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ろうひ
ふりがな文庫
“
老婢
(
ろうひ
)” の例文
家を出て女給にでもと相談をかけられたのを留めたのも
老婢
(
ろうひ
)
のまきであつたし、それかと言つて、家にゐて伯母夫婦の養女になり
蔦の門
(新字旧仮名)
/
岡本かの子
(著)
それから半ば椅子を回して、両手を膝の上に置き、わけなく楽しげな親しい顔を
老婢
(
ろうひ
)
の方へあげた。火が下からその顔を照らしていた。
レ・ミゼラブル:04 第一部 ファンテーヌ
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
家には
老婢
(
ろうひ
)
が一人遠く離れた勝手に寝ているばかりなので
人気
(
ひとけ
)
のない家の内は古寺の如く障子
襖
(
ふすま
)
や壁畳から
湧
(
わ
)
く湿気が
一際
(
ひときわ
)
鋭く鼻を
撲
(
う
)
つ。
雨瀟瀟
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
一日わが孤立の姿、黙視し兼ねてか、ひとりの
老婢
(
ろうひ
)
、わが肩に手を置き、へんな文句を教えて呉れた。曰く、見どころがあって、
稽古
(
けいこ
)
がきびしすぎ。
二十世紀旗手
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
それからまた、血のしたたる
汁気
(
しるけ
)
のある不思議な物がこしらえられる料理場もあり、ばかげた恐ろしい
噺
(
はなし
)
をしてくれる
老婢
(
ろうひ
)
もいた……。ついに晩となる。
ジャン・クリストフ:08 第六巻 アントアネット
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
▼ もっと見る
僕の家の裏には大きな
棗
(
なつめ
)
の木が五六本もあった。『坊っちゃん』に似ているって。あるいはそうかもしれんよ。『坊っちゃん』にお清という親切な
老婢
(
ろうひ
)
が出る。
僕の昔
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
ついて来た
老婢
(
ろうひ
)
が、なにかと
告口
(
つげぐち
)
をするのに、私は何も言わないので母に大層
折檻
(
せっかん
)
されたりした。
旧聞日本橋:15 流れた唾き
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
家の内には
己
(
おのれ
)
と
老婢
(
ろうひ
)
との
外
(
ほか
)
に、今客も在らざるに、女の泣く声、
詬
(
ののし
)
る声の聞ゆるは
甚
(
はなは
)
だ
謂無
(
いはれな
)
し、
我
(
われ
)
或
(
あるひ
)
は夢むるにあらずやと疑ひつつ、貫一は
枕
(
まくら
)
せる
頭
(
かしら
)
を
擡
(
もた
)
げて耳を澄せり。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
或時尋ねると、「
昨日
(
きのう
)
は突然差押えを喰って
茶呑茶碗
(
ちゃのみぢゃわん
)
まで押えられてしまった、」と眉山は一生忠実に仕えた
老婢
(
ろうひ
)
に向って、「オイ
阿婆
(
ばあや
)
、
何処
(
どっ
)
かで
急須
(
きゅうす
)
と茶碗を借りて
来
(
き
)
な、」
硯友社の勃興と道程:――尾崎紅葉――
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
まもなく、目的の糸屋をみつけましたものでしたから、主人の没後あとあとのことを取りしきっている召し使いの
老婢
(
ろうひ
)
について、右門は八方から聞かれるだけのことを聞きました。
右門捕物帖:05 笛の秘密
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
そんなものはございません、と
云
(
い
)
ったが、少し考えてから、
老婢
(
ろうひ
)
を
近処
(
きんじょ
)
の
知合
(
しりあい
)
の
大工
(
だいく
)
さんのところへ
遣
(
や
)
って、
巧
(
うま
)
く
祈
(
いの
)
り出して来た。
滝割
(
たきわり
)
の
片木
(
へぎ
)
で、杉の
佳
(
よ
)
い
香
(
か
)
が佳い色に
含
(
ふく
)
まれていた。
野道
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
おやしき内で見たという赤橋家の
老婢
(
ろうひ
)
の言をつかみ得たことだけでしかない。
私本太平記:08 新田帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
一月ばかり後に、玄機は僮僕に
暇
(
いとま
)
を
遣
(
や
)
って、
老婢
(
ろうひ
)
一人を使うことにした。
魚玄機
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
丑女
(
うしじょ
)
が死んだというしらせが来た。彼女は郷里の父の家に前後十五年近く勤めた
老婢
(
ろうひ
)
である。自分の高等学校在学中に初めて奉公に来て、当時から病弱であった母を助けて一家の庶務を処理した。
備忘録
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
六畳の方は
茶
(
ちゃ
)
の
間
(
ま
)
に当てたのである、転居した当時は、私の弟と
老婢
(
ろうひ
)
との三人であったが、間もなく、書生が三人ばかり来て、大分
賑
(
にぎや
)
かに
成
(
な
)
った、家の内は、
先
(
ま
)
ずこんな風だが、庭は
前
(
ぜん
)
云った様に
怪物屋敷
(新字新仮名)
/
柳川春葉
(著)
わしが
老婢
(
ろうひ
)
お豊と妙な問答をした場所だ。
白髪鬼
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
老婢
(
ろうひ
)
は表へ飛出す目標を失つて、しよんぼり見えた。用もなく、
厨
(
くりや
)
の涼しい板の間にぺたんと
坐
(
すわ
)
つてゐるときでも急に顔を
皺
(
しわ
)
め
蔦の門
(新字旧仮名)
/
岡本かの子
(著)
激しく
咳
(
せ
)
きこんだ。
老婢
(
ろうひ
)
のザロメが駆けつけてきた。彼女は老人が死にかけてるのかと思った。彼はなお続けて、涙を流し
咳
(
せ
)
きこみ、そしてくり返していた。
ジャン・クリストフ:06 第四巻 反抗
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
劇
(
はげし
)
く物思ひて
寝
(
い
)
ねざりし夜の明方近く疲睡を催せし貫一は、新緑の雨に暗き七時の
閨
(
ねや
)
に
魘
(
おそは
)
るる夢の苦く
頻
(
しきり
)
に
呻
(
うめ
)
きしを、
老婢
(
ろうひ
)
に
喚
(
よば
)
れて、覚めたりと知りつつ
現
(
うつつ
)
ならず又睡りけるを
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
小女が
老婢
(
ろうひ
)
の後で言つた。皆、水面に集まつてゐた眼をあげた。古いきびらを着た宗右衛門が
母屋
(
おもや
)
へ通ふ庭の
小径
(
こみち
)
をゆつくりと歩いて来る。
老主の一時期
(新字旧仮名)
/
岡本かの子
(著)
表門の
扉
(
とびら
)
の音が凍った空気中に響いた。家の
鍵
(
かぎ
)
をもってる
老婢
(
ろうひ
)
が、最後の御用を勤めに来たのだった。
ジャン・クリストフ:08 第六巻 アントアネット
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
善く
歛
(
をさ
)
むれども、内には事足る
老婢
(
ろうひ
)
を
役
(
つか
)
ひて、
僅
(
わづか
)
に自炊ならざる
男世帯
(
をとこせたい
)
を張りて、なほも
奢
(
おご
)
らず、楽まず、心は
昔日
(
きのふ
)
の手代にして、趣は失意の書生の如く依然たる
変物
(
へんぶつ
)
の名を失はでゐたり。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
自然や草木に対してわり合ひに無関心の
老婢
(
ろうひ
)
のまきまでが美事な蔦に感心した。晴れてまだ晩春の
朧
(
ろう
)
たさが残つてゐる初夏の或る日のことである。
蔦の門
(新字旧仮名)
/
岡本かの子
(著)
一人の
老婢
(
ろうひ
)
にすべての世話をさしていたが、老婦は彼の不健康につけこんで、勝手なことばかり彼に
強
(
し
)
いていた。ほとんど同年輩の二、三の友が、時々訪ねてきてくれた。
ジャン・クリストフ:06 第四巻 反抗
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
お
雛妓
(
しゃく
)
のかの子であることが
直
(
す
)
ぐ思い出された。わたくしは起き上って、急いで玄関へ下りてみた。お雛妓のかの子は、わたくしを見ると
老婢
(
ろうひ
)
に
雛妓
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
寒い空気は身に
沁
(
し
)
むほどだった。町にはまだだれも起きていなかった。どの雨戸も
閉
(
し
)
まっていて、街路はひっそりしていた。彼らは黙っていた。
老婢
(
ろうひ
)
だけが口をきいていた。
ジャン・クリストフ:08 第六巻 アントアネット
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
雛妓は、それから
長袖
(
ながそで
)
を帯の前に挟み、
老婢
(
ろうひ
)
に手伝って
金盥
(
かなだらい
)
の水や
手拭
(
てぬぐい
)
を運んで来て、二階の架け出しの縁側で逸作と息子が顔を洗う間をまめまめしく世話を焼いた。
雛妓
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
ミンナは、母の子供のおりから家で働いている
老婢
(
ろうひ
)
フリーダの献身的な卑しい生涯が、いかにあわれなものであるか、突然気がついた。そして彼女のところへ駆けて行って首に抱きついた。
ジャン・クリストフ:04 第二巻 朝
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
老婢
(
ろうひ
)
が出て来て桟の多い
硝子戸
(
ガラスど
)
を開けた。
雛妓
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
“老婢”の意味
《名詞》
高齢の下女。
(出典:Wiktionary)
老
常用漢字
小4
部首:⽼
6画
婢
漢検1級
部首:⼥
11画
“老”で始まる語句
老
老人
老爺
老婆
老耄
老舗
老獪
老母
老女
老木