くね)” の例文
私がのっそりと突立つッたったすそへ、女の脊筋せすじまつわったようになって、右に左に、肩をくねると、居勝手いがってが悪く、白い指がちらちら乱れる。
二、三羽――十二、三羽 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
古書こしよ渋海しぶみ新浮海しぶみとも見えたり。此川まがくねり、広狭ひろせまい言ひつくすべからず。冬は一面に氷りとぢてその上に雪つもりたる所平地のごとし。
かばんを置いたる床間とこのまに、山百合やまゆりの花のいと大きなるをただ一輪棒挿ぼうざしけたるが、茎形くきなりくねり傾きて、あたかも此方こなたに向へるなり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
できるだけAの心を動かすようになまめかしくくねらしたもので、誰がもらってもうれしい顔をするに足るばかりか、今日の新聞を見たら、明日あしたここへ御着のはずだと出ていたので
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
なお大分走って松の大木の間を彼方此方縫いくねった末、僕達は漸く今夜の宿に着いた。
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
繞石ぜうせき君に逢はうとは思ひけなかつたので、を開けて這入はひつて来たのも、少時しばらく話したあとくねつた梯子段を寒い夜更よふけに降りてつたのも芝居の人物の出入りの様な気がしてならなかつた。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
よんどころなくほたほたしながら頭をでて遣るだけで不承ふしょうして、又歩き出す。と、ポチも忽ち身をくねらせて、横飛にヒョイと飛んで駈出すかと思うと、立止って、私のかおを看て滑稽おどけ眼色めつきをする。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
その時まで、雲助どもの乱暴を、打腹立うちはらだってねたるさま、この救いに対してさえ、我ままに甘えてくねるか、捗々はかばかしく口も利かずにいたのであった。
わか紫 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
何時いつも変な建物だと思つて見て通るばかりだと内藤が云ふと、以前まだ此辺このへんが森であつた時分にユウゴオが此処ここに住んで居た。あの家の前にくねつて立つて居る木はユウゴオが手づから植ゑたのだ。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
「やあ、目をさましたらそっと見べい。おらが、いろッて泣かしちゃ、仕事の邪魔するだから、先刻さっきから辛抱してただ。」と、かごとがましく身をくねる。
海異記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
あがぐち電信でんしんはしらたてに、かたくねつて、洋傘かうもりはしらすがつて、うなじをしなやかに、やはらかなたぼおとして、……おび模樣もやうさつく……羽織はおりこしたわめながら、せはしさうに、ぢつのぞいたが
艶書 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
しがみついたというていで、それで※々なよなよと力なさそうに背筋をくねって、独鈷入とっこいり博多はかた扱帯しごきが、一ツまつわって、ずるりと腰をすべった、わかい女は、帯だけ取ったが、明石あかししまを着たままなんです。
星女郎 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
と、脊筋をくねって、肩を入れる。
歌行灯 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)