道理もつとも)” の例文
又七殿訴へなば大亂たいらんとなり白子屋の家名かめい立難たちがたしお常殿は女の事故其處そのところへ氣もつかれざるは道理もつともの事なれども能々よく/\勘辨かんべんありて隨分ずゐぶん又七殿を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
づか/\、の、……其處そこの五だいめの瓦斯燈がすとうところまで小砂利こざりつてまゐりますと、道理もつともことなん仔細しさいもありませぬ。
三人の盲の話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
なるほど吃驚するのも道理もつともだが、たとひ自害しないでも俺達はもう生きてはゐられない……。よく考へてみろ。
俳諧師 (旧字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
お吉は夫の顔を見て、いつもの癖が出て来たかと困つた風情は仕ながらも自己おのれの胸にものつそりの憎さがあれば、幾分いくらかは清が言葉を道理もつともと聞く傾きもあるなるべし。
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
渠の頭脳あたまは非常に混雑して来た。嗚呼、俺は罷めさせられるには違ひないんだ。だが、竹山の云つてる処も道理もつともだ。成程然うなれば、まだ一人も二人も人が要る。
病院の窓 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
「なる程な……」媼さんはそれを聞いて道理もつとも至極しごくな事のやうに思つた。それにつけても、そんな道理もつとも至極な事を思ひつく爺さんと別れるのは悲しくてならなかつた。
ル・マタンの記者が口を極めて子供を公園へ出し屋外の空気に触れさせよと勧告して居るのは道理もつともである。巴里パリイの母親はあまりに自分の遊楽にふけつて子供の自由を顧みないと記者は言つて居る。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
熊野一の港だと聞いたがなるほど道理もつともだと思ひながら、洋傘かうもりをさし、手提をさげてぼんやりと汽船から降りた。降りたには降りたが、其からさきの豫定がまだ判然と頭のなかに出來てゐなかつた。
熊野奈智山 (旧字旧仮名) / 若山牧水(著)
何アに、其様そんなに心配した程の事は無えでごす。警官も奴の悪党の事は知つて居るだアで、内々は道理もつともだと承知してるでごすが、其処は職掌で、さう手軽く済ませる訳にも行かぬと見えて、それで彼様あんな事を
重右衛門の最後 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
すゝまぬかほくび頂垂うなだれた。如何いかにもその憂慮うれひ道理もつともである。
こそ御えらみあるが然るべしと道理をつくして諫言かんげんに及びければ流石さすが強慾がうよくの五兵衞も初めて道理もつともと思ひ終に持參金のねんたちたる樣子なれば久八は此
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
あつさにかはりはないんです、お互樣たがひさま。」と唯吉たゞきちは、道理もつともらしいが、なにがお互樣たがひさまなのか、相應そぐはないことふ。
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
謀反人も明智のやうなは道理もつともだと伯龍が講釈しましたが彼奴のやうなは大悪無道、親方は何日のつそりの頭を鉄扇で打ちました、何日いつ蘭丸にのつそりの領地をると云ひました
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
得ざれば汝ぢが申所は道理もつともたりと雖も親の罪を子におはすると言ふ事にはならず又罪も罪の次第にましてや其方は他人の養子やうしと成りしならずや夫を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
貴様が法外な白痴たはけだからおれに妹があると謂ふことは人にかくしてくらゐ、山田の知らないのも道理もつともだが、これ/\で意見をするとは恥かしくつて言はれもしない。
妖怪年代記 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
アハヽヽそれも道理もつともぢや、今に来たらば能く見て呉れ、まあ恐らく此地辺こゝらに類は無らう、といふものだ。阿呀おや恐ろしい、何を散財おごつて下さります、して親方、といふものは御師匠さまですか。
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
... さるからに御老職ごらうしよく諸役人しよやくにんいづれもがたそれがしことばそむかざるやう御約束おやくそくありたくさふらふ」とはゞかところ申上まをしあぐれば、御年役おんとしやくきこし、「道理もつとも言條いひでうなり」とてすなはち一同いちどう誓文せいもんちようせらる。
十万石 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
おやためだつて、なんだつて、一旦いつたんほかひとをおまかせだもの、道理もつともだよ。
三尺角 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
「しかし、おもつたのは道理もつともだよ、同伴つれ同伴つれだからね。」
月夜車 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)