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わかれ
ふりがな文庫
“
別離
(
わかれ
)” の例文
この
父
(
おや
)
と子と突然に
別離
(
わかれ
)
を告げたのである。それも尋常一様の
別離
(
わかれ
)
でない。父は夢のように姿を隠して、夢のように死んだのである。
飛騨の怪談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
斯
(
か
)
ういふ相談をして居るところへ、
棺
(
ひつぎ
)
が持運ばれた。
復
(
ま
)
た読経の声が起つた。人々は最後の
別離
(
わかれ
)
を告げる為に其棺の
周囲
(
まはり
)
へ集つた。
破戒
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
と云って、
別離
(
わかれ
)
の会釈に
頭
(
つむり
)
を下げたが、そこに根を
生
(
はや
)
して、
傍目
(
わきめ
)
も
触
(
ふ
)
らず、黙っている先達に、気を引かれずには済まなかった。
星女郎
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
別離
(
わかれ
)
を惜しんでいるのであった。二人の他には誰もいない。人を避けて二人ばかりで、酒を汲み交わせているのであった。
名人地獄
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
別離
(
わかれ
)
ということについて、吉里が深く人生の無常を感じた今、善吉の口からその言葉の繰り返されたのは、妙に胸を刺されるような心持がした。
今戸心中
(新字新仮名)
/
広津柳浪
(著)
▼ もっと見る
想
(
おも
)
えば去年の五月艦隊の演習におもむく時、逗子に立ち寄りて別れを告げしが一生の
別離
(
わかれ
)
とは知らざりき。
小説 不如帰
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
別離
(
わかれ
)
の時のお言葉は耳にとまって……抜き離せばこの凄い
業
(
わざ
)
もの……
発矢
(
はっし
)
、なみだの顔が映るわ。
武蔵野
(新字新仮名)
/
山田美妙
(著)
そんなところが、あのお
伽噺
(
とぎばなし
)
のつらい
夫婦
(
ふうふ
)
の
別離
(
わかれ
)
という
趣向
(
しゅこう
)
になったのでございましょう……。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
後
(
うしろ
)
見られぬ
眼
(
め
)
を
恨
(
うら
)
みし
別離
(
わかれ
)
の様まで胸に
浮
(
うか
)
びて
切
(
せつ
)
なく、娘、ゆるしてくれ、今までそなたに苦労させたは
我
(
わが
)
誤り、もう是からは花も
売
(
うら
)
せぬ、
襤褸
(
つづれ
)
も着せぬ、荒き風を
其
(
その
)
身体
(
からだ
)
にもあてさせぬ
風流仏
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
裏町の
棟割長屋
(
むねわりながや
)
の一軒を——一軒といったって、たった二
間
(
ま
)
の汚ねえ汚ねえ家だったが、それでも小屋の親分から、
別離
(
わかれ
)
に
貰
(
もら
)
った二分か三分の銭があったので、そこを借りることは出来たのさ。
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
「エ、でもね、どうせ女は家を出る時が
別離
(
わかれ
)
だと言ひますから……」
一家
(旧字旧仮名)
/
若山牧水
(著)
たとえば浮世絵の巻物を
披
(
ひろ
)
げて見たように淡暗い硝子の窓に毎日毎日映って来た社会のあらゆる階級のさまざまな人たち、
別離
(
わかれ
)
と思えば恋も怨みも皆夢で、残るのはただなつかしい想念ばかりである。
駅夫日記
(新字新仮名)
/
白柳秀湖
(著)
一二町にして友に
別離
(
わかれ
)
を告げんことを望む。友
諾
(
だく
)
せず。
秋の岐蘇路
(旧字旧仮名)
/
田山花袋
(著)
別離
(
わかれ
)
といふに
微笑
(
ほほゑ
)
む君がゑまひ
独絃哀歌
(旧字旧仮名)
/
蒲原有明
(著)
まして、さま/″\な境涯を
通過
(
とほりこ
)
して、
復
(
ま
)
た逢ふ迄の長い
別離
(
わかれ
)
を告げる為に、互に
可懐
(
なつか
)
しい顔と顔とを合せることが出来ようとは。
破戒
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
それは
何人
(
なんぴと
)
も
返答
(
こたえ
)
に
苦
(
くるし
)
む所であるが、
兎
(
と
)
にかく
此
(
こ
)
の物語はお葉と重太郎の最期を一段落として、読者と
別離
(
わかれ
)
を告げねばならぬ。
飛騨の怪談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
義理から
別離
(
わかれ
)
話になると、お蔦は、しかし二度
芸者
(
つとめ
)
をする気は無いから、幸いめ組の
惣助
(
そうすけ
)
の女房は、島田が名人の女髪結。
婦系図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
こんな多勢の人達が
悉皆
(
みんな
)
出征なさる方に縁故のある人、
別離
(
わかれ
)
を惜しみに此処に集ってお居でなさるのかと思ったら、私は胸が一杯になりましたの。
昇降場
(新字新仮名)
/
広津柳浪
(著)
まだ三月に足らぬ契りも、過ぐる世より相知れるように親しめば、しばしの
別離
(
わかれ
)
もかれこれともに限りなき傷心の
種子
(
たね
)
とはなりけるなり。さりながら浪子は
永
(
なが
)
く
別離
(
わかれ
)
を
傷
(
いた
)
む暇なかりき。
小説 不如帰
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
今朝は言ふ、そのかはり明日の朝は
何事
(
なんに
)
も言はない、そんなことを言つて、長いこと私達を側に坐らせて置いて、
別離
(
わかれ
)
の涙を流しました。
幼き日:(ある婦人に与ふる手紙)
(旧字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
山椿の下では、お葉と重太郎との詩的な
別離
(
わかれ
)
があった。窟の外では、重太郎と素性の知れぬ男との蛮的な格闘があった。
飛騨の怪談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
吉里は平田に再び会いがたいのを知りつつ
別離
(
わかれ
)
たのは、死ぬよりも辛い——死んでも
別離
(
わかれ
)
る気はなかッたのである。
今戸心中
(新字新仮名)
/
広津柳浪
(著)
これ母親の死を
悲
(
かなし
)
み
別離
(
わかれ
)
に泣きし涙の今なお
双頬
(
そうきょう
)
に
懸
(
かか
)
れるを光陰の手も
拭
(
ぬぐ
)
い去るあたわざるなりけり。
妖僧記
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
いずれも鳥打帽子を
冠
(
かぶ
)
り、小荷物を
提
(
さ
)
げ、仏蘭西の国歌を歌って、並木のかげに立つ
婦子供
(
おんなこども
)
に
別離
(
わかれ
)
の叫声を掛けては通過ぎた。
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
今朝の
別離
(
わかれ
)
の辛さに、平田の帯を押えて伏し沈んでいたのも見える。わる止めせずともと
東雲
(
しののめ
)
の
室
(
へや
)
で二上り新内を
唄
(
うた
)
ッたのも、今耳に聞いているようである。
今戸心中
(新字新仮名)
/
広津柳浪
(著)
それが今度の震災と共に、東京の人と悲しい
別離
(
わかれ
)
をつげて、架け橋はまったく断えてしまったらしい。
綺堂むかし語り
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
「さあ、一ツ遣ろう。どうだ、
別離
(
わかれ
)
の杯にするか。」
婦系図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
翌朝
(
よくあさ
)
早く嘉助は
別離
(
わかれ
)
を告げて発った。その朝露を踏んで出て行く
甲斐々々
(
かいがい
)
しい後姿は、余計に寂しい思を三吉の胸に残した。
家:01 (上)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
やがて一同暇乞ひして、斯の父の永眠の地に
別離
(
わかれ
)
を告げて出掛けた。烏帽子、
角間
(
かくま
)
、
四阿
(
あづまや
)
、白根の山々も、今は後に隠れる。
破戒
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
ここから三吉は曾根へ宛てて最後の
別離
(
わかれ
)
の手紙を書いた。「——あるいは、これを好しとみ給うの日もあるべきかと存じ候」
家:01 (上)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
岸本が国を出る時、名古屋から一寸
別離
(
わかれ
)
を告げに来たと言って、神戸の旅館まで訪ねてくれた人に比べると、この兄も何となく
老
(
ふ
)
けて見えた。
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
その兄も、岸本が仏蘭西の旅に上ろうとした当時神戸の旅館で偶然落合って
別離
(
わかれ
)
の酒を
酌
(
く
)
みかわした頃の兄も、殆んど変りのないほどの人であった。
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
別離
(
わかれ
)
を告げて出て行くような汽笛の音は港の空に高く響き渡った。お種の
眼前
(
めのまえ
)
には、青い、明るい海だけ残った。
家:01 (上)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
彼は新しい白墨の一つを取り、その黒板に心覚えの詩の句を書きつけ、それに寄せて生徒に
別離
(
わかれ
)
を告げた。
桜の実の熟する時
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
口に出さないまでも、実にはそれが
別離
(
わかれ
)
の食事である。
箸
(
はし
)
を執ってから、森彦も悪い顔は見せなかった。
家:02 (下)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
炉辺には、お種をはじめ、お仙、幸作夫婦、薬方の衆まで集って、一緒に
別離
(
わかれ
)
の茶を飲んだ。
家:02 (下)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
聖書の朗読があり、讃美歌の合唱があり、
別離
(
わかれ
)
の
祈祷
(
きとう
)
があった。受持々々の学科の下に、先生方が
各自
(
めいめい
)
署名して、花のような大きな学校の判を押したのが卒業の証書であった。
桜の実の熟する時
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
そんな風にして始まった二人の結び付きから、不幸な
別離
(
わかれ
)
に終ったまでのことが、三年前の悲しいも、八年前の嬉しいも、
殆
(
ほとん
)
ど一緒に成って、車の上にある大塚さんの胸に浮んだ。
刺繍
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
出発の日は、
姉妹
(
きょうだい
)
から親戚の子供達まで多勢波止場に集って
別離
(
わかれ
)
を惜んだこと、妹のお福なぞは船まで見送って来て、漕ぎ別れて行く
艀
(
はしけ
)
の方からハンケチを振ったことなぞを話した。
家:02 (下)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
塾を卒業した生徒の一人が私の家の門口へ
別離
(
わかれ
)
を告げに来た。近在の村の青年だ。
突貫
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
東京の友人が戦地へ赴く前に
寄
(
よこ
)
した
別離
(
わかれ
)
の手紙は私の心に強い刺戟を与へた。
突貫
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
小母さんの立話を聞けば、
川上
(
かはかみ
)
といふ
辺鄙
(
へんぴ
)
な村の方で、ある若い百姓が結婚したばかりに出征することゝ成つた。お嫁さんは
野辺山
(
のべやま
)
が
原
(
はら
)
まで夫を見送りに
随
(
つ
)
いて来て、泣いて
別離
(
わかれ
)
を惜んだ。
突貫
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
青木を訪ねたついでに捨吉は築地の菅の家へそれとなく
別離
(
わかれ
)
を告げに寄った。相変らず菅は静かな、平な心持で、ある西洋人の仕事の手伝いなぞをしながら、独りでコツコツ勉強を続けていた。
桜の実の熟する時
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
こぞに
別離
(
わかれ
)
を告げよかし
藤村詩抄:島崎藤村自選
(旧字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
こぞに
別離
(
わかれ
)
を告げよかし
若菜集
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
“別離”の意味
《名詞》
別離(べつり)
ひとつだったものが別かれる事。特に人間関係に用いられるときは、再び会わない意が込められる。
(出典:Wiktionary)
別
常用漢字
小4
部首:⼑
7画
離
常用漢字
中学
部首:⾫
19画
“別離”で始まる語句
別離苦
別離久長