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這奴
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しゃつ
ふりがな文庫
“
這奴
(
しゃつ
)” の例文
……ああ、これも皆聴水が、悪事の
報
(
むくい
)
なりと思へば、他を恨みん由あらねど。
這奴
(
しゃつ
)
なかりせば今宵もかく、
罠目
(
わなめ
)
の恥辱はうけまじきに
こがね丸
(新字旧仮名)
/
巌谷小波
(著)
で、
密
(
そっ
)
と離れた
処
(
ところ
)
から突ッ込んで、横寄せに、そろりと寄せて、
這奴
(
しゃつ
)
が夢中で泳ぐ処を、すいと
掻
(
か
)
きあげると、つるりと懸かった。
海の使者
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
すべて尊氏の
謀
(
ぼう
)
だったのだ。じっくり見直してみなければならない。鎌倉在住のころも、
這奴
(
しゃつ
)
はただの“ぶらり駒”ではなかったのだ。
私本太平記:09 建武らくがき帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
つたえ聞くところなら、
這奴
(
しゃつ
)
は一族の
斯波
(
しば
)
家長なるものを、私に、奥州管領となし、ひそかに奥州へ下向せしめたと聞いておる。
私本太平記:10 風花帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
やがて
意地汚
(
いじきたな
)
の
野良犬
(
のらいぬ
)
が来て
舐
(
な
)
めよう。
這奴
(
しゃつ
)
四足
(
よつあし
)
めに
瀬踏
(
せぶみ
)
をさせて、
可
(
よ
)
いと成つて、其の
後
(
あと
)
で
取蒐
(
とりかか
)
らう。
食
(
くい
)
ものが、悪いかして。
脂
(
あぶら
)
のない人間だ。
紅玉
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
▼ もっと見る
「さりとては憎き猫かな。
這奴
(
しゃつ
)
はいぬる日わが鳥を、盗み去りしことあれば、われまた
意恨
(
うらみ
)
なきにあらず。年頃なせし悪事の天罰、今報ひ来てかく成りしは、
実
(
まこと
)
に気味よき事なりけり」
こがね丸
(新字旧仮名)
/
巌谷小波
(著)
「さような感情からではありませぬ。去年、海道諸所の合戦では、二度まで
這奴
(
しゃつ
)
は寝返りをやっておる。およそ
廉恥
(
れんち
)
を知らぬ男でしょうが」
私本太平記:10 風花帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
と
風体
(
ふう
)
、恰好、
役雑
(
やくざ
)
なものに名まで似た、因果小僧とも言いそうな
這奴
(
しゃつ
)
六蔵は、その
舷
(
ふなばた
)
に腰を掛けた、が、舌打して
浮舟
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
這奴
(
しゃつ
)
いまだ黄金丸が牙にかからず、なほこの辺を
徘徊
(
はいかい
)
して、かかる悪事を働けるや。
将
(
いで
)
一突きに突止めんと、気はあせれども怎麼にせん、われは車に
繋
(
つ
)
けられたれば、心のままに働けず。
こがね丸
(新字旧仮名)
/
巌谷小波
(著)
「宥覚か。
這奴
(
しゃつ
)
は、大塔ノ宮いらい、いつも山門の大衆をあげては後醍醐方へ走らせた張本人だ。見せしめに、斬ッてしまえ」
私本太平記:12 湊川帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
這奴
(
しゃつ
)
等が群り居た、土間の雨に、
引挘
(
ひきむし
)
られた
衣
(
きぬ
)
の
綾
(
あや
)
を、
驚破
(
すわ
)
や、
蹂躙
(
ふみにじ
)
られた美しい
女
(
ひと
)
かと見ると、帯ばかり、
扱帯
(
しごき
)
ばかり、
花片
(
はなびら
)
ばかり、葉ばかりぞ乱れたる。
陽炎座
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「即座に放しつかわしました。素直に白状したら解いてやれと、あの場で、殿が
這奴
(
しゃつ
)
へ約束をお与えなされましたことゆえ」
私本太平記:09 建武らくがき帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
這奴
(
しゃつ
)
四足
(
よつあし
)
めに
瀬踏
(
せぶみ
)
をさせて、
可
(
よ
)
いとなって、その後で
取蒐
(
とりかか
)
ろう。食ものが、悪いかして。脂のない人間だ。
紅玉
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
それ以来、足利といえば「——
這奴
(
しゃつ
)
か!」というほどなお
口吻
(
くちぶり
)
にもなり、事は
瑣末
(
さまつ
)
だが、解けないしこりとなっていた。
私本太平記:09 建武らくがき帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
処
(
ところ
)
へ、
遙
(
はるか
)
に
虚空
(
こくう
)
から
大鳶
(
おほとび
)
が
一羽
(
いちわ
)
、矢のやうに
下
(
おろ
)
いて来て、すかりと
大蛇
(
おおへび
)
を
引抓
(
ひきつか
)
んで飛ばうとすると、
這奴
(
しゃつ
)
も
地所持
(
じしょもち
)
、
一廉
(
いっかど
)
のぬしと見えて、やゝ、其の手は
食
(
く
)
はぬ。
妖魔の辻占
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
「いやいや、よく
仮病
(
けびょう
)
をかまえる男だ。
這奴
(
しゃつ
)
の不快とは、心の不快で、去年の出陣に、武者所がヤイヤイと催促したのを、恨みとしておるらしい」
私本太平記:06 八荒帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
従七位は、
白痴
(
ばか
)
の毒気を避けるがごとく、
笏
(
しゃく
)
を廻して、二つ三つ
這奴
(
しゃつ
)
の鼻の
尖
(
ささ
)
を払いながら
茸の舞姫
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
思うに、
這奴
(
しゃつ
)
が
蟄居
(
ちっきょ
)
の
入寺
(
にゅうじ
)
などと事々しく世にふれていたのからして、こちらに油断を噛ませる策であったのでしょう。
私本太平記:10 風花帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
武士
(
さむらい
)
の
這奴
(
しゃつ
)
の帯の
結目
(
ゆいめ
)
を
掴
(
つか
)
んで
引釣
(
ひきつ
)
ると、
斉
(
ひと
)
しく、
金剛杖
(
こんごうづえ
)
に
持添
(
もちそ
)
へた
鎧櫃
(
よろいびつ
)
は、とてもの事に、
狸
(
たぬき
)
が出て、
棺桶
(
かんおけ
)
を下げると言ふ、
古槐
(
ふるえんじゅ
)
の天辺へ掛け置いて、
大井
(
おおい
)
、天竜、
琵琶湖
(
びわこ
)
も、
瀬多
(
せた
)
も
妖魔の辻占
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
「そうです。事ただならずと、師直も憂慮して、道誉の途中を待ち、
這奴
(
しゃつ
)
のこころを
観
(
み
)
て帰らんと申してまいりました」
私本太平記:07 千早帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「神職様。——塩で釣出せぬ
馬蛤
(
まて
)
のかわりに、太い
洋杖
(
ステッキ
)
でかッぽじった、杖は夏帽の奴の持ものでしゅが、下手人は旅籠屋の番頭め、
這奴
(
しゃつ
)
、女ばらへ、お歯向きに、金歯を見せて
不埒
(
ふらち
)
を働く。」
貝の穴に河童の居る事
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「心外でたまりません。かりにも主人が家来にこんな箇条をつきつけられ、しかも
這奴
(
しゃつ
)
の武力にここで屈するなどは」
私本太平記:13 黒白帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
這奴
(
しゃつ
)
、
窓硝子
(
まどがらす
)
の
小春日
(
こはるび
)
の
日向
(
ひなた
)
にしろじろと、
光沢
(
つや
)
を
漾
(
ただよ
)
わして、怪しく光って、ト構えた
体
(
てい
)
が、何事をか
企謀
(
たくら
)
んでいそうで、その
企謀
(
たくらみ
)
の整うと同時に、
驚破
(
すわ
)
事を、
仕出来
(
しでか
)
しそうでならなかったのである。
革鞄の怪
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「しまった。申しわけありません。……
這奴
(
しゃつ
)
らは、何かさとって、襲われる寸前に、彼方へ
退
(
さ
)
がったものとみえます」
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
這奴
(
しゃつ
)
横紙を破っても、縦に舟を漕ぐ事能わず、
剰
(
あまつさ
)
え
櫓櫂
(
ろかい
)
もない。
浮舟
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「憎さも憎し、高氏の首を見ずにはおくまいぞ。
這奴
(
しゃつ
)
一人さえ討ち取れば、赤松勢も怖れるに足らず、公卿大将の
千種
(
ちぐさ
)
など、追わでも腰がくだけ去ろう」
私本太平記:08 新田帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「そちが加古川ノ宿で会った道誉は、さあらぬ
態
(
てい
)
に見えたろうが、なんぞ知らん、
這奴
(
しゃつ
)
は何もかも、とうに見ぬいているのじゃよ。——下手には進めぬ」
私本太平記:05 世の辻の帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「
這奴
(
しゃつ
)
。おれの機嫌をとるつもりだったな。ふざけるな。小右京の件を、それで帳消しなどとは虫がよすぎる」
私本太平記:05 世の辻の帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「たしかな男だ。それに
這奴
(
しゃつ
)
は、神行法とやらいって、一日よく五百里(支那里)を飛ぶ
迅足
(
はやあし
)
をもっておる」
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
そいつを呼んで来て、
破邪
(
はじゃ
)
の術を行わせているんですから、さしもわがお奉行の方術も、いちいち
這奴
(
しゃつ
)
の
秘封
(
ひふう
)
で、その
効
(
こう
)
を現わさなくなったものと思われまする
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
逆賊の
性根
(
しょうね
)
は幾皮
剥
(
む
)
いても逆賊ときまったものだ。尊氏と義貞とは、朝家に誓いたてまつる根本の信念でも、またいかなる点でも、
倶
(
とも
)
に天をいただかざる
仇敵
(
あだがたき
)
。
這奴
(
しゃつ
)
を
私本太平記:12 湊川帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「それはそうだろう。この九州へ上がったものの、
這奴
(
しゃつ
)
らの運命は、自滅のほかはありえない」
私本太平記:11 筑紫帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
一たん、覚悟した自分を、死にたくないと、叫ばしておいて、
這奴
(
しゃつ
)
め、どこへかくれたのか。
私本太平記:05 世の辻の帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「それが正成の魔力だわ。
這奴
(
しゃつ
)
は、わしの兵学をも盗みおった。目をさませ、大蔵」
私本太平記:07 千早帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「待てッ。わしは逃げん! わしは逃げんからまず忍ノ大蔵をさきに引ッ捕えろ。
這奴
(
しゃつ
)
こそ曲者だ。六波羅を売ッて生きている犬だ。その大蔵めを逃がしては各〻の落度になろうぞ」
私本太平記:07 千早帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「一大事だ、一大事だぞ! わが後ろを
断
(
た
)
たれよう! いやそれのみか、よく見ろっ。あの中には、尊氏もおるであろう。
這奴
(
しゃつ
)
の乗船と見ゆる
偽錦旗
(
にせきんき
)
を押し立てた大船も急ぎおるわ!」
私本太平記:12 湊川帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「
這奴
(
しゃつ
)
、仮病であったらあわてるだろうな。そちではゴマ化しも相なるまいし」
私本太平記:06 八荒帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「ひとくちに、
婆娑羅
(
ばさら
)
婆娑羅とよくいうが、
這奴
(
しゃつ
)
はそれだけのものではない」
私本太平記:13 黒白帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
それよ、その若夫婦を、祝うてくりょうと、
華雲殿
(
げうんでん
)
に招いてやったこともある。……ところが
這奴
(
しゃつ
)
め、大酒に食べ酔うて、
田楽
(
でんがく
)
どもの
烏天狗
(
からすてんぐ
)
の姿を借り、この高時をしたたかな目にあわせおった。
私本太平記:06 八荒帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
這奴
(
しゃつ
)
らの虫のよさに、只今、一
喝
(
かつ
)
をくれていたところでござりまする
私本太平記:08 新田帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
おそらく
這奴
(
しゃつ
)
らは、六波羅の
獄舎
(
ひとや
)
におわす先帝(後醍醐)のおん身を
私本太平記:04 帝獄帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「そうあれかしと、てまえも祈って、いろいろ探らせましたところ、やはり、さにあらで、賊は野伏や土民兵らしく、また御旗は、
這奴
(
しゃつ
)
らのなかまの内に、先帝(後醍醐のこと)の五ノ宮(皇子)とかがおられるためと
称
(
とな
)
えております由」
私本太平記:08 新田帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
這
漢検準1級
部首:⾡
11画
奴
常用漢字
中学
部首:⼥
5画
“這奴”で始まる語句
這奴等