うそ)” の例文
うそです、譃です、そんな事あれしません、そら誤解や。」「譃やあれへん、そんならさっきの事いおか?」「さっきどういうた?」
(新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
すると菊池はまゆを挙げながら、「うそだよ、君」と一喝いつかつした。僕は勿論さう云はれて見れば、「ぢや譃だらう」と云ふほかはなかつた。
「なんだか知れるものですか。その方の言ったのがうそかも知れないわ。あなたが御用心をなさるようにおどかしたのかも知れないわ。」
みれん (新字新仮名) / アルツール・シュニッツレル(著)
「今まで言っていたことは何もかも皆なうそばかりであった。やっぱり女もこの家にいるにちがいない」とひとりでうなずいて
霜凍る宵 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
けんどそれやわしに言はすとうそや。んぼ氣がちごたかて、わしを知つてゝ、お時を知らんちふことがあるもんか。其處んとこは作り狂氣きちがひや。
天満宮 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
この出来事はさすがにうそであるとはいえない。まったく驚くべき暗合あんごうで、彼のこころに強い印象を残したのも無理はない。
あれはうそでございます。弟が一人で逃げたって、まあ、どこまで往かれましょう。あまり親に逢いたいので、あんなことを
山椒大夫 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
わたしはこの重みがうそであることを知っているから、押除おしのけると、身体中の汗が出た。しかしどこまでも言ってやる。
狂人日記 (新字新仮名) / 魯迅(著)
ロミオ おゝ、有難ありがたい、かたじけない、なんといふうれしいよる! が、よるぢゃによって、もしやゆめではないからぬ。うつゝにしては、あんまうれぎてうそらしい。
女はこんなうそを衝いてゐる。饒舌しやべりながらセルギウスの顔を見てゐるうちに、間が悪くなつて黙つてしまつた。
それから段々話し込んで、うそ尾鰭おひれを付けて、賭をしているのだから、拳銃の打方を教えてくれと頼んだ。そして店の主人と一しょに、裏の陰気な中庭へ出た。
使って居た女中じょちゅうは、江州ごうしゅう彦根在の者で、其郷里地方きょうりちほうには家屋敷を捨売りにして京、大阪や東京に出る者が多いので、うその様にやすい地面家作の売物うりものがあると云う。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
学校に行ったらみんなが遠くの方から僕を見て「見ろ泥棒のうそつきの日本人が来た」とでも悪口をいうだろうと思っていたのにこんな風にされると気味が悪いほどでした。
一房の葡萄 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
あなたのうそが分かる。そこでわたくしは無駄骨を折らなくてもいい事になる。あんな御亭主に比べて見れば、わたくしは鬚ぐらい剃らずにいたって、十割も男が好いわけですからね。
最終の午後 (新字新仮名) / フェレンツ・モルナール(著)
うそウ、あなたのいつものくせにきまつてるわ。ねエ、子供こども洋服やうふくくつ必要品ひつやうひんよ。
画家とセリセリス (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
お孝はうそのないところこう思っていた。それが時三ときぞうを婿にとってから変った。
寒橋 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
そこで、たしかにうそでない、あの妖物はそんなたぐいの色であった!
「彦根はうそ、入れば召捕えられる所へ誰が参りましょう。」
新訂雲母阪 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
分けることの出来ない三一同体だと云うのがうそなら
勿論源平盛衰記の記事はうそだと云ふ考証家が現れたら、自分は甘んじて何時いつでも、改竄者の焼印を押されようとするものである。
澄江堂雑記 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
それが前にもいいましたように、まだその時分は光子さんと物いうたこともなかったほどでしたさかい、出鱈目でたらめも出鱈目、ひどいうそやのんです。
(新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
うそであろうというと、もう、そんなところにいるものか、遠くの親類が引き取ったとか、またこういえば、私が東京へ帰って行くとでも思ったか
狂乱 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
お豊さんは驚きあきれた顔をして黙っていたが、しばらくすると、その顔にみがたたえられた。「うそでしょう」
安井夫人 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
女は男の肩に頭をぴったり寄せ掛けて、中音ちゅうおんで云った。「うそだわ。あなたが死んでしまうもんですか。もしあなたが生きていなけりゃあ、わたくしも生きてはいないわ。」
みれん (新字新仮名) / アルツール・シュニッツレル(著)
ロミオ 信仰しんかうかたこのまなこに、かりにも其樣そのやう不信心ふしんじんおこるならば、なみだほのほともかはりをれ! 何度なんどおぼれてもにをらぬこの明透すきとほ異端げだうめ、うそうたとが火刑ひあぶりにせられをれ! なんぢゃ
それにうそを衝くと云ふ事がない。只此青年の立派な性格にきずを付けるのは例の激怒だけである。それが発した時は自分で抑制することがまるで出来なくなつて、猛獣のやうな振舞をする。
うそけ。この場になってもう遅い。お前の仲間は今どこにいる」
阿Q正伝 (新字新仮名) / 魯迅(著)
うそつけ。飯じゃあるめえし——」
三人の相馬大作 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
うそばかりを天使の詞で囁きます。
しかしとうとう晩年には悲壮なうそつきだったことにえられないようになりました。この聖徒も時々書斎のはりに恐怖を感じたのは有名です。
河童 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
うそ云ひなさい、あんた始めからリヽーに食べささう思うて、好きでもないもん好きや云うてるねんやろ。あんた、わてより猫が大事やねんなあ。」
猫と庄造と二人のをんな (新字旧仮名) / 谷崎潤一郎(著)
みんなうそをいっていたのだ、だからこうして話してみなければ真相は分らない。それでいて私こそ好い面の皮だ。
霜凍る宵 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
しかしそれをこばんでこたへずにしまふのは、ほとんどそれはうそだとふとおなじやうになる。近頃ちかごろ協會けふくわいなどでは、それを子供こどものためにわるいとつて氣遣きづかつてゐる。
寒山拾得縁起 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
それはうそに違いない。そんな事のありようがない。そう思う心を男に話して聞かせようと思って、男の前にしゃがんで、下から見上げたが、声が出なかった。そこで頭を男のひざに載せて泣いた。
みれん (新字新仮名) / アルツール・シュニッツレル(著)
「ああれ、また、うそばっかり——」
南国太平記 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
うそさ。目を昏ましたのだ。
エブラ うそけ。
僕 それはうそだ。文芸史家の譃だ。ゲエテは丁度三十五の年に突然伊太利イタリイへ逃走してゐる。さうだ。逃走と云ふ外はない。
闇中問答 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
うそ云ひなさい、あんた始めからリヽーに食べささう思うて、好きでもないもん好きや云うてるねんやろ。あんた、わてより猫が大事やねんなあ。」
猫と庄造と二人のをんな (新字旧仮名) / 谷崎潤一郎(著)
しかしそれを拒んで答えずにしまうのは、ほとんどそれはうそだというと同じようになる。近ごろ帰一協会などでは、それを子供のために悪いと言って気づかっている。
寒山拾得縁起 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
「それじゃ、四、五年も前から、自分ばかりに、身体からだの始末をつけてもらいたいようにいって頼んでいたのは、みんなうそであったかも知れぬ」と思ったが、女のいやがるようなことを
狂乱 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
それは、うそだよ、案じるな
南国太平記 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
わたしは度たびうそをついた。が、文字にする時はかく、わたしの口ずから話した譃はいずれも拙劣を極めたものだった。
侏儒の言葉 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
うそ云いなさい、あんた始めからリリーに食べさそう思うて、好きでもないもん好きや云うてるねんやろ。あんた、わてより猫が大事やねんなあ。」
猫と庄造と二人のおんな (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
貸本屋が「読み本」を見せて勧めると、それはうその書いてある本だろうと云って、手に取って見ようともしない。夜は目が草臥くたびれると云って本を読まずに、寄せへ往く。
(新字新仮名) / 森鴎外(著)
仮にうそにしても……譃にちがいないと思うが……病気で廃めたというだけのことに、せめて幾らか頼みの綱がつながっているような気がして、それだけに心に少し勢いがついて、宿にとって返し
狂乱 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
もしうそだと思ふならば、アフリカの森林にほふり出された君や僕を想像して見給へ。勇敢なる君はホツテントツトの尊長しうちやうの王座に登るかも知れない。
解嘲 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
そのうちに着物のすそが又さっとまくれそうになるのんで、片っ方の手でそれも押えてんならんし、ほんに、東京のからッ風云うたらうそやない思うたわ
細雪:01 上巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
近い頃のロシアの小説に、うそかぬ小学生徒と云ふものを書いたのがある。我事も人の事も、有の儘を教師に告げる。そこで傍輩ばうはいに憎まれてゐたたまらなくなるのである。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
うそだ」というと
黒髪 (新字新仮名) / 近松秋江(著)