ごく)” の例文
「片言もってごくさだむべきものは、それゆうか」などという孔子の推奨すいしょうの辞までが、大袈裟おおげさ尾鰭おひれをつけてあまねく知れわたっていたのである。
弟子 (新字新仮名) / 中島敦(著)
かれよるになつてもあかりをもけず、よもすがらねむらず、いまにも自分じぶん捕縛ほばくされ、ごくつながれはせぬかとたゞ其計そればかりをおもなやんでゐるのであつた。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
ぶちやぶつて、油桶のならんでるところへぶつかつて來たんださうだからね。そこら一面に油と血が流れ出て、ほんとの油地ごくだなんていつてたよ
坂道 (旧字旧仮名) / 新美南吉(著)
人間的には、ごく囚人めしゅうど、野の乞食こつじきよりも、悲惨な末路をとげ給うた崇徳の君のおくつきに、今は、西行法師ならぬマックラウド氏が腰かけている。
随筆 新平家 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
某は心中ふか立腹りつぷくして、ほかの事にかこつけて雲飛を中傷ちゆうしやうつひとらへてごくとうじたそして人を以てひそか雲飛うんぴつまに、じつは石がほしいばかりといふ内意ないゝつたへさした。
石清虚 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
キチガ——ア——イ——ごくウ——……スカラカ、チャカポコチャカポコチャカポコチャカポコ……
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
むかし耶蘇教の弟子でしパウロは新しき宗教を奉じたとがをもって捕縛ほばくせられむちうたれ、ごくに投ぜられ種々の苦を受けたが、ついに国王の前に呼び出され、御前裁判を受けたとき
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
その折の事は世のよく知る所なれば、ここにはいわず。臼井六郎も今はごくを出でたり。
みちの記 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
やあ 天ごくへゆくのか 地ごくへゆくのか わからない
一度許されて家に戻っていた陵の一族はふたたびごくに収められ、今度は、陵の老母から妻・子・弟に至るまでことごとく殺された。
李陵 (新字新仮名) / 中島敦(著)
かれよるになってもあかりをもけず、よもすがらねむらず、いまにも自分じぶん捕縛ほばくされ、ごくつながれはせぬかとただそればかりをおもなやんでいるのであった。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
うているのは、ごくつながれていた黒田官兵衛であろう。おのれはそれをりに来た者か」
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
雲飛のつま早速さつそく相談さうだんし石をなにがし權官けんくわんけんじたところ、雲飛はもなくごくを出された。
石清虚 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
自分じぶんかせめられて、おな姿すがた泥濘ぬかるみなかかれて、ごくいれられはせぬかと、にはかおもはれて慄然ぞつとした。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
ごくからかへつて見ると石がない、雲飛うんぴは妻をのゝしち、いかりいかり、くるひにくるひ、つひ自殺じさつしようとして何度なんど妻子さいし發見はつけんされては自殺することも出來できず、懊惱あうなう煩悶はんもんして居ると、一夜
石清虚 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
「例の、樗門おうちもんの内にいる毛利時親とやらいう怪態けたいな老兵学者が、どうしても、お目にかかりたいと、ごくを叩いて、わめきおりまする。……あの吐雲斎とうんさいとも申す老いぼれでございますが」
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
自分じぶんもかくかせめられて、おな姿すがた泥濘ぬかるみなかかれて、ごくいれられはせぬかと、にわかおもわれて慄然ぞっとした。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
「再度のごくでござりまする」
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)