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笑靨
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えくぼ
ふりがな文庫
“
笑靨
(
えくぼ
)” の例文
「あの、
笑靨
(
えくぼ
)
よりは、口の
端
(
はた
)
の処に、
竪
(
たて
)
にちょいとした
皺
(
しわ
)
が寄って、それが本当に可哀うございましたの」と、お金が云った。
心中
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
ニコと、小次郎は
笑靨
(
えくぼ
)
をこしらえてそれを眺めた。ずんと
上背丈
(
うわぜい
)
があるので、笑靨までが高慢に人を見下げて見えるのだった。
宮本武蔵:05 風の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「そう言えばどこかで見たことのある顔ですよ。ずっと遠い昔のようでもあり、ツイ二三日前のようでもあり、——ニッと
笑靨
(
えくぼ
)
の寄る所が」
銭形平次捕物控:084 お染の歎き
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
扉
(
ドア
)
が静に押し開けられると、一度見たことのある少年が、名刺受の銀の盆を、手にしながら、
笑靨
(
えくぼ
)
のある
可愛
(
かわい
)
い顔を現した。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
したらどうだ。……飛んだ深
笑靨
(
えくぼ
)
で、それがふるいつきてえほどいいのだと。面白れえじゃねえか、それから、どうした
顎十郎捕物帳:05 ねずみ
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
▼ もっと見る
そこへ朱が入ってきて理由を話した。細君はそれによって顔を映しなおして
精
(
くわ
)
しく見た。それは眉の長い
笑靨
(
えくぼ
)
のある絵に画いたような美人の顔であった。
陸判
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
その頬の
笑靨
(
えくぼ
)
は笑っていた。彼女は唇をきっと結んで、
放笑
(
ふきだ
)
すまいと一生懸命に我慢してるらしかった。
ジャン・クリストフ:06 第四巻 反抗
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
その手は指にふっくらと肉が盛り上り、
笑靨
(
えくぼ
)
の浮んだような、健やかな手になりたがっていた。
忘れがたみ
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
自分の
噺
(
はなし
)
に身が
入
(
い
)
って笑うのだと
我点
(
がてん
)
したと見えて赤い頬に
笑靨
(
えくぼ
)
をこしらえてケタケタ笑った。
倫敦消息
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
自分の
噺
(
はなし
)
に身が入って笑うのだと合点したと見えて赤い頬に
笑靨
(
えくぼ
)
を拵えてケタケタ笑った。
漱石氏と私
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
彼女は大分ご機嫌であった。顔の紐が解けていた。頬にこっぽりした
笑靨
(
えくぼ
)
が出来うっかり指で突こうものなら指先が
嵌
(
は
)
まり込んで抜けそうもなかった。彼女はひどく嬉しいのであった。
銅銭会事変
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
猿に餌をやるどれほど面白きか知らず。魚釣幾度か釣り損ねてようやく得たる一尾に
笑靨
(
えくぼ
)
傾くる少年帰ってオッカサンに何をはなすか。写真店の看板を見る兵隊さん。鯉に
麩
(
ふ
)
を投ぐる娘の子。
半日ある記
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
何
(
いず
)
れを優る美しさと云って善かろう、夏子は秀子より肥って居る、丸形である、秀子は楕円である、丸形の方には顎に
笑靨
(
えくぼ
)
がある、顎の笑靨は頬の笑靨より
尚
(
とうと
)
いと或る詩人が云ってあるけれど
幽霊塔
(新字新仮名)
/
黒岩涙香
(著)
扇子
(
おうぎ
)
を
翳
(
かざ
)
し、胸を反らして
熟
(
じっ
)
と仰いだ、美津の瞳は氷れるごとく、
瞬
(
またたさ
)
もせず
睜
(
みは
)
ると
斉
(
ひと
)
しく、
笑靨
(
えくぼ
)
に
颯
(
さっ
)
と影がさして、
爪立
(
つまだ
)
つ足が震えたと思うと、唇をゆがめた
皓歯
(
しらは
)
に、
莟
(
つぼみ
)
のような血を
噛
(
か
)
んだが
南地心中
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
珍らしく薄化粧をして居りますが、淋しく笑うと深々と
笑靨
(
えくぼ
)
の寄る頬を見た
丈
(
だ
)
けで、讃之助の記憶も幻想も
微塵
(
みじん
)
に打ち砕かれてしまいます。
葬送行進曲
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
焚火の炎に
面
(
おもて
)
を焼きながら、餅を頬張っている彼の顔には、何か急に独りでおかしくなったような
笑靨
(
えくぼ
)
が二つ浮いていた。
宮本武蔵:04 火の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
何よりも
先
(
ま
)
ず、その石竹色に
湿
(
うる
)
んでいる頬に、微笑の先駆として浮かんで来る、
笑靨
(
えくぼ
)
が現われた。それに続いて、
慎
(
つつ
)
ましい
脣
(
くちびる
)
、高くはないけれども穏やかな品のいゝ鼻。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
菊石
(
あばた
)
も
笑靨
(
えくぼ
)
で、どこに惚れこんだのか、こんなに成りさがっても、先生とか阿古十郎さんとか奉って、むずかしい事件がもちあがるとかならず智慧を借りに来る。きょうもその伝なので。
顎十郎捕物帳:22 小鰭の鮨
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
が、いかな事にも、心を鬼に、爪を
鷲
(
わし
)
に、狼の
牙
(
きば
)
を
噛鳴
(
かみな
)
らしても、森で
丑
(
うし
)
の時
参詣
(
まいり
)
なればまだしも、あらたかな拝殿で、
巫女
(
みこ
)
の美女を
虐殺
(
なぶりごろ
)
しにするようで、
笑靨
(
えくぼ
)
に指も触れないで、冷汗を流しました。
菎蒻本
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
唇の恰好を変えるのも、歯並を見違えるようにするのも、ほん当に少しばかりの手数です、
笑靨
(
えくぼ
)
さえ電気針で自由に作られるのですもの——
葬送行進曲
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
その白い
笑靨
(
えくぼ
)
へ、武蔵は思わずうなずきを見せてしまった。彼女は、相手の感情を受けとると、もう、安心したように、籠細工屋の内へかくれた。
宮本武蔵:02 地の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
と言いながら、
笑靨
(
えくぼ
)
の入った
嫋
(
しなや
)
かな手を俺の方へさし伸べた。
湖畔
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
白い歯が秋の陽に光って、頬に渦巻く
笑靨
(
えくぼ
)
も、皮膚を
透
(
す
)
く血の色も、少し赤味を帯びた毛も、恐ろしく魅力的です。
銭形平次捕物控:102 金蔵の行方
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
その髪の毛を、掻きよせてみると、どうだろう、
白蝋
(
はくろう
)
みたいな女の頬は、ニッと、
笑靨
(
えくぼ
)
が
泛
(
う
)
かんでいるのだ、いかにも、死を満足しているように——。
牢獄の花嫁
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
播州の一隅にすぎぬ田舎城といえ、年まだ三十という若い家老は、その健康と、
赭
(
あか
)
ら顔に
笑靨
(
えくぼ
)
を持って、ひとりこつこつと馬を姫路の方へ歩ませていた。
黒田如水
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
そう言って山北道子は、片頬に深々と
笑靨
(
えくぼ
)
を寄せて、淋しく微笑みました。
葬送行進曲
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
とはいえ、小がらに似げないふてぶてしさを、
抱
(
かか
)
えている一羽の軍鶏の
眼
(
まな
)
ざしとともに示して、すでに、あいての大人を、なめてかかっている
笑靨
(
えくぼ
)
である。
新・平家物語:02 ちげぐさの巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
指さすと、彼女は、不敵な、そしてまた、ひどく
蠱惑
(
こわく
)
な、あの
笑靨
(
えくぼ
)
を、
海月
(
くらげ
)
のように、頬に、チラつかせて
牢獄の花嫁
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
だが、牢へ曳かれてゆく
途々
(
みちみち
)
今日だけはおかしくって、
笑靨
(
えくぼ
)
を、俯向けて歩いた。——なるほど死ぬその日まで、人間には、面白いこともあるものだと感じた。
雲霧閻魔帳
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
と、立ちどまって、
紅
(
あか
)
く上気した顔に、にっこりと
笑靨
(
えくぼ
)
を泛かめて、神妙に、二本の腕をうしろへ廻した。
牢獄の花嫁
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
その
笑靨
(
えくぼ
)
へ、風が、雨が、びゅッと
打
(
ぶ
)
つけてくる。何を見ても、泥であった。何処を見ても、血であった。
新書太閤記:02 第二分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
母としてのつつましさと、妻としての落着きをたたえている顔に、明るい
笑靨
(
えくぼ
)
がうごいているだけだった。
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
寧子
(
ねね
)
は、
笑靨
(
えくぼ
)
へかけて、眼のうちの白珠をほうりこぼした。
欣
(
うれ
)
し
泣
(
な
)
きして、良人と共に家へ上がった。
新書太閤記:03 第三分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
そして、年ばえもそう大しては違わない、一つか二つほど上であろう。色が白くて、
笑靨
(
えくぼ
)
が深かった、笑うと、すこし
齲
(
むし
)
の
蝕
(
く
)
っている
糸切歯
(
やえば
)
が唇からこぼれて見える。
篝火の女
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
朱実と武蔵とがそうして囁いている様子を白い眼で見ながら、小次郎の頬へにたと
笑靨
(
えくぼ
)
が
泛
(
う
)
いた。
宮本武蔵:04 火の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
容易に開かない
唇
(
くち
)
へ、武蔵がこう少し
激
(
げき
)
しかかると吉野は、消していた
笑靨
(
えくぼ
)
をまたちらと見せ
宮本武蔵:05 風の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
義輝
(
よしてる
)
は、見つけない人間と、聞きつけない言葉とに接したようにその
笑靨
(
えくぼ
)
を、見まもっていた。
新書太閤記:02 第二分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
梅茶亭を出る前に、使いに
書
(
ふみ
)
を持たせて密告してやった奉行与力の者が、早くもここへ駈けつけて来たなと知って、御方の小憎い
笑靨
(
えくぼ
)
に、勝ち誇った色がありありと泛かぶ。
剣難女難
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
と、色の小白い、ちょっと
笑靨
(
えくぼ
)
のある男が、
頬冠
(
ほおかむ
)
りをとって、三尺帯の尻を下ろした。
梅颸の杖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
殊にぼくは体の小さいことと
笑靨
(
えくぼ
)
の深いのが顔の特徴であったらしくて、家庭の女客などからも、あいさつに出ると「ま、お可愛らしいお坊っちゃんですこと」などとよく云われて
忘れ残りの記:――四半自叙伝――
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
指で突いたように、頬にはふかい
笑靨
(
えくぼ
)
がある。歯が細かくて、味噌ッ歯の
質
(
たち
)
だった。
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
遣
(
や
)
るとはいわないが、当然、武蔵の意思をゆるしているように、
笑靨
(
えくぼ
)
でうなずく。
宮本武蔵:02 地の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
身なりに合った
具足
(
ぐそく
)
を着、丸っこい眼と
笑靨
(
えくぼ
)
を持った年少の
可憐
(
かれん
)
なる武者と。
黒田如水
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
顔じゅうを
笑靨
(
えくぼ
)
にして、近衛
信尹
(
のぶただ
)
はその薄あばたを、吉野太夫の顔に向け
宮本武蔵:05 風の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
朱実は、清十郎の沈んでいるのを見ると、くすりと、
笑靨
(
えくぼ
)
を下に向けた。
宮本武蔵:03 水の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
武蔵は、親しみを
笑靨
(
えくぼ
)
に見せて、その人々へ、会釈をし直した。
宮本武蔵:08 円明の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
その
笑靨
(
えくぼ
)
までが、知性の光に見える。秀吉は、ふいに
新書太閤記:05 第五分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
と、治郎吉は、
盗
(
ぬす
)
ッ
人
(
と
)
にありそうもない
笑靨
(
えくぼ
)
を見せて
治郎吉格子
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
自信がある——というように美少年は
笑靨
(
えくぼ
)
をうごかす。
宮本武蔵:04 火の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
お光さんの
笑靨
(
えくぼ
)
は、だんだん冷たく誇らしくなった。
かんかん虫は唄う
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
笑
常用漢字
小4
部首:⽵
10画
靨
漢検1級
部首:⾯
23画
“笑靨”で始まる語句
笑靨花