幾月いくつき)” の例文
幾月いくつきかをすごうちに、てき監視みはりもだんだんうすらぎましたので、わたくし三崎みさきみなとからとおくもない、諸磯もろいそもう漁村ぎょそんほうてまいりましたが
幾月いくつきたないで、正月をその場末のカフェーでむかえると、また、私は三度目の花嫁はなよめとなっていまの与一と連れ添い
清貧の書 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
七年幾月いくつきの其の日はじめて、世界を代へた天竺てんじく蕃蛇剌馬ばんじゃらあまん黄昏たそがれに、緋の色した鸚鵡おうむの口から、同じことばを聞いたので、身を投臥なげふして泣いた、と言ひます。
印度更紗 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
幾月いくつきも、幾年いくとしもたちましたけれど、おとこは、わすれたものか、ともだちのいえへあずけたりにゆきませんでした。
ある男と無花果 (新字新仮名) / 小川未明(著)
夜中よなか起上おきあがって、戸の下にかぎをおき、こりをかついで出ていってしまうのだった。そして幾月いくつき姿すがたを見せなかった。それからまたもどってきた。夕方ゆうがた、誰かが戸にさわるおとがする。
ジャン・クリストフ (新字新仮名) / ロマン・ロラン(著)
しかし、なぜ自分はこんな奇妙な仕草を幾月いくつきにもわたって続けて、なお、まないのか、自分でもわからぬ故、やはりこれは一種の憑きもののせいと考えていいのではないかと思っている。
狐憑 (新字新仮名) / 中島敦(著)
幾月いくつきも苦しい遣繰やりくり
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
なれはそも波に幾月いくつき
我が愛する詩人の伝記 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
なれはそも波に幾月いくつき
藤村詩抄:島崎藤村自選 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
ねん幾月いくつきはじめて、世界せかいへた天竺てんぢく蕃蛇剌馬ばんじやらあまん黄昏たそがれに、いろした鸚鵡あうむくちから、おなことばいたので、投臥なげふしていた、とひます。
印度更紗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
それから、幾月いくつきがなかったのであります。やぐらにのぼって見張みはりをしていた家来けらいが、あわててりてきて
春の日 (新字新仮名) / 小川未明(著)
くにをてから幾月いくつきぞ、ともにでこのうまと、めてすすんだやまかわ……。ほんとうに、そうだった。みんながうま見返みかえり、見返みかえり、きながらいったよ。
村へ帰った傷兵 (新字新仮名) / 小川未明(著)
あるときはかぜのためにおもわぬ方向ほうこうふねながされ、あるときはなみられてあやうくいのちたすかり、幾月いくつき幾月いくつきうみうえただよっていましたが、ついにあるのこと
不死の薬 (新字新仮名) / 小川未明(著)
それでも幾日いくにちめか、幾月いくつきめか、うみうえただよったあかつきには、燈火ともしびうつくしい、人影ひとかげうごく、建物たてもの櫛比しっぴした、にぎやかなみなとはいってきて、しばらくはおちつくことができるのだとられました。
公園の花と毒蛾 (新字新仮名) / 小川未明(著)