いきどほり)” の例文
これがいつまでわが目の樂なりしやといふ事、大いなるいきどほりまこと原因もと、またわが用ゐわが作れる言葉の事即ち是なり 一一二—一一四
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
自分はいきどほりに堪へない心持で、その車力を憎み、同時に女の身の上を氣づかつたが、子供心にも女の身は無事だつたと認めて、多少は安心した。
貝殻追放:016 女人崇拝 (旧字旧仮名) / 水上滝太郎(著)
その面持おもゝちすこしも常に殊ならず。われは心の底に、言ふべからざるはぢいきどほりとを覺えて、口に一語をも出すこと能はざりき。
瑠璃子が、入つて来れば、此の押へ切れないいきどほりを、彼女に対しても、洩さう。白痴の子を弄んでゐるやうな、彼女の不謹慎を思ひ切り責めてやらう。
真珠夫人 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
もし単に故郷にれられぬといふばかりならば、根本の父のやうに、又は塩町の湯屋のやうに、いきどほりを発して他郷に出て、それで名誉を恢復くわいふくしたためし幾許いくらもある。
重右衛門の最後 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
吾はその悔の為にはかのいきどほりを忘るべきか、任他さはれ吾恋のむかしかへりて再びまつたかるを得るにあらず、彼の悔は彼の悔のみ、吾が失意の恨は終に吾が失意の恨なるのみ。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
臺所だいどころ豪傑儕がうけつばら座敷方ざしきがた僭上せんじやう榮耀榮華えいえうえいぐわいきどほりはつし、しやて、緋縮緬小褄ひぢりめんこづままへ奪取ばひとれとて、竈將軍かまどしやうぐん押取おつとつた柄杓ひしやく采配さいはい火吹竹ひふきだけかひいて、鍋釜なべかま鎧武者よろひむしや
霰ふる (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
あるひえらんでこれみ、ときにしてしかのちこといだし、くに(五六)こみちらず、(五七)公正こうせいあらざればいきどほりはつせず、しか禍災くわさいものげてかぞからざるなりはなはまどふ。
男は殊更に鷹揚な態度を示して、かうは云ふものの、深いいきどほりを包むに苦しさうな顔付をすることが常であつた。一思ひとおもひにこんなやくざ女を蹴とばしてしまはうといきりたつこともあつた。
瘢痕 (新字旧仮名) / 平出修(著)
今はそれをも諦めて、泥濘の道を歩くにもいきどほりの起るやうなことはなくなつた。
接吻 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
〔譯〕いきどほりを發して食をわする、志氣しきかくの如し。たのしんで以てうれひを忘る、心體しんたい是の如し。らうの將に至らんとするを知らず、めいを知り天を樂しむものかくの如し。聖人は人と同じからず、又人とことならず。
予はこの時に至つて、始めて本多子爵と明子とが、既に許嫁いひなづけの約ありしにも関らず、かの、満村恭平が黄金の威に圧せられて、遂に破約のむ無きに至りしを知りぬ。予が心、あにいきどほりを加へざらんや。
開化の殺人 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
失せよ、深慮の人々を分離せしむるいきどほり
イーリアス:03 イーリアス (旧字旧仮名) / ホーマー(著)
すばらしい、いきどほりに似た
新頌 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
さう云ひながら、荘田は得々として、瑠璃子の手紙を直也に突き付けたとき、彼の心は火のやうないきどほりと、恋人を奪はれた墨のやうなうらみとで、狂つてしまつた。
真珠夫人 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
されどもその一旦のいきどほりは、これを斥けしが為に消ゆるにもあらずして、その必ず得べかりし物を失へるに似たる怏々おうおうは、吾心を食尽はみつくし、つひに吾身をたふすにあらざれば
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
われは羅馬に往くことを願はねど、例の恩誼に口を塞がれて、僅かに、老公のおほんいきどほりの氣遣はれてとのみ云ひしに、そはわれ等申し解くべしと答へて我に詞を繼がしめ給はず。
それが朝夕出入をして居る儀平とこの親父とつさあの仕業であつたと聞いた時は、驚きも怪みも一つになつて心頭からいきどほりほのほのやうにもえたつた。先刻さつきもお巡査さんの前に散々本人をきめつけた。
夜烏 (新字旧仮名) / 平出修(著)
この上尾貞七とふのは、根本三之助などと同じく、一時は非常に逆境に沈淪ちんりんして、村には殆ど身をく事が出来ぬ程につた事のある男で、それからいきどほりを発して、江戸へ出て、廿年の間に
重右衛門の最後 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
猛火の如く人間の胸に燃えたついきどほり
イーリアス:03 イーリアス (旧字旧仮名) / ホーマー(著)
その時なほもいきどほり解けもやらぬを
歌よ、ねがふは (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
夫人から、弄ばれたうらみいきどほりとに、燃えてゐた青年の心を、彼はいやが上に煽つた。
真珠夫人 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
わが嚴命を畏まば棄てよ汝のいきどほり
イーリアス:03 イーリアス (旧字旧仮名) / ホーマー(著)
遊佐はいきどほりを忍べる声音こわねにて
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)