山下やました)” の例文
女装の三谷が、山下やましたで自動車を降りて、山内さんないを通り抜け、図書館裏の暗闇にたどりついたのは、丁度約束の十二時少し前であった。
吸血鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
品川しながわまで来ると、山下やましたの、ちょっと海の見えるところに、掛け茶屋が出ているから、龍造寺主計は、そのまえに立ちどまって
巷説享保図絵 (新字新仮名) / 林不忘(著)
場所ところ山下やました雁鍋がんなべの少し先に、まが横丁よこちやうがありまする。へん明治めいぢ初年はじめまでのこつてつた、大仏餅だいぶつもち餅屋もちやがありました。
そのいくさのあるという上野の山下やました雁鍋がんなべの真後ろの処(今の上野町)に裏屋住まいをしている師匠の知人のことに思い当ったのであります。
大使阿倍継麿あべのつぎまろが、「あしひきの山下やましたひかる黄葉もみぢばの散りのまがひは今日にもあるかも」(巻十五・三七〇〇)、副使大伴三中みなか
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
「ほんの蝋燭おてらしだ、旦那だんな。」さて、もつと難場なんばとしたのは、山下やました踏切ふみきりところが、一坂ひとさかすべらうとするいきほひを、わざ線路せんろはゞめて、ゆつくりと強請ねだりかゝる。
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
うーとうなっておどかしてやったら、迷亭はあおくなって山下やましたの雁鍋は廃業致しましたがいかが取りはからいましょうかと云った。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
山下やました菊屋きくやで夕食をした後友は神田かんだに行こうと云い出した。私は云うがままに彼について行った。
真珠塔の秘密 (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
枳園はしばしば保を山下やました雁鍋がんなべ駒形こまがた川桝かわますなどに連れて往って、酒をこうむって世をののしった。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
こんなよしなしごとを考えながら、ぶらぶらと山下やましたのほうへおりて行くのであった。
庭の追憶 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
かいくだされましと言に道具屋ハイ/\家主いへぬしひろ次郎と申ますと肩書かたがきにして渡しければ直八是で宜と其儘馬喰ばくろ町の旅宿りよしゆくへ歸りて長兵衞ならび村名主むらなぬし源左衞門に向ひ下谷山下やましたにて見當みあたりし脇差わきざしの事を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
山下やましたでございます」
箕輪心中 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
山下やました岩根いはね垂る水の
茴香 (新字旧仮名) / 末吉安持(著)
おはなしかわって、上野山下やましたの商店街の中に山形やまがた屋という食料品店があります。そこの店員に、鳥井とりい君という、小がらの少年がいました。
鉄人Q (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
赤飯おこはうれしいな、じつ今日けふなんだ、山下やましたとほつた時、ぽツ/\と蒸気けむつてたからひてえと思つたんだが、さうか、其奴そいつ有難ありがてえな、すぐはう。
八百屋 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
刺青ほりものの膚にたきなす汗を振りとばして、車坂くるまざか山下やましたへぶっつけ御成おなり街道から筋かえ御門へ抜けて八つじはら
つづれ烏羽玉 (新字新仮名) / 林不忘(著)
この歌の、「山下やましたの」は、「秋山のしたぶる妹」(巻二・二一七)などの如く、紅葉の美しいのに関係せしめて使って居るから、「赤」の枕詞に用いたものらしい。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
いつか上野うえの松坂屋まつざかやの七階の食堂の北側の窓のそばに席を占めて山下やましたの公園前停留場をながめていた。窓に張った投身者よけの金網のたった一つの六角の目の中にこの安全地帯が完全に収まっていた。
自由画稿 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
アイそれは痛いワ……負傷けがをしたんだから……エー新入しんまい乞食こじきだからの、何処どこうだかさつぱりわけわからないが、山下やました突当つきあたりのかどの所に大勢おほぜい乞食こじき
彼女と私とはそこに並んでいた陳列品について二言三言口をき合ったのが縁となって、それから博物館を一巡して、そこを出て上野の山内さんない山下やましたへ通り抜けるまでの長い間
陰獣 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
「橘のした照る庭に殿立てて酒宴さかみづきいますわが大君かも」(巻十八・四〇五九)、「あしひきの山下やましたひかる黄葉もみぢばの散りのまがひは今日にもあるかも」(巻十五・三七〇〇)の例がある。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)