壮佼わかもの)” の例文
旧字:壯佼
胴中には青竹をりて曲げて環にしたるを幾処いくところにか入れて、竹の両はしには屈竟くっきょう壮佼わかものゐて、支へて、ふくらかにほろをあげをり候。
凱旋祭 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
翌日になって平太郎は新八郎を送って往って、一日其処で遊んで夕方になって帰ってみると、近隣の壮佼わかものが五六人来ていて
魔王物語 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
血気腕力兼備と見えたる壮佼わかものどもなり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
本名は誰も知らない、何をして暮すのか、ただ遊んで、どこともわず一群ひとむれ一群入り込むきおい壮佼わかものに、時々木遣きやりを教えている。
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
隣家の主人の権八はもと三の井と云う力士で、一度は紀州家の抱えとなっていた大関角力であったが、其の比は故郷へ隠退して附近の壮佼わかものに角力の手ほどきをしてやっていた。
魔王物語 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
山番の爺がいいたるごとく駕籠は来て、われよりさきに庵の枝折戸しおりどにひたと立てられたり。壮佼わかもの居て一人は棒におとがいつき、他は下に居て煙草たばこのみつ。
清心庵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
壮佼わかものは火鉢を中に囲んで三人の同志の逃げ帰ったことを嘲笑していた。
魔王物語 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
空を仰いで立停たちどまったのは、町屋風の壮佼わかもので、雨の歇んだのを見ると、畳んでたもとの下に抱え込んでいた羽織を一揺ひとゆり、はらりと襟をしごいて手を通した。
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
この血の跡を慕い行かばその行先を突留め得べきが、単身ひとりにては気味悪しと、一まず家に立帰りて、近隣の壮佼わかもの究竟くっきょうなるを四人ばかり語らいぬ。
活人形 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
女房は年紀としの功、先刻さっきから愛吉が、お夏に対する挙動を察して、非ず。この壮佼わかもの強請ゆすりでも、緡売さしうりでも。
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
壮佼わかものは打ちしおるるまでに哀れを催し、「そうして爺さん稼人かせぎてはおめえばかりか、孫子はねえのかい」
夜行巡査 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
印半纏しるしばんてんたる壮佼わかものの、軒に梯子はしごさして昇りながら、一つずつ提灯にともすが、右のかたより始めたれば、小親という名、ぱっと墨色濃く、あざやかに最初の火にてらされつ。
照葉狂言 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「どこかへ明日まで封じておきな。」「あいあい親方請取ろうか。」「そら渡すぞ。」と屠犬児が片手で突けば、飛んで来る、三吉を引抱ひんだきて、壮佼わかもの闇夜やみに消えぬ。
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
予は高峰とともに立ち上がりて、遠くかの壮佼わかものを離れしとき、高峰はさも感じたる面色おももちにて
外科室 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「こうじいさん、おめえどこだ」と職人体の壮佼わかものは、そのかたわらなる車夫の老人に向かいて問いけたり。車夫の老人は年紀としすでに五十を越えて、六十にも間はあらじと思わる。
夜行巡査 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
あわただしく木戸口に走り出で、うなじを延べて目送せり。その視線中に御者体の壮佼わかものあり。
義血侠血 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「まあ、うございます。ちょっと、其奴そいつを縛っちまいな。」「ちゃんと可いようにこせえてありやす。」「そりゃ早い手廻てまわしだね、ではね、お前。」とうしろに控えし壮佼わかものを見返りて
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
中にはもう此処等ここいらから仮声こわいろをつかって壮佼わかものがある、浅黄あさぎ襦袢じゅばん膚脱はだぬいく女房がある、その演劇しばいの恐しさ。大江山おおえやまの段か何か知らず、とても町へは寄附よりつかれたものではない。
春昼後刻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
得右衛門を始めとして四人よつたり壮佼わかものは、茶碗酒にて元気を養い一杯機嫌で立出でつ。
活人形 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
曳声えいごえを揚げて……こっちは陽気だ。手頃な丸太棒まるたんぼう差荷さしにないに、漁夫りょうしの、半裸体の、がッしりした壮佼わかものが二人、真中まんなかに一尾の大魚を釣るして来た。魚頭を鈎縄かぎなわで、尾はほとんど地摺じずれである。
貝の穴に河童の居る事 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
健全無病の壮佼わかものなり。知らず何が故に疾病やまいを装いて、貴婦人の通行を妨げしや。
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
二杯三杯とかさなるにつれて、遠慮も次第になくなるとこへ、狂水きちがいみずのまわるのが、血の燃ゆるがごとき壮佼わかもの、まして渾名あだなを火の玉のほてりに蒸されて、むらむらと固る雲、額のあたりが暗くなった。
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
向者さきより待合所の縁にりて、一ぺんの書をひもとける二十四、五の壮佼わかものあり。
義血侠血 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「あい。」と云いしが眗して、土間より立ったる半纏着の壮佼わかものさしまね
照葉狂言 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ただ人の頭も、顔も、黒く塗りて、肩より胸、背、下腹のあたりまで、墨もていやが上に濃く塗りこくり、赤褌襠あかふどし着けたるいしきはぎ、足、かかと、これをば朱を以て真赤に色染めたるおなじ扮装いでたち壮佼わかものたち
凱旋祭 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
板のごとくにこわい、黒の筒袖の長外套なががいとうを、せた身体からだに、爪尖つまさきまで引掛ひっかけて、耳のあたりに襟を立てた。帽子はかぶらず、頭髪かみ蓬々ぼうぼうつかてたが、目鼻立の凜々りりしい、頬はやつれたが、屈強な壮佼わかもの
露肆 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
音訪おとなう間も無く、どたんと畳をて立つ音して、戸を開けるのと、ついそのかまち真赤まっかな灯の、ほやの油煙に黒ずんだ小洋燈こランプの見ゆるが同時で、ぬいと立ったは、眉の迫った、目の鋭い、細面ほそおもて壮佼わかもの
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
声に応じて三名の壮佼わかものは群を脱して、戸口に向えり。
海城発電 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
声に応じて三名の壮佼わかものは群を脱して、戸口に向へり。
海城発電 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
と大音声に呼ばわれば、舟なる壮佼わかもの声を揃えて
金時計 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
蓬頭垢面ほうとうこうめん窮鬼すだまのごとき壮佼わかものあり
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
したが壮佼わかものは南海の健児栗山大助。
金時計 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)