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ゆうちょう
ふりがな文庫
“
悠長
(
ゆうちょう
)” の例文
お高は、何という
悠長
(
ゆうちょう
)
な人であろうと、まじめに応対するのが、
莫迦
(
ばか
)
々々しくなった。しかし、返事をしないわけにはゆかないので
巷説享保図絵
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
にわか雨でもきたように、あたりの商人たちも、ともどもあわてさわいだが、かの若者だけは、腰も立てずに
悠長
(
ゆうちょう
)
な顔をしていた。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
お絹の湯上りがあんまり
悠長
(
ゆうちょう
)
なのを気にして、二度までも湯殿へ来て見ましたけれど、そこにも姿を見ることができませんでしたから
大菩薩峠:11 駒井能登守の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
手温
(
てぬ
)
るい事だ。おれなら
即席
(
そくせき
)
に寄宿生をことごとく退校してしまう。こんな
悠長
(
ゆうちょう
)
な事をするから生徒が宿直員を馬鹿にするんだ。
坊っちゃん
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
田舎はただのんきで人々すこぶる
悠長
(
ゆうちょう
)
に生活しているようにばかり思っているらしいが、実際は都人士の想像しているようなものではない。
隣の嫁
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
▼ もっと見る
間伸びのした
悠長
(
ゆうちょう
)
な
囃
(
はや
)
しと一つに融けて聞えて来る中で、ついとろとろと好い心持に眠りこけては、又はっとして眼をさます。
蓼喰う虫
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
父親は早目にその日の
旅籠
(
はたご
)
へつくと、
伊勢
(
いせ
)
参宮でもした時のように
悠長
(
ゆうちょう
)
に構え込んで酒や
下物
(
さかな
)
を取って、ほしいままに飲んだり食ったりした。
足迹
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
「おらんだ人」と肩書きのある
紅毛碧眼
(
こうもうへきがん
)
の異国人が
蝙蝠傘
(
こうもりがさ
)
をさした日本の遊女と腕を組んで、
悠長
(
ゆうちょう
)
にそれを見物している。
青銅の基督:――一名南蛮鋳物師の死――
(新字新仮名)
/
長与善郎
(著)
場処
(
ばしょ
)
は大抵は耕地の附近に、石を土台にして
円
(
まる
)
い形に、稲の
穂先
(
ほさき
)
を内側にして積み上げて置く、きわめて簡易且つ
悠長
(
ゆうちょう
)
なる様式のものであるが
木綿以前の事
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
堅固で
悠長
(
ゆうちょう
)
で壮大で、真実で、華麗で、油絵の組織の完備する点で、また油絵具の性状が完全に生かされている点において、私は油絵具のなさるべき
油絵新技法
(新字新仮名)
/
小出楢重
(著)
空には今日も
浮雲
(
うきぐも
)
が
四抹
(
しまつ
)
、五抹。そして流行着のマネキンを乗せたロンドン
通
(
がよ
)
いの飛行機が
悠長
(
ゆうちょう
)
に飛んで行く。
巴里の秋
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
なんの戦国の戦争請け負い人が、そんな
悠長
(
ゆうちょう
)
な考えで、異国の神なんか拝むものか。きゃつら金儲けをしたかったからさ。そうだよ神様をダシに使ってな。
剣侠受難
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
非常に苦しい時分にはなかなか
悠長
(
ゆうちょう
)
な考えをして居る暇もない。幸いにある池の端でテントの四つある所へ指して着きました。例のごとく猛犬にお迎いをされたです。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
もしも此方の行くを待って居るということならばあまり増長した了見なれど、まさかにそのような高慢気も
出
(
いだ
)
すまじ、例ののっそりで
悠長
(
ゆうちょう
)
に構えて居るだけのことならんが
五重塔
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
「船長オ? 弔詞イ? ——」
嘲
(
あざ
)
けるように、「馬鹿! そんな
悠長
(
ゆうちょう
)
なことしてれるか」
蟹工船
(新字新仮名)
/
小林多喜二
(著)
なんて
悠長
(
ゆうちょう
)
な事を言うから困るよ。
北洋艦隊
(
ぺいやん
)
相手の
盲捉戯
(
めくらおにご
)
ももうわが輩はあきあきだ。
小説 不如帰
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
「そんな
悠長
(
ゆうちょう
)
なことはいっていられない。私たちはこれから焼こうというのだ。飛んだものが飛び込んで仕事の邪魔をして困るじゃないか。おい。そろそろ仕事に掛かろうじゃないか」
幕末維新懐古談:33 蠑螺堂百観音の成り行き
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
その中を長いキセルでぽかりぽかりと
悠長
(
ゆうちょう
)
な煙を吐きながら、変わり種の清正が美人の妓生とぬれ場をひとしきり演ずるというのですから、ずいぶんと人を食った清正というべきですが
右門捕物帖:01 南蛮幽霊
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
言葉を選んで、少しも急がず、控え目な正しい口のきき方をしていた。性急なアマリアには、彼が言い終えるのを待つだけの忍耐がなかった。皆の者が、彼の
悠長
(
ゆうちょう
)
さに怒鳴り声をたてた。
ジャン・クリストフ:05 第三巻 青年
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
昔は大門から一歩でも踏み出すことを「江戸へ行く」と云ったそうで、また仲の町を通行することが既に「道中」であったが、しかし大正の私たちはそんな
悠長
(
ゆうちょう
)
な真似はしていられなかった。
桜林
(新字新仮名)
/
小山清
(著)
こんな多忙な事務家にたいして、あたしの話し方はすこし
悠長
(
ゆうちょう
)
すぎたかも知れません。あたしが、まだ半分も話さぬうちに、さっきこの窓にさしかけていた夕陽が、向う側の建物に移っていました。
キャラコさん:08 月光曲
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
「昔はこれで戦ったんだから、戦争も
悠長
(
ゆうちょう
)
なものだったに違いない」
恐竜島
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
そしてだんだんと赤味を帯びながら
悠長
(
ゆうちょう
)
にたな引くのだった。
汽笛
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
恒川氏は、あまりに
悠長
(
ゆうちょう
)
な明智の態度に、腹立たしく叫んだ。
吸血鬼
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
なんと言っても、まだまだ世の中には
悠長
(
ゆうちょう
)
なところがあった。
夜明け前:04 第二部下
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
愁眉
(
しゅうび
)
をひらいて、人々は、上水の川尻へ眼をやった。
大曲
(
おおまがり
)
の方から、川端を、
悠長
(
ゆうちょう
)
に練ってくる一列の提灯と
駕
(
かご
)
とが、それらしく見える。
松のや露八
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
見ると
膝
(
ひざ
)
を並べて
畏
(
かしこ
)
まっていた。馬鹿らしいと気がついて、
胡坐
(
あぐら
)
に組み直して見た。しかし腹の中はけっして胡坐をかくほど
悠長
(
ゆうちょう
)
ではなかった。
坑夫
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
現代
(
いま
)
でも、田舎などではどうかすると見かけることがあるが、
悠長
(
ゆうちょう
)
な江戸時代には、こんなことをばかにやかましく言って、厳重に守ったものだ。
魔像:新版大岡政談
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
姉はその知らせが余程
嬉
(
うれ
)
しかったらしく、いつもの
悠長
(
ゆうちょう
)
にも似ず、中一日置いて次のような速達便の返事を寄越した。
細雪:03 下巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
で、
悠長
(
ゆうちょう
)
な遊戯などにふけり、美的情操を養ったり、心を静めたりすることは、逆行的態度でございますよ。……去勢されてはいけませんなあ。うんと物欲を
剣侠受難
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
胸中
(
きょうちゅう
)
に
深刻
(
しんこく
)
な
痛
(
いた
)
みをおぼえてから、
気楽
(
きらく
)
な
悠長
(
ゆうちょう
)
な農民を
相手
(
あいて
)
にして遊ぶにたえられなくなったのである。
老獣医
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
日本人は昔から怠惰なる国民ではなかったけれども、境遇と経験とが互いに似ていたゆえに、力を労せずして隣国の
悠長
(
ゆうちょう
)
閑雅
(
かんが
)
の趣味を知り習うことを得たのである。
雪国の春
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
歩みぶりが甚だ
悠長
(
ゆうちょう
)
で、
旅装
(
たびよそおい
)
は常習のことだから、五分もすきはないが、両腕を胸に組んで、うつらうつらと歩いて行く歩みぶりは、いくら月明の夜だからといって、案外な
寛怠
(
かんたい
)
ぶりであります。
大菩薩峠:26 めいろの巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
それにどうもシナ人は私共はじめ
悠長
(
ゆうちょう
)
な風があるけれども、あなたには悠長なところが余程欠けて居る。いわゆる寛大というような様子がなくって、ごく細かに立ち廻るというような風が見えて居る。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
本文も無論読んで見た。平生気の短かい時にはとても見出す事のできない
悠長
(
ゆうちょう
)
な心をめでたく意識しながら読んで見た。
思い出す事など
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
けれど、まさかそこへ、監獄馬車がとびこんで、それから、見つかろうとは思わないから、
悠長
(
ゆうちょう
)
に構えこんでいたものサ
かんかん虫は唄う
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
何しろ本家の連中は昔風で
悠長
(
ゆうちょう
)
だものですから。………しかし僕にはあなたの御親切なお心持がよく分っていますので、今度のお話は大賛成なのです。
細雪:01 上巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
ちゃんと膳立てをしてお招きした、あっしの苦心は買ってくれず、待てば日和は
悠長
(
ゆうちょう
)
ですねえ。それもさ、他人のためじゃねえ、みんなあねごのためですのにね。
剣侠受難
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
ところが昔の村の人たちなどは
悠長
(
ゆうちょう
)
で、そう大して気にもかけずに子どもにはいいたいことをいわせて、おかしいことをいえばただ笑って、古い
仕来
(
しきた
)
りの少しずつ変って行くのを
こども風土記
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
「そうかい。じゃ、まあ、ついて行くことは行くけど、そんな
悠長
(
ゆうちょう
)
なんじゃあないんだよ。食べるか食べないかのどたん場まできているんだからねえ。男なんか、もう、ふっふっ——」
巷説享保図絵
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
歌はすこぶる
悠長
(
ゆうちょう
)
なもので、夏分の
水飴
(
みずあめ
)
のように、だらしがないが、句切りをとるためにぼこぼんを入れるから、のべつのようでも
拍子
(
ひょうし
)
は取れる。
坊っちゃん
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
「ええ畜生。ま、万吉さん——そんな
悠長
(
ゆうちょう
)
なことをしちゃいられない——今向うへ引きずられて行く
姉弟
(
ふたり
)
は、ありゃ実の私の小さい
妹弟
(
きょうだい
)
なんだよ……」
鳴門秘帖:02 江戸の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
いつ
迄
(
まで
)
悠長
(
ゆうちょう
)
なことを云っていてどうする気だろう、そんな風だから婚期に後れてしまうのではないか、ちと眼が覚めるようにしてやらなければ、と云う腹があるので
細雪:01 上巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
旅行は近世人もよくしているけれども、この人たちの旅行法はよほど
行脚僧
(
あんぎゃそう
)
に近く、日限も旅程も至って
悠長
(
ゆうちょう
)
で、且つかなりの困苦に
堪
(
た
)
え、素朴な生活に親しんでいたらしいのである。
木綿以前の事
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
「何を? まだ用がある?
悠長
(
ゆうちょう
)
なことを言ってますぜ。どんな用ですい」
魔像:新版大岡政談
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
僕はなぜ母が彼らの勧めるままに、人を
好
(
よ
)
く落ちついているのだろうと、鋭どく
磨
(
と
)
がれた自分の神経から推して、
悠長
(
ゆうちょう
)
過ぎる彼女をはがゆく思った。
彼岸過迄
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
「
悠長
(
ゆうちょう
)
なやつ、かような
出先
(
でさき
)
にたって、なにを
述懐
(
じゅっかい
)
めいたことをぬかしおるか。それがなんといたしたのだ」
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
いかにも
悠長
(
ゆうちょう
)
らしくて云い出せず、大変結構な御縁だと思って
只今
(
ただいま
)
先方様のことを本家の方で調べているところですから、
後
(
あと
)
一週間もたちましたら御挨拶に出られる積りです、と
細雪:01 上巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
以前は人がこの私の話のような、悠長なことを話すのを
嘲
(
あざけ
)
って、そんな話は庚申の晩に聴こうなどという言い草のあったのを見ると、庚申の晩の話は、相応に
悠長
(
ゆうちょう
)
なものだったのである。
年中行事覚書
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
元来が優美な
悠長
(
ゆうちょう
)
なものとばかり考えていた掛声は、まるで真剣勝負のそれのように自分の
鼓膜
(
こまく
)
を動かした。自分の
謡
(
うたい
)
はこの掛声で二三度波を打った。
永日小品
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
悠
常用漢字
中学
部首:⼼
11画
長
常用漢字
小2
部首:⾧
8画
“悠”で始まる語句
悠々
悠
悠然
悠揚
悠久
悠暢
悠々閑々
悠悠
悠々自適
悠紀