フラン)” の例文
猶太ユダヤ心理学派のり方だが、事実どうかぞえたって千フランには二法足らないんだから、やすいこた安いわけで、誰だって文句は言えまい。
取るに足らぬ女性の嫉妬しっとから、いささかのかすり傷を受けても、彼はうらみのやいばを受けたように得意になり、たかだか二万フランの借金にも、彼は
虚構の春 (新字新仮名) / 太宰治(著)
このごろは、金高のほうも相当莫大になりましてね、二十万フランばかりのところへ行っているんです。……人間ひともだいぶ殺しましたねえ。
犂氏の友情 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
なに、本さへ出来上つたら、請合うけあつて百五十回位は舞台にのぼせて見せるさ。一回のあがだかがざつと五千フランとして、百五十回で七十五万法。
一人の女が戸口に立つて、大きな花束を二十フランづゝで賣つてゐた。彼はそれをどうしようといふ當てもなくその一つを買つた。
フランいくらのつり銭を卓子に置くと、ミツシヱルと、寝台のロロと云ふ女は、まるで水鳥のやうにせはし気にパンを頬ばつた。
瑪瑙盤 (新字旧仮名) / 林芙美子(著)
たしかに十五万フランの金を会社から受取りました。しかしその金はある親密な政友の懐に入ってしまって、その政友の道具に使われたに過ぎないのでした。
水晶の栓 (新字新仮名) / モーリス・ルブラン(著)
会員は年俸六千フラン貨を支給せられ年々新進作家の著作を審査し傑作と認めたるものに対して賞金五千フランを贈るといふ。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
フランスにおいては一セチエの最高価格は六二フラン七八サンチイム(一六六二年)であり、最低価格は八フラン八九サンチイム(一七一八年)であった1)
幾多のナポレオン、維廉ヰルヘルム、シシルローヅをして勝手に其帝国を経営せしめよ。幾多のロスチャイルド、モルガンをして勝手に其ドルフランを掻き集めしめよ。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
ル・メルキウル・ド・フランスが初号をいちいだせし時も、もとより文壇不遇の士の黄白くわうはくゆたかなる筈なければ、やむ無く一株ひとかぶ六十フランの債券を同人に募りしかど
かつてその婚約時代に和蘭オランダ独逸ドイツ瑞西スイスを遊学してまわった事があるが、その帰朝土産に仏蘭西フランス巴里パリの犬の展覧会から、何万フランか出して買って来た世界第一
超人鬚野博士 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
そこでは黒百合のような貴婦人が、オペラバッグから紙幣束さつたばを出して、百フランの青札を買い、二十歳にもならないしとやかな娘が、赤札に自分の運命を賭けているのです。
バルザックの寝巻姿 (新字新仮名) / 吉行エイスケ(著)
明かす人があったら、百フランやってもいい! 誰かしっかりした、自殺なんかしない人で——
ロウモン街の自殺ホテル (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
部屋代が月百八十フラン。食料が二百五十法。その他洗濯代や下女の心づけを合せても、月五百法未満で済むような下宿は、学生町にもあまり多くはない。五百法は当時は八、九十円であった。
二人のセルヴィヤ人 (新字新仮名) / 辰野隆(著)
合計十ヶ年間に幾千フランの金がいる。これだけの金を銀行に預けて置けば、年五朱として何程の利殖になる。けれども都合好く卒業をして、文官試験にでも及第すれば、何程の俸給が取れる。
教育の目的 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
ワリーゼル・アルペン、及びベルネル・アルペン Walliser Alpen und Berner Alpen の三十七冊は仏文で出版されたものもある、各冊一フラン半であった。
スウィス日記 (新字新仮名) / 辻村伊助(著)
間もなく月収僅か八十フランで以てフェイドオ劇場といふのに招かれ、赤貧洗ふが如き生活をした。然しまあ未来があつたのだが、それも諦めて、父親のためには田舎へ引籠らなければならなかつた。
デボルド―ヷルモオル (新字旧仮名) / 中原中也(著)
その下にささやかなお燈明とうみょうがあったので、ネルロは気のない様子で、そのうすあかりに袋を近づけてしらべると、コゼツという名が書いてあり、中には六千フランという大金の切手が入っていました。
郵便局の事務員、月給四百フランのC嬢は、その弟の手を取りました。
カルナツクの夏の夕 (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
「久慈さんのは二十フランですが、あなたのは十法にしときますわ。」
旅愁 (新字新仮名) / 横光利一(著)
「ちょいと拝借」と、いって、千フラン札で二十五万法を入れたタヌの手提げサッカ・マンを持ったまま、ひょろりと戸外そとへ飛び出していってしまった。
どの卓子テーブル廻円盤ルウレットはたいがい最低十フランの規定だった。幾つもの台が整然と並んで、そのすべてが顔いろを変えた紳士淑女で一ぱいだった。
踊る地平線:09 Mrs.7 and Mr.23 (新字新仮名) / 谷譲次(著)
「最近仏国巴里パリー市場に於て二百万フランを以てグラン・ギニョール座専属パオロ・オデロイン夫人の手に落札せられしもの」「斯界第一人者江馬兆策先生翻案脚色」
二重心臓 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
ぬすみ出してから八日目に議院に夫を尋ねて参りまして、二十四時間以内に三万フランの金を出せ。出さなければあれを発表して社会から葬ってやると脅迫しました。
水晶の栓 (新字新仮名) / モーリス・ルブラン(著)
「この年(千八百八十二年)わが病的なる日本美術品蒐集しうしふの為につひやせし金額、実に三千フランに達したり。これわが収入の全部にして、懐中時計をあがなふべき四十フランの残余さへとどめず」
『だから、どうしたつて止す氣にやなれない。年によつては八百フラン取ることもあるし、千二百法取ることもあるが、漁から歸つて貰ふ金は、すつかり阿母おふくろに渡してしまふんです』
不幸なことに北海から税関をかすめて密輸入される鮭類と黒狐の肉は腹を満たすためには四十フランが必要なので、アンナ・ニコロはスラビナに食欲さえ感じて黙ってしまうのだが
恋の一杯売 (新字新仮名) / 吉行エイスケ(著)
此の河岸の古本屋で珍書をあさる人もすくなくないが、掘出物は滅多にないらしい。僕もしばしば、眼を皿のようにし、片端から漁って歩いたが、ニザールの仏文学史四巻を二十フランで買ったのが関の山だった。
愛書癖 (新字新仮名) / 辰野隆(著)
何かを、多分この停電を、怒ってるらしい若い女の冷淡な手が、私のフランを取り上げて、不思議な伊太利イタリー金のリラを抛り出した。
踊る地平線:10 長靴の春 (新字新仮名) / 谷譲次(著)
されたところを読んでみると「モンテカルロの大勝」という標題タイトルの下に、ウィンナムという英国の婦人が一夜のうちに二十万フラン勝ちあげ
黒い手帳 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
「おいお前だったな、さっき俺が百フラン小切手をやったのを返してくれ。この不忠者め!……」
特に、それは、彼等の父親が海峽で、或る漂流物を見つけたので、それを賣つて政府から分配せられた金が一萬フラン手にはいつたからであつた。その金で彼等の家は二階の建増しが出來た。
だが、又しても妾は、そこでみじめなジョージ・佐野の地獄に墜ちたような姿を見るのでした。彼は妾達には気がつかないようでした。佐野は最後の百フランをルーレット係に渡して白札を求めているのです。
バルザックの寝巻姿 (新字新仮名) / 吉行エイスケ(著)
大工なら大工、馬肉屋なら馬肉屋的登山法ってのが必ずあるはずよ。一等賞は三百フラン……ここへこうやって並べておきますよ。
町の非常な人気者で、四、五年まえ或る老婦人は遺産一千フランをそっくりしょうべん小僧の維持費に寄附して死んだ。両側とも土産みやげものの店。
踊る地平線:04 虹を渡る日 (新字新仮名) / 谷譲次(著)
ついにその男は千フランの紙幣三十枚を代議士の前に差し出して帰って行った。
水晶の栓 (新字新仮名) / モーリス・ルブラン(著)
賭球戯ルウレットというやつはいつになっても命とりですな。二十五万フラン勝って一度に二十五万法すっちまったら、誰れだってそんな気持になりますよ。
それが——と思うと、やにわにテエブルの角をまたいで、しばらく適度に苦心惨憺さんたんしたのち、その十フラン札を挟んで悠々と持って行ってしまった。
アルパカのタキシイドを着てひょっこり賭博場キャジノから出て来たのは、多分昨夜、コン吉から、三十フランばかり巻きあげたあの憎い玉廻しクルウピエであろう。
赤のところへ百フラン——十円——置いて赤が出たとしたところで、勝金はその一倍、すなわち百フランの儲けにしかならないが
踊る地平線:09 Mrs.7 and Mr.23 (新字新仮名) / 谷譲次(著)
さて、旬日ののち、嚢中のうちゅうわずかに五十フランを余すとき、悩みに満ちた浅い眠りを続けているコン吉を遽然きょぜんと揺り起すものあり。
首と手足の太い英吉利イギリス女なんかがそのまま故国くに従柿妹いとこへ郵送出来るように、一、二輪ずつ金粉煙草ゴウルド・フレイクスの空缶へはいって荷札までついていて、値段は五十フランです。
踊る地平線:09 Mrs.7 and Mr.23 (新字新仮名) / 谷譲次(著)
先週も三人組の独逸人に百万フラン近くやられて、三日の期限付でモナコ公国にモラトリアムが出たばかりのところなんです。
黒い手帳 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
じっさい、ことごとく満足した全隊員は、解散ぎわに例の饒舌家が五十フランのチップをはずんだのを皮切りにみんな真似して五十法ずつ親分へ献上して行ったくらいだ。
衣嚢ポケットにあるのをでたらめに掴み出して、使小僧の鼻の先に突き出した。手に何を掴んだのかまるで覚えがなかった。見ると、千フランの紙幣だった。
墓地展望亭 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
フランから三法出して、私たちもその見世物の全部を軒なみに覗いてあるく。
踊る地平線:04 虹を渡る日 (新字新仮名) / 谷譲次(著)
デュレキュがサン・ルイに居るときに難破したメジューズ号の金庫から公金九万フランをとりだすことを総督に依頼された。
フランス伯N・B (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
ここでは一個につき二フラン——瑞西スイツルフランだから、約一シルペンス——もすると、眼を丸くして話した善良な老婦人があったが、これも考えてみると、妻の誕生日贈物プレゼントに飛行機に飛行士をつけてやったり
踊る地平線:11 白い謝肉祭 (新字新仮名) / 谷譲次(著)
彼は妻君が読みあげるのを頬杖をついてきていたが、やがて無造作に「黒へ最高賭額マキシマム(一万二千フラン)!」といった。
黒い手帳 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)