)” の例文
鵞鳥がちようを。二の鵞鳥を。薄いひらめな土坡どばの上に、おすの方は高く首をげてい、めすはその雄に向って寄って行こうとするところです。
鵞鳥 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
多津吉は、たらいのごとき鉄鉢を片手に、片手を雲に印象いんぞうした、銅像の大きな顔の、でっぷりしたあご真下まっしたに、きっと瞳をげて言った。
前に立って、木村助九郎が、ついにこうかんげ、刀の柄を打ち鳴らすと、年上の庄田と出淵の二人は、まあ待てとそれを止めながら
宮本武蔵:03 水の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
病床で川上が言続けていた、フランス・パリーの博覧会——そここそ、マダム貞奴の名声を赫々かくかくげさせたものである。
マダム貞奴 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
それでも木戸口には十何人か頭をげて芝居の番附ばんづけを見ていた。外に一かたまりの人が、何にも見ずに立っていた。
村芝居 (新字新仮名) / 魯迅(著)
よって臣勇を奮いすすみ窺いて、確かに妖蟒ようもうを見る。頭、山岳の如く、目、江海に等し。首をぐればすなわち殿閣ひとしく呑み、腰を伸ばせば則ち楼垣尽くくつがえる。
蓮花公主 (新字新仮名) / 蒲 松齢(著)
しなやかな肩に質のこまかな縮緬ちりめんの着物と羽織を調和させ、細く長めにいた眉をややげて嬌然として居るX夫人——だが、葉子はX夫人のつい先日迄を知って居た。
鶴は病みき (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
彼は声をげてせまれり。されども父は他を顧て何等の答をも与へざりければ、再び声をしづめて
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
扉をとざして鳩首きうしゆ密議する三個の人影を見る、目を閉ぢて沈黙する四十五六とも見えて和服せるは議長の浦和武平ぶへい、眉をげて咄々とつ/\のゝしる四十前後とおぼしき背広は幹事の松本常吉
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
女王はこの毀譽きよを心に介せざる如く、首をげて場を下りしに、紳士見送りて、我等はトロヤ人なりきとつぶやきぬ。(原語「フイムス、トロエス」は猶已矣やみなむと云はんが如し。)
女将の横に居るふとっちょの一番肉感的な女が、細長い眉をげて、薄い唇を飜した。
超人鬚野博士 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
わが嘆きわが悲しみよ、かうべをげよ。
夏は青い空に…… (新字旧仮名) / 中原中也(著)
十九か、二十歳はたちか、せいぜいそんな年頃の若党である。腕をまくって、右の肩をすこしげ、左の手に、泣いているうないがみの童子を抱きよせていた。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
更に麦酒ビイルまんを引きし蒲田は「血は大刀にしたたりてぬぐふにいとまあらざる」意気をげて
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
窓の前にて、美しく猛き若駒に首をげさせ、手を軍帽に加へて我に禮を施し、振り返りつゝ馳せ去りしは、法皇の禁軍このゑなる士官なりき。嗚呼、我はその顏を見識りたり。これわがベルナルドオなり。
きっと見た目の鋭さ。眉をげて
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
この距離では、弾はまだ届かないのであるが、武者声が、押太鼓と同じように、気勢をげる目的にまず撃つのである。
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
まゆげたる貫一、なぞ彼の心のうちに震ふものあらざらんや。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
その時医師せんせいは肩をげて
沼夫人 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
だが、その面影は今も失われず、「さいかちの木」の鴉とこことは朝晩にがやがやと物音たかい生活力をげていた。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
美人はまゆげて
義血侠血 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
と、まなじりをげて、榊原康政を目がけて、近づきかけたが、康政の士、永井蔵人ながいくらんどがさえぎって槍をあわせ
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
こう理解されて来た頃から、彼はただの子でなくなったのだ。同時に、父なる人の死に方をも痛切に知りたがった。そして遂に知り得た時、彼は、まなじりげて
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
夜に入ると陣の幕舎には酒瓶さけがめが持ちこまれ、勝軍かちいくさの気をげる心も手伝って、兵に、酒を汲ませながら
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「この分なら、董卓や帝の車駕に追いつくのも、手間ひまはかからぬぞ、殿軍の木ッ端どもを蹴ちらして追えや追えや」と、いよいよ意気をげていたのであった。
三国志:03 群星の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
又八は、踏みよろめいた足を、草履の緒へかけ直すと、尻込みする城太郎へ、物々しい肩をげて
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
序戦二度の大捷たいしょうに、蜀軍は大いに士気をげたばかりでなく、魏軍の豊かな装備や馬匹武具などの戦利品も多くた。けれど、司馬懿の軍は、それきり容易にうごかなかった。
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、肩をげ、つばをとばし、ひじを突っ張って、小松の生えている砂地にまるく坐っていた。
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
で孫権はいよいよ一国対一国の大勝負を決意し、群臣にこれをはかったが、閣議は粛然と無言の緊張を持つのみで、たれひとり自らこの一戦に当らんと意気をげる者もなかった。
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
後はまた、誇りに誇った南光坊が、いよいよ肩をげて立っている姿しかなかった。
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、十兵衛の血相は、戦わないうちからすでに、白面の夜叉やしゃかのように眉を
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「そうだとも、おれたちこそ、今の民衆の唯一な希望の対象にあるのだ。あんなものは、無視して、俺たちはただ、新しい民衆の希望の地を開拓してゆけばいい」と一方も、まゆげた。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、彼の籠手こてをつかみ、身をもって、彼の行くてに立ちふさがって、ここで稲葉山の寄手をうけて、斬り死しようとまなじりげて戦っていた十兵衛を、無理無体に、焦土から引きもどして来た。
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼のみはそう言って、独りで気概をげていたが、豆菊は垣の外でほろほろと泣いているのだった。——寒そうに、そして、世の中の何もかも、すべてがこごえ切って、すべてが真っ暗のように。
かんかん虫は唄う (新字新仮名) / 吉川英治(著)
伝八郎は、思うともなく思いふけっていた眉を、その声にはっとげて
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
やるからには生命をまとにやろうと、野の精猛せいもうはみな眉をげていう
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
六郎左衛門は、急に肩をげ、使の二人を低く見て云った。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
主税は、父の倍もある頑丈がんじょうな肩の肉を、思わずげて
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、東儀はぴりっと眉をげて立ち止まった——
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
八十三郎は観念したように、ちらと眉をげて
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、首を振って右の肩をすこし
宮本武蔵:03 水の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
すると、日吉は、肩を少しげて
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、まなじりをげていう。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
藤吉郎は、語気をげて
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、語音をげて云った。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、少し眉をげていう。
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、大いに士気をげた。
三国志:09 図南の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
牛若は肩をげている。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、肩をげて叫んだ。
宮本武蔵:03 水の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
まなじりげた。
三国志:09 図南の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)