脳髄のうずい)” の例文
旧字:腦髓
これすなわち僕の若返りの工夫くふうである。要するに脳髄のうずいのうちに折々大掃除おおそうじを行って、すすごみあくたえだ等をみな払うことをしたい。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
ものを思判する自分の脳髄のうずいが是非の識別をする力を失ってしまったのではないかと疑われるほどいつまでも考え込まずにいられなかった。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
私ははげしい戦慄せんりつに襲われました。そして三角形恐怖事件に関する今までのことごとくの事柄が浮び出て脳髄のうずいの中を馳けまわるように覚えました。
三角形の恐怖 (新字新仮名) / 海野十三(著)
我々の神はこの嘆きをあわれみ、雌の河童の脳髄のうずいを取り、雄の河童を造りました。我々の神はこの二匹の河童に『食えよ、交合せよ、旺盛おうせいに生きよ』
河童 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
くらくらと脳髄のうずいしびれたような感覚があったかと思うと、ぱったりその場に昏倒してしまった。それは、ものの二秒ともたたぬ間の出来事であった。
犠牲者 (新字新仮名) / 平林初之輔(著)
代助はゝる脳髄のうずいの異状を以て、かつてさけとがに帰した事はなかつた。彼は小供のときからさけに量を得た男であつた。いくらんでも、左程平常を離れなかつた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
人間もその通りで体格をくしたければ筋骨を養うような食物を与えなければならず、脳髄のうずいを発達させたければ脳の営養分となるべき食物を与えなければならん。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
彼のすばらしい脳髄のうずいに、まだまだとっておきの奥の手が、ちゃんと用意されていたのです。
少年探偵団 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
犠牲ぎせいだとか精神的せいしんてき教育けういくだとか能弁的のうべんてき社界しやかいうつたへながら自らは米国的べいこくてき安楽主義あんらくしゆぎるものなり、即ち義を見て為し得ざる卑怯者ひけうしやなり、即ち脳髄のうずい心臓しんざう性質せいしつことにするものなり
時事雑評二三 (新字旧仮名) / 内村鑑三(著)
そうなるとイヨイヨ気がくのが病気の特徴じゃが、そこで無理をしよると脳髄のうずいの血管がパンクするおそれがある。そうなったら万事休すじゃ。拙者もアンマリ飲みに来んようにしよう
爆弾太平記 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
眼尻にうつるというよりは、じかに脳髄のうずいに映ると言った方が適当である。
次郎物語:01 第一部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
人間は自分の一生のことを全部おもい出すとか、肉体は死んでも脳髄のうずいは数秒間生きていて劇烈げきれつな苦痛を味わっているとか、死んだこともない人間によって作られた伝説は、果して本当であろうか。
桜島 (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
脳髄のうずいや、視官しかん言語げんご自覚じかく天才てんさいなどは、ついにはみな土中どちゅうはいってしまって、やがて地殻ちかくとも冷却れいきゃくし、何百万年なんびゃくまんねんながあいだ地球ちきゅうと一しょ意味いみもなく、目的もくてきまわくようになるとなれば
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
かつてある学者のげんに男子の脳髄のうずい帰納的きのうてきなるも、女子は演繹的えんえきてきなりとあったが、女子は感情がまさっているから冷静に事物に接することがかたい。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
幸いにも、鉢金は射抜けなかったが、じいんと烈しい金属的な衝撃が脳髄のうずいから鼻ばしらを通って、眼から火となって飛びだしたような気がした。
三国志:09 図南の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ああ、そうか。あの娘の頭蓋の中に、警官の脳髄のうずいをいれたのが、こっちの手落ちだったな。よほど頭のきく警官らしい」
超人間X号 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「君、この連中が死んだ後で、脳髄のうずいを出して見るとね、うす赤い皺の重なり合った上に、まるで卵の白味しろみのような物が、ほんの指先ほど、かかっているんだよ。」
路上 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
さきの人見廣介が、仮令巨万の富に目がくれたとは云え、あの数々の激情を耐え忍ぶことが出来たのは、恐らく、彼もまた凡ての犯罪人と同じ様に、一種の精神病者であって、脳髄のうずいのどこかに
パノラマ島綺譚 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
私はこういう矛盾な人間なのです。あるいは私の脳髄のうずいよりも、私の過去が私を圧迫する結果こんな矛盾な人間に私を変化させるのかも知れません。私はこの点においても充分私のを認めています。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
彼は友人とかたをたたいて談笑しつつ去ったが、おそらく彼の脳髄のうずいはただ試験の答案をもってのみたされて、母の苦心に考えを向ける余地はなかったろう。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
かれもおそらく、じぶんの小さい脳髄のうずいだけでは持ちきれないほどの推理こんらんになやんでいるのだろう。
怪星ガン (新字新仮名) / 海野十三(著)
三位卿は混惑してきた脳髄のうずいをいきなり村正むらまさかなんぞの鋭利な閃刃せんじんで、スッカリとぎ抜けられたような心地がして、踏みしめている足の裏から、かすかな戦慄さえおぼえた。
鳴門秘帖:05 剣山の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
湖面に美しい鳥肌をたてている有様、それらの寂しく、すがすがしい風物が、混濁こんだくし切った脳髄のうずいを洗い清め、一時は、あの様に私を苦しめた神経衰弱も、すっかり忘れてしまう程でありました。
湖畔亭事件 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
そこは、この船の脳髄のうずいのようなところであるから、大切なのである。船長は、なにか変ったことの起るたびに、なるべく早く船橋に来て見ることにしていたのである。
爆薬の花籠 (新字新仮名) / 海野十三(著)
楊志ようしは、みすみすそれを、眼に見ていた。しかも、どうにもならないのである。どぼんと、頭はからッぽの音がする。眼にはそれを知っても、視覚神経は、脳髄のうずいまでも届いてゆかない。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
さて、わしは、金属材料きんぞくざいりょうではなく、人工細胞じんこうさいぼうを使って、電気臓器を作りあげた。これは脳髄のうずいだ。
超人間X号 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「そういう病気は、今次の戦争において、極めて例が多いのですよ。今拝見はいけんしましたところによると、やはり、爆弾の小破片が、脳髄のうずいの一部へ喰い込んでいるようですな」
英本土上陸戦の前夜 (新字新仮名) / 海野十三(著)
そしてぼくの脳髄のうずいだけを、このサルのからだに移して、あとでまた、役に立てようとしたんだよ
超人間X号 (新字新仮名) / 海野十三(著)
そこでこの標本をごらんになればわかるでしょうが、この動物たちは、自分が持って生まれた脳髄のうずいを持っていないのです。そうでしょう。みんな頭部を斬り取られています。
金属人間 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「カエルの脳髄のうずいを切りとって、それを他の動物にうつしうえることですか」
金属人間 (新字新仮名) / 海野十三(著)