旅行たび)” の例文
それは今、私がこの邸を退きますと、もう隅々まで家中があかるくなる。明さんも思い直して、またここを出て旅行たび立ちをなさいます。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
たれでも左樣さうだが、戰爭いくさ首途かどでとか、旅行たび首途かどですこしでもへんことがあれば、多少たせうけずにはられぬのである。
吹くに任かせた暢気のんきな身の上。流れ渡った世界の旅行たびじゃ。北京ペキン、ハルピン、ペテルスブルグじゃ。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
スーッと立った男はひげの生えて居る、眼のギョロリとした、鼻の高い、年紀としごろ三十四五にも成りましょうか、旅行たび洋服で、一方の手には蝙蝠傘とステッキとを一緒に持ち
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
それをききたいばかりに、わざわざここまで旅行たびをしたおじょうさまの失望しつぼうおもったからです。
谷にうたう女 (新字新仮名) / 小川未明(著)
長田おさだ旅行たびに出ていなかったが、上田や村田と一しきり話をして、自家うちに戻った。お宮が昨夜ゆうべあなたの処へ遊びに行くと言った。それには自家を変らねばならぬ。変るにはかねが入る。
別れたる妻に送る手紙 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
そう云われたッてはらも立てないような年になって、こんなことを云い出しちゃあ可笑いが、難儀なんぎをした旅行たびはなしと同じことで、今のことじゃあ無いからなにもかも笑ってむというものだ。
太郎坊 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
博士はかせ旅行たびをしたあとに、交際つきあひぎらひで、籠勝こもりがちな、夫人ふじん留守るすしたいへは、まだよひも、實際じつさいつたなか所在ありかるゝ山家やまがごとき、窓明まどあかり
印度更紗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
あのあと、何うも不自由で仕方が無い。夏は何うせ東京には居られないのだから、旅行たびをするまでと、言って、また後を追うて此家に暫時しばらく一緒になって、それから、七月の十八日であった。
別れたる妻に送る手紙 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
博士はかせ旅行たびをしたあとに、交際つきあいぎらひで、籠勝こもりがちな、の夫人が留守した家は、まだよいも、実際つたの中に所在ありかるゝ山家やまがの如き、窓明まどあかり
印度更紗 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
「要らねえよ。——うちこんなもの。……旦那さん。——旅行たびさきで無駄な銭を遣わねえがいいだ。そして……」
みさごの鮨 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ぱっと風説うわさたちますため、病人は心が引立ひったち、気の狂ったのも安心して治りますが、のがれられぬ因縁で、その令室おくがたの夫というが、旅行たびさきの海から帰って
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
旅行たびはどうしてしたでしょう。鹿落の方角です、察しられますわ。霜月でした——夜汽車はすいていますし、突伏つっぷしてでもいれば、誰にも顔は見られませんの。
古狢 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
衣絵きぬゑさんが此辺このあたり旅行たびしたときくるまふのを、はなし次手つひでいたのが——寸分すんぶんちがはぬ的切てつきりこれだ……
銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
海岸線かいがんせんまはりの急行列車きふかうれつしや古間木こまきへ(えきへは十和田わだ繁昌はんじやうのために今年ことしから急行きふかうがはじめて停車ていしやするのださうで。)——いたとき旅行たび経験けいけんすくな内気うちきものゝあはれさは
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
何も穿鑿せんさくをするのではないけれど、実は日数の少ないのに、汽車の遊びをむさぼった旅行たびで、行途ゆきは上野から高崎、妙義山を見つつ、横川、くまたいら、浅間を眺め、軽井沢、追分をすぎ
眉かくしの霊 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
道中だうちう——旅行たび憂慮きづかひは、むかしからみづがはりだとふ。……それを、ひとくと可笑おかしいほどにするのであるから、行先々ゆくさき/″\停車場ステーシヨンる、おちやいてる、とつても安心あんしんしない。
銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
私は旅行たびをしたかいがあると思った。
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)