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孤屋
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ひとつや
ふりがな文庫
“
孤屋
(
ひとつや
)” の例文
自分は傘をさして、一番奧の、二三町離れた山の麓の
孤屋
(
ひとつや
)
の蓼の湯にと、出かけた。机の上には、ゆうべの歌の紙は、もう見えなかつた。
湖畔手記
(旧字旧仮名)
/
葛西善蔵
(著)
衾
(
ふすま
)
をともにせざるのみならず、一たびも来りてその妻を見しことあらざる、
孤屋
(
ひとつや
)
に幽閉の番人として、この
老夫
(
おやじ
)
をば
択
(
えら
)
びたれ。
琵琶伝
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
遙向うの青山街道に
車
(
くるま
)
の
軋
(
きし
)
る
響
(
おと
)
がするのを見れば、先発の荷馬車が今まさに来つゝあるのであった。人と荷物は
両花道
(
りょうはなみち
)
から草葺の
孤屋
(
ひとつや
)
に乗り込んだ。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
大風
(
おほかぜ
)
の
凪
(
な
)
ぎたる
迹
(
あと
)
に
孤屋
(
ひとつや
)
の立てるが如く、
侘
(
わび
)
しげに留守せる
主
(
あるじ
)
の隆三は
独
(
ひと
)
り碁盤に向ひて
碁経
(
きけい
)
を
披
(
ひら
)
きゐたり。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
疑へば疑はしきものとこそ覚え侍れ、笑ひも恨みも、はた歓びも悲みも、夕に来ては
旦
(
あした
)
に去る旅路の人の野中なる
孤屋
(
ひとつや
)
に
暫時
(
しばし
)
宿るに似て、我とぞ仮に名を
称
(
よ
)
ぶなるものの中をば過ぐるのみ
二日物語
(新字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
▼ もっと見る
見るに輕井澤まで二里餘とあり
喘
(
あへ
)
ぎ/\
上
(
のぼ
)
りてやがて二里餘も來らんと思ふに輕井澤は見えず
孤屋
(
ひとつや
)
の
婆
(
ばゝ
)
に聞けば是からまだ二里なりといふ一行
落膽
(
がつかり
)
し
偖
(
さて
)
は是程に
草臥
(
くたびれ
)
て
餘
(
よ
)
だけしか來らざりしかと泣かぬばかりに驚きたり是より道を
木曽道中記
(旧字旧仮名)
/
饗庭篁村
(著)
……
此
(
こ
)
の
狂言
(
きやうげん
)
はまだ
見
(
み
)
ないが、
古寺
(
ふるでら
)
の
廣室
(
ひろま
)
の
雨
(
あめ
)
、
孤屋
(
ひとつや
)
の
霧
(
きり
)
のたそがれを
舞臺
(
ぶたい
)
にして、ずらりと
此
(
こ
)
の
形
(
なり
)
で
並
(
なら
)
んだら、
並
(
なら
)
んだだけで、おもしろからう。
くさびら
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
しかり
親仁
(
おやじ
)
のいいたるごとく、お通は今に一年間、幽閉されたるこの
孤屋
(
ひとつや
)
に処して、涙に、口に、はた容儀、心中のその痛苦を語りしこと絶えてあらず。
琵琶伝
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
急心
(
せきごころ
)
に草を
攀
(
よ
)
じた欣七郎は、歓喜天の御堂より先に、たとえば
孤屋
(
ひとつや
)
の
縁外
(
えんそと
)
の欠けた
手水鉢
(
ちょうずばち
)
に、ぐったりと
頤
(
あご
)
をつけて、朽木の台にひざまずいて縋った、青ざめた幽霊を見た。
怨霊借用
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
恐
(
おそ
)
ろしい、
男
(
をとこ
)
を
食
(
く
)
つて
骨
(
ほね
)
を
秘
(
かく
)
す、と
村
(
むら
)
のものが
嬲
(
なぶ
)
つたつけの……
真個
(
ほん
)
の
孤屋
(
ひとつや
)
の
鬼
(
おに
)
に
成
(
な
)
つて、
狸婆
(
たぬきばゞあ
)
が、
旧
(
もと
)
の
色仕掛
(
いろじか
)
けで
私
(
わし
)
に
強請
(
ゆす
)
つて、
今
(
いま
)
では
銭
(
おあし
)
にするでがすが、
旦那
(
だんな
)
、
何
(
なに
)
か
買
(
か
)
はしつたか
神鑿
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
此日
(
このひ
)
、
本線
(
ほんせん
)
に
合
(
がつ
)
して
仙台
(
せんだい
)
をすぐる
頃
(
ころ
)
から、
町
(
まち
)
はもとより、
野
(
の
)
の
末
(
すゑ
)
の一
軒家
(
けんや
)
、
麓
(
ふもと
)
の
孤屋
(
ひとつや
)
の
軒
(
のき
)
に
背戸
(
せど
)
に、
垣
(
かき
)
に
今年
(
ことし
)
竹
(
たけ
)
の
真青
(
まつさを
)
なのに、五
色
(
しき
)
の
短冊
(
たんざく
)
、七
彩
(
いろ
)
の
糸
(
いと
)
を
結
(
むす
)
んで
掛
(
か
)
けたのを
沁々
(
しみ/″\
)
と
床
(
ゆか
)
しく
見
(
み
)
た
十和田湖
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
すぐ
傍
(
わき
)
に、空しき
蘆簀張
(
よしずばり
)
の掛茶屋が、
埋
(
うも
)
れた谷の下伏せの
孤屋
(
ひとつや
)
に似て、
御手洗
(
みたらし
)
がそれに続き、並んで二体の地蔵尊の、
来迎
(
らいごう
)
の石におわするが、はて、この
娘
(
こ
)
はの、と雪に顔を見合わせたまう。
薄紅梅
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
迷
(
まよ
)
つた
深山路
(
みやまぢ
)
の
孤屋
(
ひとつや
)
の
灯
(
ともしび
)
のやうに
嬉
(
うれ
)
しかつた。
十和田湖
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
孤
常用漢字
中学
部首:⼦
9画
屋
常用漢字
小3
部首:⼫
9画
“孤”で始まる語句
孤児
孤
孤独
孤島
孤家
孤兒
孤子
孤塁
孤立
孤寂