トップ
>
虧
>
か
ふりがな文庫
“
虧
(
か
)” の例文
谷のふちの向方には地下の墓所から蒸発しているのか、もやもや立ち昇る煙霧の中へ青ざめた
虧
(
か
)
けた三日月が射し入っておりました。
墓場
(新字新仮名)
/
西尾正
(著)
虧
(
か
)
けた月が空の中ほどにあって、色の浅くなった東の空の涯で、美しい淡い紅と青が、煙突の立ちならぶ地平から離れようとしていた。
その一年
(新字新仮名)
/
山川方夫
(著)
ああ、ここにもまた、希望の一つが
虧
(
か
)
け落ちてしまったのだ。それには、いっこうに他奇もない、次の数項が
認
(
したた
)
められてあるのみだった。
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
しかし
満
(
みつ
)
れば
虧
(
か
)
くるの
比喩
(
ひゆ
)
に
洩
(
も
)
れず、先頃から君江の
相貌
(
そうぼう
)
がすこし変ってきた。金青年に喰ってかかるような
狂態
(
きょうたい
)
さえ、人目についてきた。
ゴールデン・バット事件
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
ロベエルが心もち口を
開
(
あ
)
けると、糸切り歯の一本無いのが目につく。それは、二人とも小さかった時、わたしが、弓の矢で
虧
(
か
)
いたのである。
ぶどう畑のぶどう作り
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
▼ もっと見る
腹の立った事さえござんせん、
余
(
あんま
)
り果報な
身体
(
からだ
)
ですから、
盈
(
みつ
)
れば
虧
(
か
)
くるとか申します通り、こんな恐しい目に逢いましたので。
悪獣篇
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
始終の
憂
(
うき
)
に
瘁
(
やつ
)
れたる宮は決して
美
(
うつくし
)
き色を減ぜざりしよ。彼がその美しさを変へざる限は夫の愛は
虧
(
か
)
くべきにあらざりき。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
この、消え失せたこけ猿の茶壺——耳が一つ
虧
(
か
)
けているので、耳こけ猿、こけ猿という……この壺の秘密をめぐる
葛藤
(
かっとう
)
が、本講談の中心でございます。
丹下左膳:02 こけ猿の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
月が
虧
(
か
)
けている時、それは本統に半分を失って了ったように見える。けれど、実は何者をも失ってはいないのだ。
ラ氏の笛
(新字新仮名)
/
松永延造
(著)
デュアック デヤドラは、むかしのあなたの飼犬のいるところに、おいでなされます……ルウマックが、沈みもせぬ
虧
(
か
)
けもせぬ月に吠えておるところに。
ウスナの家
(新字新仮名)
/
フィオナ・マクラウド
(著)
瞳を定めて、日の少しく
虧
(
か
)
くるを見んと
力
(
つと
)
むる人は、見んとてかへつて見る能はざるにいたる 一一八—一二〇
神曲:03 天堂
(旧字旧仮名)
/
アリギエリ・ダンテ
(著)
とにかくそこに俳句というような花鳥風月を詠う詩を生み出すべき原因が
虧
(
か
)
けているように思われました。
俳句への道
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
その右には、
判官
(
はんがん
)
が一体、これは、誰に
悪戯
(
いたずら
)
をされたのだか、首がない。左には、小鬼が一体、緑面朱髪で、
猙獰
(
そうどう
)
な顔をしているが、これも
生憎
(
あいにく
)
、鼻が
虧
(
か
)
けている。
仙人
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
功を一
簀
(
き
)
に
虧
(
か
)
くということがある。親父は堅人に相違ないが、僕と違って、円転滑脱の才が利かない。場合によっては、市※さんと同じように妙な理窟を言いだす。
勝ち運負け運
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
お
家
(
いえ
)
もいよ/\
御繁昌
(
ごはんじょう
)
でございましたが、
盈
(
み
)
つれば
虧
(
か
)
くる世のならい、奥様には
不図
(
ふと
)
した事が元となり、
遂
(
つい
)
に帰らぬ旅路に
赴
(
おもむ
)
かれましたところ、此の奥様のお
附
(
つき
)
の人に
怪談牡丹灯籠:04 怪談牡丹灯籠
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
別当はぎょろっとした目で、横に主人を見て、麦箱の中に抛り込んである、
縁
(
ふち
)
の
虧
(
か
)
けた
轆轤
(
ろくろ
)
細工の
飯鉢
(
めしばち
)
を取って見せる。石田は黙って背中を向けて、縁側のほうへ引き返した。
鶏
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
やさしい眼をぱちりぱちりと
瞬
(
またた
)
いて、今度は阿賀妻が聞き手にまわっているのである。
掌
(
てのひら
)
の中で、
虧
(
か
)
けた
茶呑
(
ちゃの
)
みの陶器をいつくしむように
撫
(
な
)
でまわし、微笑をもって
頷
(
うなず
)
いていた。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
水星が月と同じように
盈
(
み
)
ち
虧
(
か
)
けを示すこと、太陽に黒点のあることなどを見つけ出し、それらの事がらからコペルニクスの説の真であることをますます確信するようになりました。
ガリレオ・ガリレイ
(新字新仮名)
/
石原純
(著)
虧
(
か
)
けてはいたが、十五夜を過ぎたばかりの月は柔和な光をふんだんにふり
濺
(
そそ
)
いでいた。
蕎麦の花の頃
(新字新仮名)
/
李孝石
(著)
かるが故に、その詩、幽妙を
虧
(
か
)
き、人をして
宛然
(
さながら
)
自から創作する如き享楽無からしむ。それ物象を明示するは詩興四分の三を没却するものなり。読詩の妙は漸々遅々たる推度の裡に存す。
海潮音
(新字旧仮名)
/
上田敏
(著)
天道は
盈
(
みつ
)
るを
虧
(
か
)
きて謙に
益
(
ま
)
し、地道は盈るを変へて謙に
流
(
なが
)
し、鬼神は盈るを害して謙に
福
(
さいは
)
ひし、人道は盈るを悪みて謙を好む。謙は尊くして光り、
卑
(
いやし
)
くして
踰
(
こ
)
ゆべからず。君子の終りなり。
地山謙
(新字旧仮名)
/
片山広子
(著)
又九
仭
(
じん
)
の功名を、一
簣
(
き
)
に
虧
(
か
)
いてしまったのである。落胆するのは当然である。
南蛮秘話森右近丸
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
まして梅が香を桜の花に移し、柳の枝に咲かせるというような三方に充分なるごときはとうてい望まれぬことである。昔から天道は満つるを
虧
(
か
)
き、足らざるを補うというのはこの意味であろう。
自然界の虚偽
(新字新仮名)
/
丘浅次郎
(著)
そこの石だたみだけつねにしぐれた感じだった。——ことにはそこに、その榎の下に、いつも秋早くから焼栗の定見世の出ることが、
虧
(
か
)
けそめた月の、夜長夜寒のおもいを一層ふかからしめた。
雷門以北
(新字新仮名)
/
久保田万太郎
(著)
けれども、もう少しと云うところで今度も細君は助かってしまったのです。夫の心になってみれば、
九仞
(
きゅうじん
)
の功を
一簣
(
いっき
)
に
虧
(
か
)
いた、———とでも云うべきでしょう。そこで、夫は又工夫を
凝
(
こ
)
らしました。
途上
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
黒
硝子
(
ガラス
)
を用いるまでもなく三分ぐらい
虧
(
か
)
けた姿である。
日食記
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
盈
(
み
)
つるにか、
虧
(
か
)
くるにか。
春鳥集
(旧字旧仮名)
/
蒲原有明
(著)
婦
(
をんな
)
の徳をさへ
虧
(
か
)
かでこの
嬋娟
(
あでやか
)
に生れ得て、しかもこの富めるに
遇
(
あ
)
へる、天の
恵
(
めぐみ
)
と世の
幸
(
さち
)
とを
併
(
あは
)
せ
享
(
う
)
けて、残る
方
(
かた
)
無き果報のかくも
痛
(
いみじ
)
き人もあるものか。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
……
此
(
こ
)
の
月
(
つき
)
から、
桂
(
かつら
)
の
葉
(
は
)
がこぼれ/\、
石
(
いし
)
を
伐
(
き
)
るやうな
斧
(
をの
)
が
入
(
はひ
)
つて、もつと
虧
(
か
)
け、もつと
虧
(
か
)
けると、やがて
二十六夜
(
にじふろくや
)
の
月
(
つき
)
に
成
(
な
)
らう、……
二十日
(
はつか
)
ばかりの
月
(
つき
)
を
浅茅生
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
「それもそうだが、はじめに黒の一石をわが
有
(
ゆう
)
にしたそっちの石も、つまり見事な男ぶり……いやなに、石振りではないはずだぞ。
虧
(
か
)
けとる、ハッハッハ右が
欠
(
か
)
ける」
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
そこの石だたみだけつねにしぐれている感じだった。——ことにはそこに、その榎の下に、いつも秋早くから焼栗の定見世の出ることが、
虧
(
か
)
けそめた月の、夜長、夜寒のおもいを一層ふかからしめた。
浅草風土記
(新字新仮名)
/
久保田万太郎
(著)
そを見れば
壽
(
いのち
)
も
虧
(
か
)
けず
春鳥集
(旧字旧仮名)
/
蒲原有明
(著)
これ等の
少
(
すこし
)
く失へる者は喜び、彼等の多く失へる
輩
(
はい
)
は憂ひ、又
稀
(
まれ
)
には全く失はざりし人の楽めるも、皆内には
齷齪
(
あくそく
)
として、
盈
(
み
)
てるは
虧
(
か
)
けじ、虧けるは盈たんと
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
九仭
(
きゅうじん
)
の功を
一簣
(
いっき
)
に
虧
(
か
)
く。なあ、そのままずらかりゃ怪我あねえのに、凝っては思案に何とやら、与惣公と
化込
(
ばけこ
)
んで一、二日
日和見
(
ひよりみ
)
すべえとしゃれたのが破滅の因、のう勘、
匹夫
(
ひっぷ
)
の
浅智慧
(
あさぢえ
)
、はっはっは。
釘抜藤吉捕物覚書:04 槍祭夏の夜話
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
虧
漢検1級
部首:⾌
17画
“虧”を含む語句
盈虧
羽虧
虧處
半虧
皆虧
虧欠
虧隙
順了人情公道虧