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ぐんしふ
其の
踊の
周圍には
漸く
村落の
見物が
聚つた。
混雜して
群集と
少し
離れて
村落の
俄商人が
筵を
敷いて
駄菓子や
梨や
甜瓜や
西瓜を
並べて
居る。
万ちやんの
方は
振分の
荷を
肩に、わらぢ
穿で、
雨のやうな
火の
粉の
中を
上野をさして
落ちて
行くと、
揉返す
群集が
先生のみか
世人を
驚かすも
安かるべしと、
門外に
躊躇してつひに
入らず、
道引かへて百
花園へと
赴きぬ、
新梅屋敷百
花園は梅の
盛りなり、
御大祭日なれば
群集も
其筈の
事ながら
解し難くうち
雜りたる
群集の
「どうせよ一つにや
成れぬ
身を、
別れたいとは
思へども……」と一
同の
耳に
響いた
時「
出た/\」と
靜まつて
居た
群集の
中から
聲が
發せられた。
泥濘と
言へば、まるで
沼で、
構内まで、どろ/\と
流込むで、
其処等一
面の
群集も
薄暗く
皆雨に
悄れて
居た。
「
此らまあ、どうしたもんだ」おつぎが
驚いて
叫んだ
時、
對手はおつぎの
櫛を
奪つて
混雜した
群集の
中へ
身を
沒した。
材木町の
陶器屋の
婦、
嬰兒を
懷に、
六歳になる
女兒の
手を
曳いて、
凄い
群集のなかを
逃れたが、
大川端へ
出て、うれしやと
吻と
呼吸をついて、
心づくと、
人ごみに
揉立てられたために
殆ど、
五分置き
六分置きに
搖返す
地震を
恐れ、また
火を
避け、はかなく
燒出された
人々などが、おもひおもひに、
急難、
危厄を
逃げのびた、
四谷見附そと、
新公園の
内外、
幾千萬の
群集は