奇怪きくわい)” の例文
沈痛ちんつう悲慘ひさん幽悽ゆうせいなる心理的小説しんりてきせうせつつみばつ」は奇怪きくわいなる一大巨人いちだいきよじん露西亞ロシア)の暗黒あんこくなる社界しやくわい側面そくめん暴露ばくろしてあますところなしとふべし。
罪と罰(内田不知庵訳) (旧字旧仮名) / 北村透谷(著)
その擧動ふるまひのあまりに奇怪きくわいなのでわたくしおもはず小首こくびかたむけたが、此時このとき何故なにゆゑともれず偶然ぐうぜんにもむねうかんでひとつの物語ものがたりがある。
しかしそれは私の傍をまつたく靜かに通りぬけた。私が半ば期待してゐたやうに、立ち止つて奇怪きくわいな犬以上の眼で私の顏を見上げるやうなことはなかつた。
あらはせて此室こゝびたしとおほせられたに相違さうゐはなしかくあがりなされよと洗足すゝぎまでんでくるゝはよも串戯じやうだんにはあらざるべしいつはりならずとせばしんもつ奇怪きくわい
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
のがれん爲然樣さやうを申立候事と存じられ甚だ不屆ふとゞきなる者共に御座候先渠等兩人拙等方せつしやかたに勤中も種々しゆ/″\不埓ふらちすぢ有之候者共にて兎角とかく某しをかろんじ奇怪きくわい至極しごくに存じ居候と申を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
しかしわが日本人にほんじん外人等ぐわいじんら追從つゐじうしてみづか自國じこくを二三にするのは奇怪きくわいばんである。
国語尊重 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
(以上一条の全文)越後に永光寺、信濃に温泉寺、事の相似あひにたる一奇怪きくわいといふべし。
此新發見このしんはつけん奇怪きくわいなる貝塚かひづかと、まへ奇怪きくわいなる貝塚かひづかと、山上さんじやう山下さんか直徑ちよくけいとしたら、いくらもはなれてらぬ。三四十けんよりとほくはるまいが、しかし、山上さんじやう山下さんか貝層かひそう連絡れんらくことは、あきらかである。
奇怪きくわい幻想的げんさうてきな城が、そのたびに赤くなつたり青くなつたりした。
檸檬 (旧字旧仮名) / 梶井基次郎(著)
いまわたくし黒暗々こくあん/\たる印度洋インドやう眞中まんなかおいて、わが弦月丸げんげつまるあとふかの奇怪きくわいなるふねてふと此樣こんなことおもした。
(以上一条の全文)越後に永光寺、信濃に温泉寺、事の相似あひにたる一奇怪きくわいといふべし。
廊下に聞えた奇怪きくわいな笑ひ聲のこと、三階に上つて行つた跫音あしおとのこと、煙と——私を彼の室に導いた焦臭きなくさい匂ひのこと、私が見つけたときの室の光景、運べる限りの水で彼を水浸みづびたしにした顛末てんまつなど。
奇怪きくわいふね! 奇怪きくわいふね! あのふねわが軍艦ぐんかんむかつて、なに信號しんがうこゝろみんとしてる。』とさけんだ。