嘲笑てうせう)” の例文
おもふかおもはないうちに、つまたけ落葉おちばうへへ、ただ一蹴ひとけりに蹴倒けたふされた、(ふたたびほとばしごと嘲笑てうせう盜人ぬすびとしづかに兩腕りやううでむと、おれの姿すがたをやつた。
藪の中 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
勘次かんじけづつたやうなせたかほ何時いつでもひがんでさうしておこやすいのを彼等かれら嘲笑てうせうまなこもつとほくからのぞくのである。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
悶えて悶えて悶えてゐる心を、うはべのにぎやかさにまぎらはしてゐるさびしさを、人々はただ嘲笑てうせうの眼をもつて見ました。
冬を迎へようとして (旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
かうして次から次へと渡り歩く美人を、貧乏で皮肉でおせつ介な江戸ツ子達は、小便組と呼んで、嘲笑てうせうと輕蔑と、そしてほんの少しばかり好意をさへ寄せてゐたのです。
世間の人々の嘲笑てうせうおもんぱかつて、小さくなつて、自分の失恋を恥ぢ隠さうとしてゐたのが、世間の同情が、全く予期に反して、翕然きふぜんとして、自分の一身に集つて来るらしいのを見て取ると
良友悪友 (新字旧仮名) / 久米正雄(著)
ところが、それから十ねんつて日露戰爭にちろせんさうおこつたときわたしすで非戰論者ひせんろんしやとして×國心こくしん嘲笑てうせうしてゐた。わたし日本國民にほんこくみんとして、日本國土にほんこくど極小ごくせうの一部分ぶぶんすらもわかあたへられてないことつてゐた。
同人どうにん嘆息たんそくした。——いまでも金魚麩きんぎよぶはう辟易へきえきする……が、地震ぢしん四日よつか五日いつかめぐらゐまでは、金魚麩きんぎよぶさへ乾物屋かんぶつや賣切うりきれた。また「いづみ干瓢鍋かんぺうなべか。車麩くるまぶか。」とつてともだちは嘲笑てうせうする。
間引菜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
どこか一同みんなと共通した不平と嘲笑てうせうの影がひそんでゐた。
新らしき祖先 (新字旧仮名) / 相馬泰三(著)
わらひは量的に分てば微笑びせう哄笑こうせうの二種あり。質的に分てば嬉笑きせう嘲笑てうせう苦笑くせうの三種あり。……予が最も愛する笑は嬉笑嘲苦笑と兼ねたる、爆声の如き哄笑なり。
LOS CAPRICHOS (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
外聞げえぶんわりいもなんにもんねえんだな」嘲笑てうせう意味いみではあるが何處どことなくしづんでまたういふものつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
多勢の顏には、驚きと非難と、そしてほのかな嘲笑てうせうが浮んで來ます。此時、狹い川をへだてゝ猿屋町のお角の家からは、三味線の音につれて、艶めかしい歌がれて居たのです。
近来随筆の流行漸く盛んならんとするに当つて、随筆を論ずる者、必ず一方いつぱう永井荷風ながゐかふう氏や、近松秋江ちかまつしうかう氏を賞揚し、一方に若い人人のそれを嘲笑てうせうする傾向がある。
解嘲 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
幸七のケロリとした顏には、嘲笑てうせう侮辱ぶじよくが一パイにみなぎつて居るではありませんか。
バアトンの計画を嘲笑てうせうした「印刷タイムス」の如きもあつた。「バ氏の此の事業に関係して居る筈の某々の氏名が訳本につて居らぬ。印刷者の手落ちならば正に罰金を課すべきである。 ...
高鳴る嘲笑てうせう
突然とつぜんほとばしごと嘲笑てうせう)その言葉ことばいたときは、盜人ぬすびとさへいろうしなつてしまつた。
藪の中 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)