旋風せんぷう)” の例文
ザザーッと山砂をつつんだ旋風せんぷうが、たえず暗澹あんたんと吹きめぐっている風穴かざあなのなかでは、一しゅんのまも目をいていられないのだ。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
だが朝来ちょうらいの天候は不穏ふおんをつげ、黒雲が矢のようにとび、旋風せんぷうが林をたわめてものすごいうなりを伝える。と見るまに大粒おおつぶの雨が落ちてきた。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
稜々かど/″\から發散する火焔は車輪のぐるりに卷きついてゐる。「五角」は無上の速力にて囘轉し、宇宙のはてまでも、燃立つ大氣の旋風せんぷうを傳へる。
さしあげた腕 (旧字旧仮名) / レミ・ドゥ・グルモン(著)
次郎は感激と失望の旋風せんぷうの中に、やっと身をささえているだけだった。あふれて来る涙が膝の上につっぱった腕をすべって、まだらに縁板をぬらした。
次郎物語:04 第四部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
リード夫人はむしろふとつた女だつたが、この思ひがけない大膽な宣言を聞くと、彼女は素早く階段を駈け上つて、旋風せんぷうのやうに、私を子供部屋につれこんだ。
眞に一陣の旋風せんぷうの如く、自身番の中へ飛び込んで來たのは二十一、二の眼のさめるやうな美しい女でした。
明暦大火めいれきたいかさい濱町河岸はまちようがし本願寺境内ほんがんじけいだいおいて、また關東大地震かんとうだいぢしん東京大火災とうきようだいかさいさい本所ほんじよ被服廠跡ひふくしようあとおいて、旋風せんぷうのために、死人しにん集團しゆうだん出來できたことはよくられた悲慘事ひさんじであつた。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
あかふねって、くもあいだや、なみあいだけてから、おそろしい旋風せんぷうに、からだをまかせて二日二晩ふつかふたばんながたびをつづけてから、ようやく、下界げかいうみうえしずかに、りることも、その一つであれば、また
海からきた使い (新字新仮名) / 小川未明(著)
ところが、嵐は、叫びと旋風せんぷうに乗って、そとから、家の中へ侵入する。
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
かしこ、旋風せんぷうの怒をなして渦卷くところ
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
轟々ごうごうと人畜の殺戮さつりくに空も鳴り大地もいている死の旋風せんぷうの中で、ここの主従だけは、ひっそりと、嗚咽おえつのうちの親と嬰児あかごのようになっていた。
大谷刑部 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
旋風せんぷうにあおられたたこは、つりかごを前後左右にかたむけゆりあげて、黒闇々こくあんあんのなかを飛んでゆく。はげしい動揺どうようのために富士男は眼のくらむのをおぼえた。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
彼の動かない眼にひきかえ、彼の頭の中には、たえがたい羞恥しゅうちの感情が旋風せんぷうのように渦巻いていた。
次郎物語:03 第三部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
ガラツ八の八五郎は、旋風せんぷうのやうに飛込んで來ると、いきなり自分の鼻を撫で上げるのでした。
大火災だいかさいのときは、地震ぢしんとは無關係むかんけいに、旋風せんぷうおこちである。火先ひさきなかくぼ正面しようめんもつ前進ぜんしんするとき、そのまがかどには塵旋風ちりせんぷうづくべきものがおこる。また川筋かはすぢせつした廣場ひろば移動旋風いどうせんぷうによつておそはれやすい。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
このとき秀家はまだ十歳で、現下の旋風せんぷうにも父の死にもほとんど何らの感傷もうけていないふうだった。秀吉は可愛らしくてたまらないように
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ガラッ八の八五郎は、旋風せんぷうのように飛込んで来ると、いきなり自分の鼻をで上げるのでした。
火災かさい避難ひなんおいては旋風せんぷうおそはれさうな場處ばしよけること。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
この二人の運命が刹那せつなに、火! という不安な旋風せんぷうに結びついて万吉のびんな神経へ、不吉な予覚よかくを与えた。
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
からみ合ひ、いがみ合ひ乍ら、旋風せんぷうのやうに路地を入つて來た二人の若い男、錢形平次が出かけようとする出會ひ頭、開けた格子の中へ二匹の猛獸のやうに飛び込んだのです。
おや? あんな大言たいげんいておいて、どこへもぐりこんでゆくのかと、こなたに三人がながめていると、折こそあれ、金明泉きんめいせんのほとりから、一陣の旋風せんぷうをおこして
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
小さい旋風せんぷうが空中に真空の場所を作るために、そこへ行合わせた人の皮肉を破って、体内の空気が出ることがあるのを、昔は鎌鼬または神逢太刀かみあいたちと言って恐れたものです。
だが、それから幾刻いくときも経たないうちに、毛利方の陣営は旋風せんぷうのごとき驚きと茫然ぼうぜんたる自失に見舞われていた。——初めて信長の死をその日の夕方に知ったのであった。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しづまり返つた隅田川の夜氣を亂して、船の中には、一しゆん氣違ひ染みた旋風せんぷうが捲き起つたのです。
からみ合い、いがみ合いながら、旋風せんぷうのように路地を入って来た二人の若い男、銭形平次が出かけようとする出会い頭、開けた格子の中へ二匹の猛獣のように飛び込んだのです。
猛鷲もうしゅうかかるように、宗厳はいきなり跳びついた。理念をふみ超えた一瞬の捨身である。床板が踏み抜けるように鳴った。ふたつの体のうごきが一うず旋風せんぷうとも見えたせつな
剣の四君子:02 柳生石舟斎 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
龍耳りゅうじ老人の短銃にうたれて、弦之丞が一弾に絶命したものと早合点したのは、旋風せんぷうのような危機に吹かれて、何より先にお綱の心そのものが、平調を欠いてしまった証拠だった。
鳴門秘帖:05 剣山の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ガラッ八が旋風せんぷうのように飛込んで来たのは、七草粥ななくさがゆがすんだあくる日でした。
ガラツ八が旋風せんぷうのやうに飛込んで來たのは、七草粥なゝくさがゆがすんだ翌る日でした。
すさまじい一旋風せんぷうを巻いてたたかったが、紀伊守之助のほうは、当然、その地の理からも、不利をまぬかれず、彦兵衛の槍の下に、ことし二十六歳の若い命を、あえなく、あけのよろいにつつんで
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
久しく姿を見せなかったガラッ八が、旋風せんぷうを起して飛び込んで来ました。
あなたでは民部みんぶの苦戦、ここでは伊那丸と咲耶子が、腹背ふくはいの敵にはさみ討ちとされている。二ヵ所の狂瀾きょうらんはすさまじい旋風せんぷうのごとく、たばしる血汐ちしお丁々ちょうちょうときらめくやいば、目もけられない修羅しゅらの血戦。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
久しく姿を見せなかつたガラツ八が、旋風せんぷうを起して飛び込んで來ました。
彼の兵馬は、一定の方向を持たない旋風せんぷうのようなものだ。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
大變ツ——の旋風せんぷうを吹かせて飛込む元氣もなかつたのでせう。
ちょへい旋風せんぷう
大変の旋風せんぷうが飛込んだのは、戌刻いつつ半(九時)少し廻った頃。
大變の旋風せんぷうが飛込んだのは、戌刻半いつゝはん(九時)少し廻つた頃。
八五郎は「大変」の旋風せんぷうを起して飛び込みました。
八五郎は『大變』の旋風せんぷうを起して飛び込みました。