あわ)” の例文
それでも貴公は、きゃつらに何の怨みもないか! いやさ、吾々と力をあわせて、そのうらみを思い知らせてやるという気が起こらぬのか
鳴門秘帖:03 木曾の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それに今またそれらの友と力をあわせて「日本民藝美術館」の設立を急ぐ私は、共に工藝に関する思想の建設をも試みるべきであろう。
工芸の道 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
近頃になって御用繁多はんたなので、八五郎に旨を含めて、百人町の百兵衛と力をあわせ、他所よそながら長者丸一角をにらませて置いたのでした。
我十六歳にして三州小豆坂あずきざか初陣ういじんして以来五十余戦、未だ鬨の声ばかりで鶏軍した覚えがない。諸軍力をあわせずして如何いかんぞ勝とうや。
島原の乱 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
その場合は顧問弁護士セザレ・アルバラード氏においてはマジャルドー氏らと力をあわせ、極力法廷に係争して余のために最善を尽し
陰獣トリステサ (新字新仮名) / 橘外男(著)
ソシテ世ニモ珍シイめぐリ合セト云ウベキハ、陰険ナ四人ガ互イニあざむキ合イナガラモ力ヲあわセテ一ツノ目的ニ向ッテ進ンデイルヿデアル。
(新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
大勢が力をあわせて、無理に引放ひきはなそうとしたが、お葉の拳は決して開かなかった。彼女かれは黙って冬子の髪を掴んでいるのである。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
花田 俺たちは力をあわせて、九頭竜という悪ブローカーおよび堂脇という似而非えせ美術保護者の金嚢かなぶくろからあたうかぎりの罰金を支払わせることを誓う。
ドモ又の死 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
木の材をまとめて製作したものか、学校の教員たちが力をあわせて作ったものか、などいろいろ立ち入って御下問があったとの事で、御答えを申すには
謝貴しゃきもっ都指揮使としきしとなし、燕王の動静を察せしめ、巍国公ぎこくこう徐輝祖じょきそ曹国公そうこくそう李景隆りけいりゅうをして、はかりごとあわせて燕をはからしむ。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
兄の留守のまに、お柳は時々あばれ出して、年った母親をてこずらせた。近所から寄って来た人々と力をあわせて、母親はやっと娘を柱に縛りつけた。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
そんな風に作者と選者とが力をあわしている中にそれらの人々の俳句は幾らかずつ進歩して行くものと思う。
俳句への道 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
「私達は三人とも、同じ敵に悩まされているのですわね。恐怖王という奴は、なんてむごたらしい人非人でしょう。私共は力をあわせてあいつを防がなければなりませんわ」
恐怖王 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
本質的には男も女も平等の人間として人間性の完成に力をあわせているように私には見られる。
母性偏重を排す (新字新仮名) / 与謝野晶子(著)
ただわが家庭を如何いかにして安穏あんおんに経過せしめんかと心はそれのみにはしりて、苦悶のうちに日を送りつつも、福田の苦心を思いやりて共に力をあわせ、わずかに職を得たりと喜べば
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
蟻や蜂のごとき動物では力をあわして団体のために働くという本能が十分に発達しているゆえ、各個体の生れながらになす所業はすべて団体の維持繁栄に適するようになっているが
しかし、仲間なかまはそれとさとると、すぐにくるまからりて、トロッコの脱線だっせんした場所ばしょあつまってきました。そして、ちからあわせて、やっとおもくるまをもとの位置いちにもどすことができたのです。
白い雲 (新字新仮名) / 小川未明(著)
宣光不敏ニシテ唯負荷ノ任ニ堪ヘザルコトヲおそル。汝二、三ノ僚佐モマタ余ガ股肱ここうノ耳目ナリ。こいねがわクハ心ヲ同ジクシ力ヲあわセ余ガ及バザル所ヲ輔翼シ以テ聖旨ノ万分ノ一ニ報ズルコトアレト。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
「今夜かぎり、てまえも官を棄ててここからはしります。共に力をあわせて、貴君のゆく所まで落ちのび、天下の義兵を呼び集めましょう」
三国志:03 群星の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
お先棒の三次の身体からだの利きようは、全く非凡なものでしたが、ガラッ八と平次と力をあわせて、大汗の後ようやく取って押えました。
民藝の仕事を通じ、日支の両国が力をあわせることは、決して単なる夢ではなく、また夢に終らせたくないことだと思います。
北支の民芸(放送講演) (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
茲に至ると叱言とか意地張とか云うものを超越して、親子が心をあわせて朝の日課の一つを執り行って居るような気持になる。
The Affair of Two Watches (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
そして、君と力をあわせて事に当ればよかったのだ。僕はね、蓑浦君、やっぱり君や深山木さんと同じ様に、この事件を一人で研究して見たのですよ。何故そんなことをしたか、分りますか。
孤島の鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
雨を交えてからは、有力な味方でもが加わったように、益々ますます暴威を加えていた。風と雨と波とが、三方から人間の作った自然の邪魔物を打ち砕こうとでもするように力をあわせて、此建物を強襲した。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
そして、この事件の専役せんやくを東儀与力に命じた。同時に、八弥と耀蔵ようぞうも、力をあわせて、一日もはやく下手人を召捕あげるように言い渡された。
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
今日のように小綺麗な村通りや、門構えの家並が揃うまでには、幾代かの陶工たちの力をあわせた苦難の歴史があろう。
苗代川の黒物 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
平次と太助が力をあわせて苦もなく縛りましたが、この手柄の蔭に、重大な失策が潜んでいるような気がして、我ながら不思議な自責を感じているのです。
彼女が輝勝と心をあわせて則重を滅ぼしたことについては、わずかに「筑摩軍記」の中に暗示的な一二行の文句があるのみで、そこにどう云ういきさつが伏在していたか
そして、力をあわせて、島の秘密を探ろうよ
孤島の鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
いっそう心を彼にあわせて、生死も共にという気を強めたのは、彼の一族中や、将士のうちでも、極く少数にかぎられていたろう。
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
井上半十郎が反抗する隙もありません、其処そこに手伝っていた二人の荒くれ男、稲富喜三郎と力をあわせて、あッと言う間に半十郎を縛り上げてしまいました。
江戸の火術 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
しかし熱意はこれを少しずつ準備させ、ついにこの趣旨を大正十年頃公表し、故浅川巧君と力をあわせ、実際に開設したのは大正十三年で、斎藤総督の時代であった。
いとけなくこそあれ、わが子曹叡こそは、仁英の質、よく大魏のとうを継ぐものと思う。汝ら、心をあわせて、これをたすけ、朕が心にそむくなかれ」
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
人間が首を突っ込むほど開けるためには、どうしても三四人の力をあわせなければならなかったでしょう。
人々はこれによって個人的生活が陥る独断から逃れ、意識の超過にわざわわされず、宗教の雰囲気に入った。そうして力をあわせる事によって信念を強め、生活を浄めた。
民芸四十年 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
「みな、元気でおります。それに河内の領民どもも、よくとりでの工に力をあわせてくれますし、今のところ、後顧こうこには何のご心配もいりません」
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
親分思いのガラッ八は、すっかり心配して、お静と心をあわせていろいろ慰めもし、励ましもしましたが、平次は頭を振るだけで、一向相手にもならなかったのです。
そこにはよき順次が保たれ、生活は整頓せいとんし、価格は支持され、経済は保証せられた。人々は力をあわせて作業に対し商業に対し道徳を支えた。働く者には創造の自由があり、仕事への愛着があった。
工芸の道 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
「これこそ、我々が待っていた天の声である。地上の輿論よろんである。太守、何を迷うことがありましょう。よろしく曹操と力をあわすべきときです」
三国志:03 群星の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「お国とお舟が二人力をあわせてやれば、これも伊勢屋を殺せる。一度突き落して、材木へ泳ぎ付いて、這い上がろうとするところを、上からのみで頸筋を突けば——」
それから、紀伊きい越えの山の割れ目にちた伊織の身を、幸村の配下の者も、力をあわせて探してくれたが、ようとして、きょうまで、生死も知れなかった。
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
顔は新しいが、野心的で戦闘的な太助——かつての矢の根五郎吉を挙げるとき、平次に力をあわせて働いた若い御用聞の一人が殺されたというのは容易ならぬことです。
その一方を抛棄ほうきして、一方へ力をあわせ、まず、三木城の別所一族だけをつ——とすれば、これは優位に立ち直る絶対方針となるにはちがいないが——
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
探偵小説にはフランスの『ファントマ』や、イギリスの『セキストン・ブレーク』があるが、それは多勢の作者が力をあわせた作品で、一人の頭脳と手から生まれたものではない。
「だから、この甲府でみんなが落合ったのを幸いに、一人一人の手分けをやめて、力をあわせて片っぱしから片づけて行った方が早くはねえかと思うんだが」
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「番頭の清六さんとあっしを手伝わせて、三人力をあわせて遺言状を隠しましたよ」
「すわ。寄手は梁山泊から援軍をよんで、いちかばちかの総攻撃をしかけて来たとみえるぞ。やよ欒廷玉らんていぎょく、せがれどもと力をあわせ、一挙にこれをほふり去れ」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
八五郎と力をあわせて、その日一日、平次の手にまとめた材料というのは、総兵衛は慈悲心に富んだ人間ではあったが、少し頑固がんこで曲った事や正しくない者には恐ろしく冷酷であったこと
いずれ、しかるべきお方の末とは存じますが、おん母子ぼし、心をあわせて、琵琶御修行の上洛とは、お羨ましい。
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
弟の春吉と力をあわせ、勇太郎が無理に呼び寄せて、しな垂れかかるところへ、首へ細紐を巻いて二人の力で絞め殺し、とうとう口を塞いでしまったのだろう、その上に臼を仕掛けて落し