あつ)” の例文
健三は床の間に釣り合わない大きな朱色の花瓶はないけを買うのに四円いくらか払った。懸額かけがくあつらえるとき五円なにがしか取られた。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
長「兄さんの名は何とか云ったっけ、ポン太さんじゃアねえ恭太さんか、親方にそう云っておくれ、去年の十月あつらえた二挺の鋏はもう出来上ったかって」
「それじゃ仕舞ッてからでいからネ、何時いつもの車屋へ往ッて一人乗一挺いっちょうあつらえて来ておくれ、浜町はまちょうまで上下じょうげ
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
これほどあつらえ向きな時に外套が届けられるということは、ちょっとほかにはあり得ないことだろう。
外套 (新字新仮名) / ニコライ・ゴーゴリ(著)
あつらへなどするうち彼男もつゞいて入來り是も酒を言付いひつけしに程なく双方さうはうへ酒肴を持來もちきたりしかば後藤は手酌てしやくにて飮居たるに彼町人も大酒飮おほざけのみと見え大なる茶碗ちやわんにて引懸々々ひきかけ/\飮居るていに後藤は聲を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「折角のあつらえ物を冷たくしちゃ勿体ねえから食べてやったのよ」
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あつらえた支那蕎麦が本当に十杯ばかりも並んだ。
泣虫小僧 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
するとその男はモーニングでなくては教場へ出られないと云いますから、私はまだ事のきまらない先に、モーニングをあつらえてしまったのです。
私の個人主義 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
伊太利いたりー著作家ちよさくかいたつて流行りうかうの人があつて、其処そこ書林ほんやから、本をあつらへまするに、今度こんど何々なに/\さくをねがひますとたのみにきまする時に、小僧こぞう遣物つかひものを持つてくんです。
西洋の丁稚 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
座敷へ通し御湯おゆわいをりますと云ゆゑすぐさま後藤は彼男ととも風呂ふろいりながら酒肴をあつらへおきやがて風呂も仕舞て出來りしに女子どもは酒肴を持出もちいでければ兩人は打寛うちくつろぎて酒宴しゆえんに時刻をうつしけり
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
あつらえときなさい。この人にはかしの棺ではちと高価たかすぎるからね。
外套 (新字新仮名) / ニコライ・ゴーゴリ(著)
「ウム、仮面箱めんばこを隠しておくにゃ、ここはおあつらえにできている」
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
当人の説明では赤は身体からだに薬になるから、衛生のためにわざわざあつらえるんだそうだが、入らざる心配だ。そんならついでに着物もはかまも赤にすればいい。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
醤油したじが悪いから良い蕎麦の御膳の蒸籠せいろうを取って参れ、それからお汁粉もあつらえてまいれ
下につけるものを二つ仕立女にあつらえなければならない。
外套 (新字新仮名) / ニコライ・ゴーゴリ(著)
「どうです、喰べて見なすったか、折れんように箱をあつらえて堅くつめて来たから、長いままでありましたろう」
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
安「お前何をあつらえたんだ」
御米およねおもはくをいてると、此所こゝで十ゑんらずのかねはひれば、宗助そうすけ穿あたらしいくつあつらへたうへ銘仙めいせんの一たんぐらゐへるとふのである。宗助そうすけそれもさうだとおもつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
御米のおもわくを聞いて見ると、ここで十円足らずの金がはいれば、宗助の穿く新らしい靴をあつらえた上、銘仙めいせんの一反ぐらいは買えると云うのである。宗助はそれもそうだと思った。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
迷亭にがんが食いたい、雁鍋がんなべへ行ってあつらえて来いと云うと、かぶこうものと、塩煎餅しおせんべいといっしょに召し上がりますと雁の味が致しますと例のごとく茶羅ちゃらぽこを云うから、大きな口をあいて
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
迷亭は悟ったもので「いえ御茶漬でも御湯漬でも御免蒙るんです。今途中で御馳走をあつらえて来ましたから、そいつを一つここでいただきますよ」ととうてい素人しろうとには出来そうもない事を述べる。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「いくらおあつらえむきでも、こう年を取っちゃ仕方がない。ねえお延」
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
須永はあきれたような顔をしていて来た。二人は柴又しばまた帝釈天たいしゃくてんそばまで来て、川甚かわじんといううち這入はいって飯を食った。そこであつらえたうなぎ蒲焼かばやきあまたるくて食えないと云って、須永はまた苦い顔をした。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「この叔母さんなら、ちょうどおあつらえむきかも知れないがね」
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「いい迷惑だ。時に君はかゆを食うならあつらえてやろうか」
二百十日 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「だって玉子は僕があつらえたんだぜ」
二百十日 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)