)
かに荷造りが始まつた。
のらもの
(新字旧仮名)
/
徳田秋声
(著)
其男は、火光の射した窓の前まで来ると、
遽
(
には
)
かに足を留めた。女の影がまた
瞬時
(
しばらく
)
窓掛に映つた。
病院の窓
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
十月末の初雪の朝に、
遽
(
には
)
かに産氣づいて生み落したのがお雪である。
散文詩
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
鈍い
歩調
(
あしどり
)
で二三十歩、
俛首
(
うなだ
)
れて歩いて居たが、
四角
(
よつかど
)
を右に曲つて、
振顧
(
ふりかへ
)
つてもモウ社が見えない所に来ると、渠は
遽
(
には
)
かに顔を上げて、融けかかつたザクザクの雪を蹴散し乍ら、勢ひよく足を急がせて
病院の窓
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
と、お定は今の素振を、お八重が何と見たかと気がついて、
心羞
(
うらはづ
)
かしさと
落胆
(
がつかり
)
した心地でお八重の顔を見ると、其美しい眼には涙が浮かんでゐた。それを見ると、お定の眼にも
遽
(
には
)
かに涙が湧いて来た。
天鵞絨
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
その多端なりし生活は今
遽
(
には
)
かに書き尽すべくもあらず。
閑天地
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
遽
漢検1級
部首:⾡
17画
“遽”を含む語句
急遽
遽然
遽々然
其遽
大遽
遽伯玉
遽色
遽雨
遽驚