“笑靨:えくぼ” の例文
“笑靨:えくぼ”を含む作品の著者(上位)作品数
吉川英治19
野村胡堂2
久生十蘭2
泉鏡花2
田中貢太郎1
“笑靨:えくぼ”を含む作品のジャンル比率
文学 > 日本文学 > 小説 物語0.9%
(注)比率=対象の語句にふりがなが振られている作品数÷各ジャンルの合計の作品数
指さすと、彼女は、不敵な、そしてまた、ひどく蠱惑こわくな、あの笑靨えくぼを、海月くらげのように、頬に、チラつかせて、
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
寧子ねねは、笑靨えくぼへかけて、眼のうちの白珠をほうりこぼした。うれきして、良人と共に家へ上がった。
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
自分のはなしに身がって笑うのだと我点がてんしたと見えて赤い頬に笑靨えくぼをこしらえてケタケタ笑った。
倫敦消息 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
焚火の炎におもてを焼きながら、餅を頬張っている彼の顔には、何か急に独りでおかしくなったような笑靨えくぼが二つ浮いていた。
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
年のころ十三、四。身なりに合った具足ぐそくを着、丸っこい眼と笑靨えくぼを持った年少の可憐かれんなる武者と。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
色が白くて、笑靨えくぼが深かった、笑うと、すこしむしっている糸切歯やえばが唇からこぼれて見える。
篝火の女 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、立ちどまって、あかく上気した顔に、にっこりと笑靨えくぼを泛かめて、神妙に、二本の腕をうしろへ廻した。
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ニコと、小次郎は笑靨えくぼをこしらえてそれを眺めた。ずんと上背丈うわぜいがあるので、笑靨までが高慢に人を見下げて見えるのだった。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
何よりもず、その石竹色に湿うるんでいる頬に、微笑の先駆として浮かんで来る、笑靨えくぼが現われた。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
容易に開かないくちへ、武蔵がこう少しげきしかかると吉野は、消していた笑靨えくぼをまたちらと見せ、
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「そう言えばどこかで見たことのある顔ですよ。ずっと遠い昔のようでもあり、ツイ二三日前のようでもあり、——ニッと笑靨えくぼの寄る所が」
義輝よしてるは、見つけない人間と、聞きつけない言葉とに接したようにその笑靨えくぼを、見まもっていた。
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
頬にこっぽりした笑靨えくぼが出来うっかり指で突こうものなら指先がまり込んで抜けそうもなかった。
銅銭会事変 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「あの、笑靨えくぼよりは、口のはたの処に、たてにちょいとしたしわが寄って、それが本当に可哀うございましたの」と、お金が云った。
心中 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
自分のはなしに身が入って笑うのだと合点したと見えて赤い頬に笑靨えくぼを拵えてケタケタ笑った。
漱石氏と私 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
と、色の小白い、ちょっと笑靨えくぼのある男が、頬冠ほおかむりをとって、三尺帯の尻を下ろした。
梅颸の杖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
魚釣幾度か釣り損ねてようやく得たる一尾に笑靨えくぼ傾くる少年帰ってオッカサンに何をはなすか。
半日ある記 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
改めて、その小次郎へ武蔵が眼を向けた時である。朱実と武蔵とがそうして囁いている様子を白い眼で見ながら、小次郎の頬へにたと笑靨えくぼいた。
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
珍らしく薄化粧をして居りますが、淋しく笑うと深々と笑靨えくぼの寄る頬を見たけで、讃之助の記憶も幻想も微塵みじんに打ち砕かれてしまいます。
葬送行進曲 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
ふと、気がつくと、笑っているのは、本人だった。半坊主の顔に、笑靨えくぼいている。
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
播州の一隅にすぎぬ田舎城といえ、年まだ三十という若い家老は、その健康と、あから顔に笑靨えくぼを持って、ひとりこつこつと馬を姫路の方へ歩ませていた。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
るとはいわないが、当然、武蔵の意思をゆるしているように、笑靨えくぼでうなずく。
宮本武蔵:02 地の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
笑靨えくぼさっと影がさして、爪立つまだつ足が震えたと思うと、唇をゆがめた皓歯しらはに、つぼみのような血をんだが、烏帽子の紐の乱れかかって
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
菊石あばた笑靨えくぼで、どこに惚れこんだのか、こんなに成りさがっても、先生とか阿古十郎さんとか奉って、むずかしい事件がもちあがるとかならず智慧を借りに来る。
顎十郎捕物帳:22 小鰭の鮨 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
だが、牢へ曳かれてゆく途々みちみち今日だけはおかしくって、笑靨えくぼを、俯向けて歩いた。——なるほど死ぬその日まで、人間には、面白いこともあるものだと感じた。
雲霧閻魔帳 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
どこかで、名乗っている声がする。犬千代は、にことした。その笑靨えくぼへ、風が、雨が、びゅッとつけてくる。何を見ても、泥であった。何処を見ても、血であった。
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そう言って山北道子は、片頬に深々と笑靨えくぼを寄せて、淋しく微笑みました。
葬送行進曲 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
朱実は、清十郎の沈んでいるのを見ると、くすりと、笑靨えくぼを下に向けた。
宮本武蔵:03 水の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
梅茶亭を出る前に、使いにふみを持たせて密告してやった奉行与力の者が、早くもここへ駈けつけて来たなと知って、御方の小憎い笑靨えくぼに、勝ち誇った色がありありと泛かぶ。
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、治郎吉は、ぬすにありそうもない笑靨えくぼを見せて、
治郎吉格子 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それは眉の長い笑靨えくぼのある絵に画いたような美人の顔であった。
陸判 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
振向いて、お通が、念を押していう。その白い笑靨えくぼへ、武蔵は思わずうなずきを見せてしまった。彼女は、相手の感情を受けとると、もう、安心したように、籠細工屋の内へかくれた。
宮本武蔵:02 地の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
武蔵は、親しみを笑靨えくぼに見せて、その人々へ、会釈をし直した。
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その笑靨えくぼまでが、知性の光に見える。秀吉は、ふいに、
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
お光さんの笑靨えくぼは、だんだん冷たく誇らしくなった。
かんかん虫は唄う (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この前、来たときと同じように、小さい軽い靴音が、それに応じた。ドアが静に押し開けられると、一度見たことのある少年が、名刺受の銀の盆を、手にしながら、笑靨えくぼのある可愛かわいい顔を現した。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
揶揄やゆするような笑靨えくぼをつくる。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
頼朝は唇元に、笑靨えくぼをつくって、
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その頬の笑靨えくぼは笑っていた。
と、謙信は笑靨えくぼをつくる。
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
笑靨えくぼめつけて、
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
卓子の上に置いた二個の顔形を、余は電気の光に依りつくづくと見較べた、夏子の顔と秀子の顔、いずれを優る美しさと云って善かろう、夏子は秀子より肥って居る、丸形である、秀子は楕円である、丸形の方には顎に笑靨えくぼがある
幽霊塔 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
「だいぶ暇らしいの、結構だ。……どうした、そんなにかじかんでいねえで、なかんずくの大ものだという、いまのつづきをしたらどうだ。……飛んだ深笑靨えくぼで、それがふるいつきてえほどいいのだと。面白れえじゃねえか、それから、どうした」
顎十郎捕物帳:05 ねずみ (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
が、いかな事にも、心を鬼に、爪をわしに、狼のきば噛鳴かみならしても、森でうしの時参詣まいりなればまだしも、あらたかな拝殿で、巫女みこの美女を虐殺なぶりごろしにするようで、笑靨えくぼに指も触れないで、冷汗を流しました。
菎蒻本 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)