表二階おもてにかい)” の例文
とほやまの、田舍ゐなかゆきなかで、おなじ節分せつぶんに、三年さんねんつゞけて過失あやまちをした、こゝろさびしい、ものおそろしいおぼえがある。いつも表二階おもてにかい炬燵こたつから。
火の用心の事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
彼は時々表二階おもてにかいあがって、細い格子こうしの間から下を見下した。鈴を鳴らしたり、腹掛はらがけを掛けたりした馬が何匹も続いて彼の眼の前を過ぎた。みちを隔てた真ん向うには大きな唐金からかねの仏様があった。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
表二階おもてにかいの、狭い三じょうばかりの座敷に通されたが、案内したものの顔も、つとほのめくばかり、目口めくちも見えず、う暗い。
貴婦人 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
……と表二階おもてにかい三十室さんじふまばかり、かぎのにづらりとならんだ、いぬゐのすみ欄干らんかんにもたれてまはしたところわたしとぼしい經驗けいけんによれば、たしかにみゝづくがきさうである。
木菟俗見 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
わたしかへして、裏窓うらまど障子しやうじけた。こゝで、一寸ちよつとはぢはねばきこえない迷信めいしんがある。わたし表二階おもてにかいそらながめて、そのあしすぐ裏窓うらまどのぞくのを不斷ふだんからはゞかるのである。
番茶話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
あつさに一まいしめのこした表二階おもてにかい雨戸あまど隙間すきまからのぞくと、大空おほぞらばかりはくもはしつて、白々しろ/″\と、おとのないなみかとせて、とほりをひとへだてた、むかうのやしき板塀越いたべいごしに、裏葉うらはかへつてあきゆる
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
ところ旦那樣だんなさま別嬪べつぴんさんが、うやつて、手足てあし白々しろ/″\座敷ざしきなかすゞんでなさいます、周圍まはりを、ぐる/\と……とこからつぎ簀戸よしどはううらから表二階おもてにかいはうと、横肥よこぶとりにふとつた
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
甲高かんだかかったそうで、よく下まで聞えたと見えます。表二階おもてにかいにいたんですから。
春昼後刻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)