建場たてば)” の例文
山中さんちううらにて晝食ちうじき古代こだいそつくりの建場たてばながら、さけなることおどろくばかり、斑鯛ふだひ?の煮肴にざかなはまぐりつゆしたをたゝいてあぢはふにへたり。
熱海の春 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
つがず歩行續けし事なれば友次郎は夜前の始末しまつを話すべきひまなかりしが最早惡者の追ひ來るべき心づかひなしとてお花は友次郎に打向うちむかひ昨日大野とやら云建場たてば
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
それからのちのことはさわも知っている、彼は三条へいって建場たてば馬子まごになり、そこで知りあった人に拾われて、六日町の吉野屋吉兵衛という宿屋へ住み込んだ。
榎物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
差当り何うすることも出来ないので、胸をさすって駕籠にゆられて行くと、朝の五つ半(午前九時)前に沼津の宿に這入って、宿はずれの建場たてば茶屋に休むことになりました。
三浦老人昔話 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
午前中は自転車に乗って建場たてば廻りをし、店をあけてからは夜九時過ぎまで頑張り、店番のすきには語学を勉強したり、幼い弟の胴着を編んでやったりしている彼女の懸命な生活の姿にこそ
落穂拾い (新字新仮名) / 小山清(著)
建場たてば々々で飲酒りますから、滅多に持出した事のない仕込の片餉かたげ油揚あぶらげ煮染にしめに沢庵というのを、もくもくと頬張りはじめた。
唄立山心中一曲 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
建場たてば茶屋、飲食店、諸種の見聞、諸物価など、ことごとく明細に記入してある。
寄席と芝居と (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
だいたい建場たてばに籍のない人間が、この街道で稼ぐというのは違法ではないか。
雪の上の霜 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
斯くて澤井友次郎は彼の町人のすゝめにより水口の宿外れよりお花を駕籠にのせ其身は町人と共に咄など爲乍しながら駕籠のあとに付てゆく程に一里餘りにして大野といへ建場たてばに來りしが友次郎は過つて草鞋の
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
※弟きやうだい建場たてば茶屋ちやや腕車くるまやとひながらやすんでところつて、言葉ことばけてようとしたが、その子達こだち氣高けだかさ!たふとさ! おもはず天窓あたまさがつたぢや。
旅僧 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
旦那だんな、お待遠樣まちどほさまづらえ。」何處どこだとおもふ、伊達だて建場たてばだ。組合くみあひつらにかゝはる、とつた意氣いきあらはれる。
飯坂ゆき (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
城下金沢より約三里、第一の建場たてばにて、両側の茶店軒を並べ、くだんのあんころ餅をひさぐ……伊勢に名高き、赤福餅、草津のおなじうばヶ餅、相似たるたぐいのものなり。
一景話題 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
駕籠舁かごかきと、車夫くるまやは、建場たてばで飲むのは仕来りでさ。ご心配なさらねえで、ごゆっくり。若奥様に、多分にお心付を頂きました。ご冥加みょうがでして、へい、どうぞ、お初穂を……
白花の朝顔 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
丸岡の建場たてばくるまが休んだ時立合せた上下の旅客の口々から、もうお米さんの風説うわさを聞きました。
雪霊記事 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
丸岡まるをか建場たてばくるまやすんだとき立合たちあはせた上下じやうげ旅客りよかく口々くち/″\から、もうおよねさんの風説うはさきました。
雪霊記事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
越中高岡たかおかより倶利伽羅下くりからじた建場たてばなる石動いするぎまで、四里八町が間を定時発の乗り合い馬車あり。
義血侠血 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
上端あがりばなに客を迎顔むかえがお爺様じいさまの、トやつた風采ふうさいは、建場たてばらしくなく、墓所はかしょ茶店ちゃみせおもむきがあつた。
貴婦人 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
涼しくば木の芽峠、音に聞こえた中の河内かわちか、(ひさしはずれに山見る眉)峰の茶店ちゃや茶汲女ちゃくみおんな赤前垂あかまえだれというのが事実なら、疱瘡ほうそうの神の建場たてばでも差支えん。湯の尾峠を越そうとも思います。
夜叉ヶ池 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
むらから松並木まつなみきひとした、はら取着とツつきに、かたばかりの建場たてばがある。
一席話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
駕籠屋かごや建場たてばを急いでいます、早く飲もうと思ってね。」
白花の朝顔 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)