色紙いろがみ)” の例文
そのそばへいって、屋台やたいにさしてあるいろいろな色紙いろがみつくられた小旗こばたかぜになびくのをたり、チャルメラのおとこうとおもいました。
子供の時分の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ここの師匠は成績の順序で色紙いろがみをかけるので、第一番のものは笹竹の頂上にひるがえっていて、それから順々に、下枝におりて来るのであった。
半七捕物帳:35 半七先生 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
すみべにながしてめた色紙いろがみ、またはあかあを色紙いろがみ短册たんざくかたちつて、あのあをたけあひだつたのは、子供心こどもごゝろにもやさしくおもはれるものです。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
中心ちうしんに一ぽん青竹あをだけてられて先端せんたんあをあかとのかさねた色紙いろがみつゝんである。周圍しうゐにはれも四ほん青竹あをだけてられてそれにはなはつてある。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
別に買った雛も無いから、細君が鶴子を相手に紙雛を折ったり、色紙いろがみの鶴、香箱こうばこ三方さんぼう四方しほうを折ったり、あらん限りの可愛いものを集めて、雛壇ひなだんかざった。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
聞けばミカレエムさいや謝肉祭のやうに人が皆仮装をして歩いたり、コンフエツチと云ふ色紙いろがみの細かく切つた物を投げ合つたりする事はこの日の祭にはないのである。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
その淋しい路ばたに、風車売かざぐるまうりの荷が一台、忘れられたように置いてあった。ちょうど風の強い曇天だったから、荷にした色紙いろがみの風車が、皆目まぐるしく廻っている。
妙な話 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
髪の長さはあこめたけに二三寸足りない程なのが、瞿麦なでしこ重ねの薄物の袙を着、濃いはかまをしどけなく引き上げて、問題の筥を香染めの布に包み、紅い色紙いろがみに絵を書いた扇でさし隠しながら出て来たので
少将滋幹の母 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
色紙いろがみ縮緬を掛けた高島田が、どうしたのか大分くずれていた。ほつれ毛が余りに多過ぎる程、前髪と両鬢りょうびんとから抜け出ていた。項垂うなだれているので顔はく分らないが、色の白さと云ったらなかった。
丹那山の怪 (新字新仮名) / 江見水蔭(著)
両手を拡げて撫でゝ歩き度いような馴染の両側の店の建築の列は、二階三階は襲いかゝるよう道へ乗り出していても、季節の装飾で和められ、色紙いろがみで造った葉牡丹のように爽かに軽く眺められます。
生々流転 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
二郎じろうは、自分じぶんつくえのひきだしのなかに、色紙いろがみと、はさみとをっていました。かれは、それをしてきて、びっこのあおうまいたのでした。
びっこのお馬 (新字新仮名) / 小川未明(著)
五色ごしきにいろどられた色紙いろがみ短尺たんざくが夜風にゆるくながれているのは、いつもの七夕の夜と変らなかったが、今年は残暑が強いので、それは姿ばかりの秋であった。
半七捕物帳:35 半七先生 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
かごへはひげのやうにだけてゝだけにはあかあを色紙いろがみきざんだはなかざつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
「おばあさん、つるをっておくれよ。」と、まごたちが、色紙いろがみって、おばあさんのところへやってきました。
千羽鶴 (新字新仮名) / 小川未明(著)
權六 たなばたの赤い色紙いろがみを引裂いて、そこらへ一度に吹き付けたら、斯うもあらうかと思はれまする。
番町皿屋敷 (新字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
たぶん激戦げきせんに、をやられたのでしょう。ともちゃんは、その兵隊へいたいさんのところへいって、自分じぶんほねをおって色紙いろがみつくった、千づるとかめのをあげました。
少女と老兵士 (新字新仮名) / 小川未明(著)
子供こども病室びょうしつまどからえる、あおそらには、きざんだ色紙いろがみをちらしたように、しろくもあかくもむらさきくもが、おもおもいの姿すがたで、うえになり、したになり、あそんでいるのを、子供こども
雲と子守歌 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「ここは、ろうそく、マッチ、かやりせんこう、色紙いろがみ、みんなたべられないものばかりだ。」と、ひとりごとをしてから、トテ、トテ、トー、トッテ、トッテ、ターと、くちでらっぱのまねをしました。
新しい町 (新字新仮名) / 小川未明(著)