栗色くりいろ)” の例文
金色の線でぼかされたみごとな栗色くりいろの髪、大理石でできてるような額、薔薇ばらの花弁でできてるようなほお、青白い赤味、目ざめるような白さ
彼女は、その錫箔をがしてみた。すると、錫箔の下に、栗色くりいろのチョコレートは無くて、白い紙でもう一重ひとえ、包んであった。
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
でっぷりとして、毛深くて、立派な毛皮にくるまって、栗色くりいろのからだには金色の斑点はんてんがあり、その眼は黒々としている。
博物誌 (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
トオストをかじりながら、栗色くりいろの髪の若い女が何やらもの静かに話しかける度毎たびごとに、荒あらしくそちらへ体をねじ曲げては無雑作に答えるかと思うと
旅の絵 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
にもかくにも、すらりとした、背の高い彼の女の総身は、栗色くりいろの髪の頂辺てっぺんから純白の絹の靴の先まで、うろこのようにきらきらと閃めく物がちりばめてある。
小僧の夢 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
もう今朝けさは上野へ行く電車賃もないので、与一は栗色くりいろの自分のくつをさげて例の朴のところへ売りに行った。
清貧の書 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
八月の一日には、この街道では栗色くりいろなめしのやりを立てて江戸方面から進んで来る新任の長崎奉行、幕府内でも有数の人材に数えらるる水野みずの筑後ちくごの一行を迎えた。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
メァリーの明るい栗色くりいろの髮は、分けて綺麗きれいまれてゐた。ダイアナの少し黒味くろみがゝつた髮は、大きくウェーヴされて、首筋を蔽つてゐる。時計は十時を打つた。
冷たくて白き水仙、ややぬくく黄なる寒菊。水仙のさをの葉は張り、寒菊の葉は半ば枯る。水仙は水仙の影、寒菊は寒菊の影、その壺も玻璃の影して、栗色くりいろの砂壁に在り。
観相の秋 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
これはすこぶ美貌びぼうの、った身なりをした栗色くりいろかみの男で、表情に富んだ鳶色とびいろの目と、細い小ぢんまりした白い鼻をもち、っぽけな口の上に、ちょびひげやしている。
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
二十けんにもあま巨大きよだい建物たてものは、るから毒々どく/\しい栗色くりいろのペンキでられ、まどは岩たたみ鐵格子てつがうしそれでもまぬとえて、内側うちがはにはほそい、これ鐵製てつせいあみ張詰はりつめてある。
虚弱 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
切付しふくろ打物うちもの栗色くりいろ網代あじろの輿物には陸尺十二人近習の侍ひ左右に五人づつ跡箱あとばこ二ツ是も同く黒ぬり金紋付むらさきの化粧紐けしやうひもを掛たりつゞいて簑箱みのばこ一ツ朱の爪折傘つまをりがさ天鵞絨びろうどの袋に入紫の化粧紐を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
二年前にこのヤティにったといっているが、それは半人半獣の怪物で、背丈は五呎六吋くらい、全身赤味がかった栗色くりいろの毛でおおわれていたが、顔だけは毛がなかったという話である。
戸口とぐちからだい一のものは、せてたかい、栗色くりいろひかひげの、始終しゞゆう泣腫なきはらしてゐる發狂はつきやう中風患者ちゆうぶくわんじやあたまさゝへてぢつすわつて、一つところみつめながら、晝夜ちうやかずかなしんで、あたま太息といきもら
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
栗色くりいろうさぎが草むらから出た。が、逃げようともしなかった。
娘煙術師 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
そなたのひたひ栗色くりいろかみしたに悲しい。
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
黒っぽい着物を着たふたりの女——栗色くりいろの髪をして綺麗きれいに化粧した二十七八の若い女と老眼鏡をかけたその母親らしいのが差し向いで食事をしていた。
旅の絵 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
彼は近衛このえにはいっていたことがあるし、それからまた人の言うところによると、非常なおめかしやで、美しい栗色くりいろの髪を頭のまわりにみごとに縮らしているそうであるし
掛たる長持二さを黒羽織の警固けいご八人長持ながもち預り役は熨斗目麻上下の侍ひ一人其跡は金葵きんあふひもんつきたる栗色くりいろの先箱には紫の化粧紐を掛雁行に并べ絹羽織の徒士かち十人づつ三人に并び黒天鵞絨へ金葵の紋を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
戸口とぐちからだい一のものは、せてたかい、栗色くりいろひかひげの、始終しじゅう泣腫なきはらしている発狂はっきょう中風患者ちゅうぶかんじゃあたまささえてじっとすわって、一つところみつめながら、昼夜ちゅうやかずかなしんで、あたま太息といきもら
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)